- 糸井
- 逆に古賀さんは、
それでも「業界のため」っていえますか?
あれ、追い詰めすぎかなぁ(笑)
- 古賀
- 僕は、そうだな、やっぱり、
つい業界のためとかって言っちゃうし、
本心でそう考える部分もあると思います。その根底に、
「例えば10年前、20年前、自分が新人だった頃は、
こんなに格好いい先輩達がいたけれど
今自分らがそんな先輩になれてるんだろうか」って
部分があるのかもしれません。 - 糸井
- なるほどなるほど。
- 古賀
- そういう ‘かっこいい先輩’ になることで、
出版業界がよく見えればいいな、って。端的にいって、
ネット業界とかの方がキラキラして
見えるはずなので。だから多少のキラキラとか、
何ていうか、羽振りのよさみたいなものとか、
サッカーの本田圭佑さんが白いスーツ着たりとか、
スポーツカーに乗って成田にやって来ましたとか…… - 糸井
- 敢えてやってますよね。
- 古賀
- はいはい、ああいう演出とかも、
何かしら出版業界のなかの僕みたいな立場の人間が、
多少はやった方がいいのかなという思いも
若干あるんですけど。
でも、今の糸井さんの話を聞いて、三日三晩自分に、
もしそれを問いかけたら……(笑)
- 糸井
- (笑)
- 古賀
- と思いますね。やっぱりそうだなあ、問い詰めると、
どこかにはチヤホヤして欲しい気持ちはありますね。でも、それを良くないことと片付けるのは、
それはそれで勿体ないことだとも思うんです。 - 糸井
- 人間の思考のベースでもありますからね。
- 古賀
- はい。だから ‘チヤホヤされたい’ と向きあいながら
そこを下品にならないようにとか、
人を傷つけたりしないようにとかのなかで
自分を前に進めていくというのが、
今やるべきことなのかなという気はします。 - 糸井
- ほんとのことをいうと、
やるべきことなのかどうかもわからないんですよね。
つまり変なハンドル切り方してみないと、
真っ直ぐが見えないみたいなとこがあって……。 - 古賀
- 先日糸井さんは
「三年先のことなんかわからない、
と言っていたのだけれど、
わかるところもあるじゃないかと
思うようになった」
って今日のダーリンに書かれてましたよね。 - 糸井
- あれビリビリきたでしょ。だって俺に来たもの!
- 古賀
- (笑)
時間軸をどういうふうに設定できるかというのが、
すごく大事だと思うんです。
見えもしない10年後20年後を語りたがる人って…… - 糸井
- あぁ、まずそれは嫌だね。
- 古賀
- そこで満足してる人達は、割にたくさんいて。
若い人達にも、ある程度年齢がいってる人達にも。
僕もどちらかというと、
先のことなんてわからないじゃんっていう
立場だったんですよね。でもそこで考えに考えたら、
3年先を見据えたハンドルの切り方はできる。
たしかに、あれは結構ビリビリきましたね(笑) - 糸井
- 古賀さんの年齢でも、わかる人はいるかも知れない。
だけど、無意識にそういった考えになりたくないって
抵抗することだってあると思うんですよね。 - 古賀
- うんうん、そうですね。
- 糸井
- たとえばの話、大きな災害があった後とかに、
「今回みたいに何があるかわかんないから
今日っていう日を充実させていこう」
という考えを否定するつもりはまったくないんですよ。
‘いま’ にしっかりと重心を置いて、精一杯生きようよ、
というのはかなり説得力があると思うんです。 - 古賀
- そうですね。
- 糸井
- たぶん僕も、
震災直後は本当にそう思えたんじゃないかな。
でもそういう1日1日を繰りかえしていたら、
「どうしましょう?」って聞かれることが
多くなったんです。その時々では
「俺もわかんないけど…」っていうのを、
いってきたんだけど、そこから時が経って
いざ3年前のことを振り返ってみると、
今日ぐらいのところはわかってたなっていうことを
思うようになったんですよ。 - 古賀
- あの日を起点に、変わったということでしょうか。
- 糸井
- 震災はでかいですね。震災はでかい。
それでね、もっとそこで気づいたこともあったんです。