- 糸井
- 表現しなくて一生を送ることだってできたじゃないですか。
でも、表現しない人生は考えられないでしょ、やっぱり。
- 浅生
- そうですね。
- 糸井
- 受注なのに。
- 浅生
- そうなんです。それが困ったもんで。
- 糸井
- そこですよね、ポイントはね。
- 浅生
- そこが多分一番の矛盾。
- 糸井
- 矛盾ですよね。
「何にも書くことないんですよ」とか
「言いたいことないです」
「仕事もしたくないです」。
だけど、何かを表現してないと‥‥。
- 浅生
- 生きてられないです。
- 糸井
- 生きてられない。
- 浅生
- でも、受注ない限りはやらないっていうね。
ひどいですね。(笑)
- 糸井
- だから、
「受注があったら、ぼくは表現する欲が満たされるから、
多いに好きでやりますよ、めんどくさいけど」ってね。(笑)
これはでも、
ぼくはそこが浅生さんとは似てるんじゃないかなぁ
という気がしますね。
- 浅生
- かこつけてるんですかね。何かに。
- 糸井
- うん。
そうねぇ。
何かを変えたい欲じゃないですよね。
- 浅生
- はい。変えたいわけではないです。
- 糸井
- きっと、表したい欲ですよね。
そしてその表したい欲って、
裏表になってるのが
「じっと見たい欲」なんですよね。
- 浅生
- 「じっと見たい欲」?
- 糸井
- うん。
多分表現したいってことは、
「よーく見たい」とか「もっと知りたい」とか
「えっ、今の動きみたいなのいいな」とか、
そういうことでしょう?
- 浅生
- なるほど。
ぼくは、画家の目が欲しいんです。
あの人たちって、違うものを見るじゃないですか。
画家の目はきっとあるとおもしろいなって。
- 糸井
- いや、すごいですよ、ほんと、画家の目ってね。
違うものが見えてるんですからね。
- 浅生
- 見えたとおりに見てるっていうか、
見たとおりに見えてるじゃないですか。
ぼくらは、見たとおりに見てないので。
- 糸井
- それは、ぼくなんかが普段考える「女の目が欲しい」
と同じじゃないですかね。
受け取る側の話をしてるけど、
でもそれはやっぱり表現欲と表裏一体で、
「受ける」と「出す」っていうことだと思います。
- 糸井
- そろそろまとめに入りたいんだけど、
臨終の言葉をぼくさっき言ったんで、
浅生さんは今、臨終の言葉何かどうでしょう。
受注、今した。
自分の死ぬときの言葉。
- 浅生
- はい。死ぬときですよね。
前死にかけたときは、
そのときは「死にたくない」って思ったんで、
すごく死にたくなかったんですよ。
なんだろうな、今もし急に死ぬとして‥‥
「仕方ないかな」。
- 糸井
- (笑)
これで終わりにしましょう!
いいですね。仕方ないよねえ。
- 浅生
- はい。
「仕方ないかな」っていうので終わる気がしますね。
- 糸井
- 「人間は死ぬ」とあまり変わらないような気がしますけど。
(おしまい)