ニーポンは、会議の邪魔をするのが得意です。
事務所を兼ねた自宅にお客さんがやってくると、
まずはあいさつ代わりに、からだをすりすり。
初対面の方でもおかまいなしにお腹を見せて、
「なでてもええで」のポーズを見せます。
やがて人間同士の会議がはじまると、
そばに立つキャットタワーの一番上から
テーブルめがけてムササビばりの大ジャンプ。
まるで「ボクもかまって」とアピールするかのように。
初めて彼に会ったとき、ぼくはひとめぼれをしました。
「このコと家族になるんだろうな」と、
どこか予感めいたものがありました。
事実、その数時間後から彼は家族になりました。
名前はすぐに決まりました。
妻が「ポン」とか「ポンきち」などと呼びかけて、
妙に「ポン」の響きがしっくりきたことと、
夫婦で経営しているデザイン会社が掲げるスローガンに
ひざ(ニー)をポンと打つアイデアを大切にする、
という意味の「ニーポン」なる造語があって、
それをそのまま名前に授けました。
ただ、本名で呼ぶことはほとんどなくて、
「ポンきち」とか「ポンキッチュ」とか
「ポン太」とか「ポンタウロス」とか、
その日の気まぐれで呼ぶことが多いです。
一番多いのはシンプルに「ポンちゃん」かな。
ニーポンは家族の一員であると同時に、
わが社の看板ネコでもあります。
会社のホームページで彼の写真を見た方が
「あのコですね!」とニコニコ接してくれますし、
ネコの話でいつも場がなごみます。
ニーポンは看板であり、稼ぎ頭でもあります。
彼をヒントに「伸びるネコじゃらし」を開発したり、
最近はデザインのモデルにさせてもらったり。
たとえば「NekoTsubo」という企画。
彼が日々見せる、いかにもネコらしくて愛くるしい
「ツボなポーズ」をモチーフにした
テキスタイルやTシャツが商品化されました。
そんなニーポンは、いわゆるイエネコです。
外に出ることのない、完全室内飼いのネコです。
でも、いつも窓の外をさみしそうに眺めては、
なんだか外に出たそうな顔をしています。
その顔に、ぼくのこころは締めつけられます。
そして思うのです。
「彼は今、しあわせなのだろうか」と。
イエネコにとって、室内は退屈なのでしょうか。
イエネコにとって、外はあこがれなのでしょうか。
イエネコにとって、しあわせとは何なのでしょうか。
ニーポンとの暮らしから、
改めて考えてみたいと思います。
(つづきます)