山本忠臣さんと、白い空間。
 その5



向井さん こちらがハイジュエリーのフロアです。
伊藤 うわっ、すごい。カッコいい!
私、でもなんだか、
顔が負けてしまいそうです。
向井さん こちらは「バロック」ですね。
真ん丸が当たり前みたいに並んでいましたけど、
こういったいびつな形もいくつか採れるんです。
こういったものは昔は評価されていなかったのですが、
最近はあえてその形の面白さを楽しむというジュエリーも
増えております。
先ほどおっしゃっていた吉田沙保里選手の
国民栄誉賞もゴールデンパールですが、
こちらはあえて色がふぞろいなんですね。
マルチカラーと言いますけれども、
色とりどりでソフトな雰囲気を出しています。
伊藤 こちらは?
向井さん これはコンクパールと言いまして、
天然真珠なんです。
サンゴに似てるんです。
ピンク貝という大きな巻貝がカリブ海に生息してまして、
その巻貝から採れる天然真珠です。
身は食用になるそうですよ。
伊藤 ふと思いましたが、こちらでは
お値段がちゃんと見れるようになってるんですね。
向井さん そうですね。隠してらっしゃるお店もありますが、
お客さまにわかりやすいように。
向こうの壁面は、本店ならではの品々になっています。
伊藤 すごい!
ほぼ日 1億3650万円のものもありますよ‥‥!
伊藤 こういったものは、社内でデザインを?
植野さん はい、すべて社内のデザインです。20名ほどおります。
伊藤 毎年新しいデザインを入れるんですか。
向井さん 年に数回、新作をご紹介しています。
植野さん ハイジュエリーのほとんどは、
もう二度と作れない、一点ものです。
ほかにも明治、大正期のデザインを復刻したものですとか。
向井さん これは大正期のデザインですね。
植野さん 明治時代、「御木本真珠店」の頃から、
ジュエリーのカタログがあったんですね。
そこから復刻を行なったりしています。
この当時は、たいへん細かい細工で。
向井さん シードパールといいまして、
核入れして養殖した真珠以外に、
ぽろぽろっと出て来た、
偶然採れた核のない真珠をセッティングしています。
ダイヤのパヴェのように。
植野さん 脇から金属を盛り上げて留めてるんですね。
普通の真珠だと、穴をあけて、
芯を通して留めるんですけれど、
この小ささだとそれができないので、
穴をあけずにここから金属を盛り上げて。
こういったデザインは──、
もともと日本って着物だったので
ジュエリー文化がなかったんですね。
伊藤 帯留めくらいでしょうか。
植野さん そうです、帯留めぐらいしかなかったんですね。
それで、大正期から修行のため、
当時のデザイナーをロンドンですとかパリに派遣して、
デザインと製作技術を学ばせたりしていました。
それから、もともと日本にいた錺職(かざりしょく)。
刀の‥‥。
伊藤 鍔(つば)?
植野さん はい、鍔の細工の職人さんを派遣して。
ですからちょっと西洋のアンティークっぽいデザインも。
伊藤 真珠の帯留めも、カッコいいですね。
向井さん 素敵ですよね。
伊藤 真珠は、肌に当ててみないとわからないですよね。
肌との相性がありますから。
植野さん そうなんです。
そしてたとえばネックレスとかチョーカータイプのものは、
長さも大事なんです。
鎖骨の上に乗るようにするのがいちばん美しい。
伊藤 人によって首の太さとか顔の大きさも違いますものね。
きょう、じつは、ピアスをひとくみ、
買わせていただこうと思っているんです。
向井さん ありがとうございます。
伊藤 大きめのものを‥‥。
向井さん 7ミリぐらいでしょうか。
いちばん人気のサイズです。
あんまりピンクがかったお色じゃないほうがお好きですか。
これがちょっと白っぽい落ち着いた感じです。
伊藤 こちらも可愛いですね。
向井さん ほんの一回り大きい、7.25ミリになります。
伊藤 ほんとだ。これがいいです!
向井さん 当ててご覧になりますか。
金具はホワイトゴールド、
18金を使っております。
保証書代わりのミキモトの刻印が
このポストのところにも、
キャッチのところにも入っております。
伊藤 これは‥‥こうやって。
向井さん とてもいいですね。ぴったりです。
0.25ミリだけ大きくなりますけど。
伊藤 いつも使っているものと、
まったく印象がかわりました。
これにします!
わーいわーい。すごーい。
これだと毎日‥‥。
向井さん 毎日、お風呂に入る時、
寝る時、メーキャップ、ヘアスタイルを整える時は
外していただければ。
パールの表面は、ひじょうにデリケートですので、
お化粧品がかかってしまうと、光沢に影響します。
ヘアスプレーもいけませんから、
メイクが終わって最後に着けていただけると
よろしいと思います。
お手入れのシリコンクロスをお付けしますので
使った後、パールの表面を必ず拭いていただいて。
このクロスじゃなくても、
柔らかい乾いたクロスで拭いていただけると。
伊藤 じゃ、シャワー浴びるなんて絶対駄目ですよね。
向井さん そうですね。海外の方とかでも多いんですけどね。
ネックレス着けたままシャワーという方も。
そんなふうにお使いいただくと、
中の核が出てきてしまうことも。
お修理を承ることもありますが、
そうなってしまうと直せないので、
取り替えるしかないんです。

(つづきます!)

2014-03-31-MON 


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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN
 取材協力:ミキモト 写真:有賀傑