もくじ
第0回課題3をはじめるにあたって。 2016-06-28-Tue
第1回売れる→天狗?じつはもっと複雑で。 2016-06-28-Tue
第2回仕事はだれのため?何のため? 2016-06-28-Tue
第3回震災は、考えかたそのものを変えた。 2016-06-28-Tue
第4回結局は、ちかくの人に褒められたい。 2016-06-28-Tue
第5回あらためてお金のはなしをしましょうか。 2016-06-28-Tue
第6回古賀さんと糸井、それぞれのシゴト論。 2016-06-28-Tue

AUTOCAR というサイトの編集部に所属しています。

もう一度、古賀さんと糸井の対談を。

担当・上野太朗

第4回 結局は、ちかくの人に褒められたい。

糸井
吉本隆明という人は、今も僕にとって
手の届かないぐらい遠くにいる先輩なんですね。
でもその先輩は、手が届く場所にいてくれるんです。
近所のアホな兄ちゃんの俺は、
「いいことやってる時は悪いことやってると思え、
悪いことやってる時はいいことやってると思え」
ぐらいに、全く逆に考える姿勢を
知らず知らずのうちに吸収していたんです。
古賀
はああ。
糸井
だから、態度については、
これからも間違わないんじゃないかなというような
気がします。間違わないぞという宣言でもあるけども。

古賀さん、もし間違ったら言ってくださいね(笑)
ちょっといい気になってたら(笑)

古賀
(笑)
そういえば、ちょっと話が戻るんですけど、
吉本さんだったり、あるいは矢沢永吉さんだったり
糸井さんの中でのヒーローみたいな人達がいて、
その出版のお手伝いをされてきたじゃないですか。
糸井
えぇ。
古賀
その時の糸井さんの気持ちっていうのは、
俺が前に出るというよりも、やっぱり、
この人の言葉を聞いてくれという感じなんですよね?
糸井
僕は、とっても驚いたよとか、
僕はとってもいいなと思ったよとか、
間接話法で結局は僕の本になるんですよね。
だから自分を前に出す必要は全くなくて。

たとえば
美味しいリンゴ売ってるいい八百屋さんが
「リンゴがあんまり買ってもらえないから
作るのやめようと思うんだよね」っていう人に、
「俺売るから、ちょっと作ってよ」って(笑)

古賀
うんうん(笑)
糸井
もっと具体的な話、
ほぼ日でで売ってる海苔とかそうだからね。

海苔をつくっているお爺さんが、
「もうそろそろつらいことやめようと思うんだ」
っていえば、
「まあまあ、待ってください」って。
そういった商売ですよね。

古賀
うんうんうん。
糸井
古賀さんも、そういえば、
そういう仕事してますね。

古賀
そうですね、うん、はい。
今だったら、いろんな出版社に知り合いがいますし、
やりたい企画ができる状態にはなったんですけど、
10年前とかは、やっぱり自分がやりたいと言っても、
なかなか実現しなかったりとか、
やってといわれたお仕事しかできない時期
というのは結構長かったですね。

糸井さんが、例えば『成りあがり』でやったことが、
ほぼ日の中で毎日のようにできてるんじゃないのかな
と思うんですよね。こんな面白い人がいるから、
ちょっと対談して、この人を紹介したいなとか、
あとはTOBICHIで、こんな人がいるからと言って、
その人の展覧会を開いてとか、そういう……。

糸井
場所作り。

「あなたには目立ちたいってことはないんですか?」
って聞かれたら、「ものすごくありますよ」って
いうんじゃないですかね。

ただそれはどういう種類のものなんでしょうね
って突き詰めると、
「いや、目立たなくていいかも(笑)」っていう。

いところでは目立ちたがりですよ、僕、たぶん。
でも、急にどうでもよくなりますね。

古賀
それは、それこそ30ぐらいの時に、
目立って痛い目に遭ったりした経験があるから……
糸井
じゃないですね。
古賀
じゃない。
糸井
たとえば高校生のときっていうのは、
何をしてでも目立ちたいわけで。
みんな俺をもっと見ないかなって、
ことばにすればそういうこと思ってるのを、
服装にしてみたりね(笑)

でもやがてそれを残しながらも、
やっぱり嬉しいのは何かっていったら、
近くにいる人にモテちゃうことの方が嬉しいんですね。
だから彼女がいるっていうのが一番理想ですよね、若い時にね。

古賀
(笑)
糸井
それさえあれば俺は何も要らないみたいな。
恋愛至上主義に近いと思うんですよ、若い時って。
そこに突っ込んでいきたかったんですよね。
天秤にかけたら、彼女ですよ、圧倒的に。
古賀
はいはい。
糸井
だってね、アイドルだって、
全盛の時にプライベートで別にモテてないですよ。
古賀
ひとりの人間としての ‘彼ら’ じゃなくて、
アイドルとしての ‘彼ら’ がモテているんですね。
糸井
アイドル本人だって、
会場のファンから「好き」っていわれるより
たまたま行った誰かの送別会の時に隣にいた女の子に、
「私送ってって欲しいんだけど」って言われたら、
もうバリバリに鼻の下伸ばしますよね。
「いいよ、構わないよ」っていいながら(笑)
古賀
そうですね、うんうん。(笑)
糸井
みんなに見られた目立ちたいと思っていた ‘僕’ も
そこらへんでわかってくると思うんです。
古賀
でも遠くの5万人とか遠くの50万人にモテる俺を
喜ぶ人も確実にいますよね?
糸井
それこそ古賀さんでいうと、
本を買ってくれた人の数が100万人。
「ええー?」っていう嬉しさがあるじゃないですか。
アルプスとか、ヒマラヤとか
そういったところのてっぺんに立ったことあります?
古賀
ナイアガラの滝なら。
糸井
「大きいなー」って思うじゃないですか(笑)
古賀
はいはい(笑)
糸井
で、「来て良かったなー」って思うじゃないですか。
「もしカナダに行くんだったら、
ぜったい行ったほうがいいよ」って人にもすすめる
じゃないですか。あれですよね。
古賀
はああ。
糸井
たとえばですよ。
「すっごく、お金なんかないですよ」って子に
「いいよ、連れてってあげるよ」なんていって、
ヒマラヤが見えるとこに立って「なあ」って言うと、
その子が「ほんとだあ」って言うじゃないですか。
その、「ほんとだあ」が、に嬉しいですよね。
古賀
自分のこと以上にうれしい……。

糸井
たとえばお母さんが子供に、お母さんは食べないで、
イチゴを食べさせるみたいな。あれも全く同じだし。そういう経験をすればするほど、人の喜ぶことを
考えつきやすくなりますよね。
古賀
たしかにそのとおりだと思います。

そういう時、遠くの5万10万の人達を考える時、
糸井さんのなかでは、お金を想像はしますか?

糸井
お金ねぇ(笑)

第5回 あらためてお金のはなしをしましょうか。