Lesson974
上向きスイッチ
2020-07-22
すべてが悪い方へダダダダーっと回りだし、
自分で止めようにも、
ネガティブな思いがふつふつ湧いてどうにもならない、
そんな時、ふと、
「カチャ! と音を立ててスイッチが切り替わる」
ことがある。そこを境にどんどん上向いていくことがある。
私も今回、そんなスイッチに救われた。
「耳が、おかしい‥‥」
7月はじめ、耳にかつてない不調感があった。
5日たっても治らず、医者に行くと、
「ストレスで耳の機能が低下、聴力が下がっています。」
ストレスと聞いて、真っ先に「ある人」が浮かんだ。
「先生、大きなストレスを受けたんです」
医者に話すと、
「それが引き金かもしれないね」と。
さらに、いまコロナ禍で私たちは、
「歴史上だれも経験したことがない状況にいる。
ストレスで不調が起こってもむりはない」と。
医者はしみいるように優しかった。
大量のおくすりが出て、投薬と
自分で循環を良くする努力(有酸素運動・散歩など)、
なによりストレスを減らす課題が課せられた。
「なんで?! なんで私が、あんな人のせいで‥‥」
病院から帰る道々私を塗りつぶしたのは、恨み。
「あの人のせいで、私の耳は聴こえ辛くなったんだ。
あんな奴、歩くストレス製造機、みんな具合が悪くなる。
なんでよりによって私なんだよ‥‥」
自分にストレスを与えた人を思うと、心が荒れる。
いかん、いかん、と恨みをふり払い、
有酸素運動を始めるも、体を動かすと、
うっくつしていた心の傷が全身にまわりはじめ、
「アンタのせいで、私の耳はたいへんなんだよ!
なのに全く気づかないでのうのうと生きてるんだろう、
どうやって知らしめてやろうか!!!!!」
とまた恨みが噴き出しては、いかんいかんとふり払う。
それでも、動いた後はカラダに爽快感があった。
自粛期間中、やろうやろうとしてサボってた運動も、
さすがに耳の危機感から毎日欠かさずやるようになった。
運動を毎日欠かさずやるようになって、初めて気づく。
コロナ対策自粛期間以降、
いかに自分が、カラダの声を聴いてこなかったか。
私は、緊急事態宣言後も、
7〜9日間に1度の食糧買い出し以外、
1歩も外に出ない生活をずっと続けていた。
「じっと座ってることが体は一番ストレスなんです。」
と、医者が、背中を丸めてじっと縮こまってるポーズで
教えてくれた言葉が、印象に焼きついている。
「外を歩く」、ただそれだけのことが、
いまの自分にとっていかに必要不可欠か、
いかに心に風を送ってくれる行為か、痛感した。
動いた後は、えも言われず気持ちいい!
これで良くなると思っていた。しかし、悪くなった。
病院に行く前より、
いままで生きてきたどんな時より耳の状態が悪い。
インターフォン越しの声が全く聞こえず焦った。
外の工事の音が、不穏に、不快に、耳に反響する。
「ぜんぶあの人のせいだ‥‥」、恨みが再燃した。
「くよくよしてもストレスになるだけ。運動、運動!」
不安と恐怖がステレオ状態でわんわん響くなか、
私は、いつものように有酸素運動をはじめた。
はじめてすぐ、ずいぶん動けるようになったと、
運動習慣も身についてきたと、嬉しい体感があった。
床に手をついたとき、はっ! と直感が来た。
「こうやって習慣ができていくのって財産じゃないの?
この生活続けていったら、この先ストレスが来ても、
全然平気なカラダになっていけるんじゃないの?」
そうか!
「自分にストレスを与えて体調を悪くさせた誰か
を恨むんじゃなくて、
これから生きてくうえで、
面白い創造的な仕事をやり続けていく上で、
こういうストレスは避けて通れないんだから、
契機と思ってストレスに負けない体と生活習慣を作るんだ。
いまの私は、まだそれができる時期だ。」
カチャ! と音を立ててスイッチが切り替わった。
その日を境に、恨みはピタッ! とおさまった。
その日を境に、耳は回復していった。
「上向きスイッチ」
きっと誰の中にもある。ほんとうに苦しいとき、
それでも、あきらめず、腐らず、やることをやっていると、
無意識に押せる日がくる、私はそう信じる。
【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。
宣伝会議 表現力養成コース
編集・ライター養成講座20周年記念講座
山田ズーニー専門クラス
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ありがとうございます!
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「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
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この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
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ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
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――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
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このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
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『話すチカラをつくる本』
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いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
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自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
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内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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