Lesson995
頼るチカラがある
2021-02-10
困った時、
悪びれもせず、へつらいもせず、
高貴な精神を保ったまま人に頼れる。
そういう人に、私がなりたい。
………………………………
友人とのオンラインで、
私は、去年、
街からトイレットペーパーが消えた話をしていた。
「あるある。買い溜めするな」
と言い続けるマスコミと、
「ない。どこにもない、ずーっとない」
都心の現実。
この板ばさみで日に日に神経すりへったと。
すると友人が、
「ああ、あの時ね。
私も東京の娘がトイレットペーパー送ってと言うから
送ったわよ」
と、こともなげに言った。
娘さんといっても、結婚して子供もいて
自立しているおとなだ。
友人は地方に住んでて物資が買いやすい。
「それからパスタもない、
ティッシュも、アルコール消毒も、
マスクも、使い捨て手袋もない、
ホットケーキミックスも送って、と言われて、
いっさいがっさい送ったわよ。」
それ聞いて、私はカーン! と
殴られたような衝撃を受けた。
目の前がパッカーン! とひらけた。
純粋にわきあがったのは、
「娘さん、か、かっこいい!!!」
その手があったか! あっぱれ! たくましい!
サバイバル能力でいったら、どっちが生き残るか明らかだ。
ちゃっちゃと有る所から送ってもらって
家族を救った娘さんと、そんなところで消耗していた私と。
悪びれもせず、へつらいもせず、
当然のように親に頼れた娘さんに、
人間として負けたのを痛感した。
その頃、ドラマのセリフがひっかかった。
「うちは、かわいそうやない。」
母親が亡くなって食うや食わずの小さな子供の姉弟に、
近隣の人が温かい食事をふるまう。
しかし可哀想の一言を聞いて、その小さな女の子は、
食事を拒絶する。
拒絶=美談としてきた。
昔の私なら迷わず美談と思っただろう。
人のほどこしは受けない人とか、
金持ちの親がいても一切頼らず清貧な暮らしをする人とか、
誰にも頼らず一人で何とかすることを
「高潔」と思って来た。
けど、いまインターネットで、
助けてもらいやすい・支援もしやすい世の中になった。
「頼れるものは頼って、その先へ進もう」という人に
美しさを感じるのだ。
困ったとき頼るチカラのある人が、
助けてもらった恩を実感し、人を助けるようになる。
そうして、頼ったり頼られたりして
人とつながるチカラこそがいま私はほしい。
「可哀想」の一言で、ほどこしを拒絶する。
わかる、わかるのだ。
私も「可哀想はだめ」とさんざん言い続けてきた張本人だ。
でもそこが最近変わってきた。
人は複雑な動機で支援をする。
「可哀想」と口にしたからといって、
それがその人の助ける動機の全てではない。
可哀想と言っても思ってもダメだとしたら、
それが、干渉しないことの言い訳に、
「なんにもしないこと」の正当化に
便利につかわれやしないだろうか。
「見て見ぬふり」こそ恐ろしいのだ。
可哀想とも思わないが、そのかわり無関心で、
手も差し伸べない人が多い世の中だ。
関心を持ってくれて行動を起こしてくれた人
(金品支援も含めて)を、拒絶せず、
対話する道もあるのではないか。
あのドラマで食事をふるまった人は、
少なくとも関心は持ってくれた。
行動(御飯を提供)も起こしてくれた。
小さな女の子は、弟とともに、
堂々と御飯をたいらげたあと。
「おばさん、かわいそうとはヒドイわ。
うちらこれでも幸せやねん」と、
コミュニケーションを通して、偏見を払拭し、
理解を得ていく道もある。
手を差し伸べるほうだって不慣れなのだ。
一緒に育つ。
失敗をしながら、頼るチカラ・助けるチカラをともに磨く。
受けた恩はペイフォワードの精神で、
その先出逢う人に返す。
そうしてひろく社会に恩を循環させていく。
友人の娘さんも、この先いくらでも恩は返せるのだ。
「困った時は、人に頼る。甘えていい。」
仲間に言われてスゴク響いた。
頼る、甘える、ができないから、変なリクツ付けて
相手とギクシャクしたり、
溜め込んで爆発したりするんだ私は。
「すいません! ツラいんで甘えます!」
ができる大人に、私もならなければ。
私は、頼ることを訓練しだしたら、
「私にもできることがあれば言って」と
素直に言えるようになってきた。
「頼るチカラがある。」
私にもある、と思って頑張りたい。
だってこの世に赤ん坊として生まれた瞬間から、
長い間ずーっと頼りっぱなしだったじゃないか、私。
私たちは「頼るチカラ」を持っている。
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編集・ライター養成講座20周年記念講座
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読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
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この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
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あなたの“へその緒”が社会とつながる!
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――山田ズーニー。
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おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
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『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
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インターネット、
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「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
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自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社
『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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