もくじ
第0回課題3をはじめるにあたって。 2016-06-28-Tue
第1回売れる→天狗?じつはもっと複雑で。 2016-06-28-Tue
第2回仕事はだれのため?何のため? 2016-06-28-Tue
第3回震災は、考えかたそのものを変えた。 2016-06-28-Tue
第4回結局は、ちかくの人に褒められたい。 2016-06-28-Tue
第5回あらためてお金のはなしをしましょうか。 2016-06-28-Tue
第6回古賀さんと糸井、それぞれのシゴト論。 2016-06-28-Tue

AUTOCAR というサイトの編集部に所属しています。

もう一度、古賀さんと糸井の対談を。

担当・上野太朗

第5回 あらためてお金のはなしをしましょうか。

糸井
あのね、人はそれをすぐに想像するので、
そこに対して無防備でいると、
そのスケール=自分像になりかねないので、
僕はお金に対してはちょっと警戒心をもってます。

そのうえで、敢えて「お金好きです」っていう発言を
時々するようにしています。
そうしないと、好きじゃないフリをしてくせに
結局お金が好きじゃねえかっていうふうになるから。

古賀
むっつりスケベみたいな(笑)
糸井
結構そこね、リスクなんですよね。
自分で自分の足を引っ張ってしまう場合もあります。

たとえば古賀さんが、面白いぞってことを考えて、
そのアイデアに賛同した人に、
「やればやるほど古賀さんが儲かる仕組みなんだよ」
って誰かが言ったら、動きにくいんですよ。

古賀
あぁ、うんうん。
糸井
そうなっちゃ嫌じゃないですか。
だから、
お金について僕はこういうふうに思ってますし、
具体的にこうですよね、っていうのが
いつも見えるようにするというか……。
そこをコントロールした方が、
やりたいことが気持ちよくできますよね。
古賀
喜びの源泉としての「1億円」とか、
そういうものはあったりするんですか?
糸井
それは全くないですね。
古賀
ないんですか。

糸井
どうしてないかというと、
僕が求めて得られるような数字って、
お金で言うと、ちっぽけだからですよ。
古賀
(笑)
糸井
どうしたってちっちゃいですよ。町歩いてた時に、
小さなビルがいっぱい建ってるじゃないですか。
これあなたのお金で建ちますか(笑)
古賀
(笑)
糸井
僕、前提として、小さなビルっていったでしょ。
古賀
ええ(笑)。はいはいはい、わかります。
糸井
つまり、なにかで僕が儲かったとしても、
小さなビルさえ建たない規模なんですよ。
古賀
そうですよね、うん。
糸井
つまりビルはお金を借りて作るから建つんですけど、
でもそれにしても、そのお金で何か勝負するには、
やっぱりタネ銭にしかすぎないわけで。
そのくらいのお金で、持ってるだの持ってないだの、
儲かりましたねとかっていうのは、ちょっと違う。
古賀
糸井さん、それいつごろ気づかれましたか?
糸井
とっくにわかってました。(笑)

古賀
20代とか30代とか?
糸井
30代ですね。
20代にはそういうタイプのお金は見えないですから。
30代の初めぐらいで、
千万単位ってこういうことかって
思う時がありますよね。

自分じゃ随分儲かったなって思うんですよ?
でも、意味ねえなって。
半分は税金でもっていかれますから。

プロ野球選手の年俸のこととか見てても、
この人が来年怪我しちゃったら、これ実は、
こんなもんなんだよねっていうのを、
使い道として想像できるようになるんですよね。

そしたら、ないがゆえに羨ましがってたり、
僻んだりしてる人達がいってることって、
お門違いすぎて。

古賀
あぁなるほど。
でも、じゃお金はいらないよっていうのとも、
また違いますよね。
糸井
全然違います。
お金って何だろうな、
エンジンのための燃料みたいなところがあって。

ちっちゃいお金でウダウダしてると、
消し炭の奪い合いみたいになっちゃうじゃない?

もちろん人それぞれにスケールってあると思う。
ずるいことをせずにそれがやれたら、
やっぱり、人間として、古い言葉だけど
徳が身につきますよね、きっと。

古賀
そうですね、うん。
糸井
もちろん付き合う相手にもよると思うんです。
たとえば、知らないうちに、
自分だけの世界に入り込んじゃって、
自分が自分の迷路に迷い込むことだってある。
古賀
自分であんまりこういう言い方あれなんですけど、
ミリオンセラーというのを初めて経験して、
1つわかったことというのは、ミリオンになっても
みんな全然知らないんですよ、
『嫌われる勇気』っていう本のこととか……

経験する前は、
ミリオンセラーになっちゃえば、
日本中の人達の所に届くものとばかり……

糸井
うんうん、大騒ぎするからね、みんな。
古賀
ヒット、ってなんだろうなぁと。

糸井さんの中で、ヒットするとかっていうのは、
何かご自分の中で、
判断基準のようなものがあるんですか?

糸井
ほぼ日を始めてからは、ヒット多様性になりました。
古賀
ヒット多様性……ですか。
糸井
これもヒット、あれもヒットになりました。
たとえばの話、ゲームボードがいっぱいあって、
こっちはせいぜい黒字っていう程度でもヒット、
こっちは結構売れたけどヒットとは言いにくい、
みたいな感覚です。もっと噛み砕くと、
判断基準をいっぱいもつようになりましたね。
古賀
コンテンツごとに判断基準があるんですか……。
糸井
全てがコンテンツですということをいいはじめて、
思うんだけど、引越もヒットだったといえるんです。
それは金銭的にいったらマイナスになってますよね。
だけどヒットなんですよ。
何がヒットかっていうのも説明できるわけですよね。

つまり、既に持ってる価値観じゃないところに
自分の価値観を増やしていくというのが、
ほぼ日がはじまって以後するようになったんです。

もちろん数字の大きさのもつ説得力も
あると思っていますけどね。

古賀
数字の大きさでいうところの、
「一山当てたい」みたいな気持ちはあるんですか?
糸井
大小に関しては、今いったみたいに、
それぞれの価値の置き方があると思っていますが、
そりゃあいつだって「一山当てたい」たいですよ。

だって楽になりたくて仕事してるわけだから。

古賀
それ、よくおっしゃいますよね。
糸井
苦しくてしょうがないわけですよ、僕は。
それにめんどくさいし。
古賀
ほぼ日をはじめられた頃に、
働くことが流行ってるというのを
書かれてたじゃないですか。
あの時期と今とは、仕事に対する感覚って
変わってきましたか?
第6回 古賀さんと糸井、それぞれのシゴト論。