シルク・ドゥ・ソレイユからの招待状(2) 水の中から見えたもの。 〜「オー」のスイマーへの取材〜
シルク・ドゥ・ソレイユには、 アスリートとして活躍した経験をもつ メンバーがいます。 シンクロナイズドスイミングの選手として オリンピックに出場したふたりの日本人が、 いま、ラスベガスの常設ショー「オー(O)」の ステージに立っています。 フランス語の“eau”(水の意味 オーと発音)に 由来があるこのショーは、 その名のとおり、水をふんだんに使った 奇想天外な舞台。1998年の初演以降、 何年間にも渡って、高い人気を誇っています。 ラスベガスにて、練習後のおふたりに 糸井重里がお話をうかがいました。


選ばれた理由。 2008-05-07
笑い声が聞こえる。
2008-05-08
技術は「変わる」。
2008-05-09
もう一度、好きだ! 2008-05-12
これはオマケかな。 2008-05-13
無口になるショー。 2008-05-14

河邊美穂さん
1974年生まれ。
アトランタオリンピックに出場し、
団体3位の成績を残す。
2002年から
「オー」のステージに立つ。
北尾佳奈子さん
1982年生まれ。
アテネオリンピックに出場し、
団体2位の成績を残す。
2006年から
「オー」のステージに立つ。

河邊 ショーは、
もうごらんになりました?
糸井 観ました、昨夜。
昨日のあの舞台の
どこかにいらっしゃったんですよね?
知ってて観たほうがよかったかな。
北尾 いや、どうでしょう(笑)。
糸井 おふたりとも、シンクロの選手として
オリンピックで活躍したあとに、
再就職先としてシルク・ドゥ・ソレイユに
入ったわけですよね。
河邊 私の場合は、オーディションに受かってから
半年後に連絡がありました。
それで、シルク・ドゥ・ソレイユの
国際本部があるモントリオールで
4か月間トレーニングして、
その後日本に帰って10か月間、
役が来るのを待っていました。
空きがなかったので。
糸井 オーディションを受けてから
ショーに出るまで
1年半以上かかったことになりますね。
河邊 あれは「半受かり」みたいな状態だったかな?
北尾さんは、また違いますよね。
北尾 私は、オーディションに受かっても
すぐにオファーは来ないだろうと思ったんです。
ですから、サンフランシスコで
3か月ぐらいシンクロの選手をやりました。
試合が終わって、日本に帰ろうとしたときに
ちょうど連絡があったので、
日本で1か月間準備して
モントリオールへ行ってトレーニング。
トレーニングは3か月の予定だったんですが
2か月経った時点で
「オー(O)」に来てほしいと言われたんです。
糸井 シルク・ドゥ・ソレイユの
舞台に立つには、
技術はもちろん必要でしょうが、
そういうことだけじゃないと思うんです。
何かしらあるわけでしょう、
選ばれた理由が。
北尾 オーディションのときはもちろん、
採用する側はいろいろ見ていると思いますが、
事前にも、
かなり調べてるんじゃないでしょうか。
糸井 おもに何を見てるんでしょう?
河邊 もちろん技術は絶対に最重要項目です。
その次にはその人が持ってる
芸術性や個性。
そして、私が思うに、おそらく
性格も見てると思います。
北尾 うん。たぶん、そっちのほうを
重視してるんじゃないかな?
糸井 実は、おふたりを拝見していて、
そんな気がするんです。
河邊 性格は、モントリオールの
トレーニングキャンプ中に
かなり見ていると思います。
糸井 つまり、シルク・ドゥ・ソレイユの
チームの中では
「性格」がとても重要だということですね。
北尾 やっぱりそこが
選手のときとぜんぜん違うところです。
河邊 選手は、もちろん実力重視です。
たとえちょっとチームを乱す人がいても、
試合までの1年間は一緒にやります。
でも、試合が終わったらもう解散。
でも私たちは、ね?
北尾 うん。
河邊 長い間、ずーっといっしょにいるわけです。
真の意味で、チームワークとか、人間関係が
重要になってきます。
ですからその部分を
採用する側、人をアレンジする側は
かなり見ているんじゃないでしょうか。
糸井 毎日のように公演が2回あって、
同じ人たちとそれを
半年やり続けることだって
難しいですもんね。
北尾 みんな、国も言葉も文化も
ぜんぜん違いますし‥‥。
でも、なかいいですよ。
河邊 なかいいですね。
もちろん、いろんなことがありますが、
チームのなかで解決しますし。
糸井 ああ、つまり
「なかよくする能力」というものが
あるんですね。
河邊 ええ、そうかもしれないですね。
糸井 ただ自然になかよくできちゃうんじゃなくて、
なかよくするための努力とか、
なかよくするための工夫とか、経験とか。
北尾 それは、あると思います。

(続きます)




水中になじんだ肉体。

このインタビューの前に、糸井重里と我々は
「オー」のバックステージのようすと
練習を見学しました。
そこで撮影した、
1枚の写真をごらんください。
パフォーマーのみなさんが
コーチの指示を聞いているところです。

取材から日本に戻ってきて
ほかの「ほぼ日」スタッフに
この写真を見せたところ
「これは、温泉保養地の写真?」の声が。
写真に映る「オー」のスイマーのみなさんが
浮かんでいるのは
水深が5メートルはあるプールです。
あまりにものんびりした顔つきで
水面から顔を出しているこのようすは、
とても深い水に浮かんでいるとは思えない、
とのことでした。
ふつうだったら少しは動きが出たり
そうでなくてももうちょっと
“浮かんでるんだよ”という雰囲気を
出すのかもしれませんね。
河邊さんと北尾さんは、長いこと
シンクロナイズドスイミングをやっているので
地上よりもむしろ水中になじんだ体に
なっているのだそうです。
指のあいだの「水かき」も
発達してるんだそうですよ。

(スガノ)
シルク・ドゥ・ソレイユ シアター東京の
トライアウト公演は
こちらのサイト
チケットが販売されています。

2008-05-07-WED



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Photos: Tomasz Rossa, Veronique Vial Costumes: Dominique Lemieux