台湾と日本の間の二人が「台湾カルチャー」を語る翻訳家 天野健太郎×『LIP』編集長 田中佑典
担当・Q
第3回 台湾人って、「ハコ」作るのが上手と思う。
- 天野
-
日本人は完璧でなきゃやってはいけない
というのがすごくあるけど、
台湾人は関係なく、ワンアイデアで行動に移しますね。
- 田中
-
はい、まさにそうです。(笑)
- 天野
-
しかも、若い頃はそういうのが当たり前だけど、
彼らはそのままやり続ける、普通はできなくなるんですよ。
我々が台湾の絵本などを日本の出版社に持って行っても、
「こんな所に飛び出すものなんて作れない!」と言われが、
台湾の人は、こういうテーマがあって、
ここに動くものがあったら面白い、
コストがプラスになるけど、やっちゃう。
- 田中
-
そうそう、「やっちゃう」というところありますね。
- 天野
-
そういうところを日本人が
真似しないといけないと思いますね。
もちろん彼らは逆に日本人は仕事が丁寧とかを褒めるけど、
荒々しく、ワンアイデアでガッツンっと「やっちゃう」
というのはあった方がいいと思いますね。
- 田中
-
僕もそういうパッションが好きですね。
あまり考えずにまずやる、見切れ発進というやつですか、
口から出まかせでもいいからとりあえずやるという、
逆に僕はそれをある意味、
悪い意味じゃないですけど、
台湾の人って、「ハコ」を作るのが上手と思います。
- 天野
-
「ハコ」というのは?
- 田中
-
概念的な「ハコ」でもいいですし、
具体的に言えば、お店もそうなんです。
日本人はコンテンツを作るのが上手で、
どっちかというと、中身をいっぱい考えて、
それらを入れる「箱」を最後作るのですが、
台湾の人は「ハコ」を作るのが上手で、
「ハコ」を作ってから、
「じゃなに入れようか?」で、中身を入れていきます。
たまに台北の東区に行って、
「あ、ここに新しい店ができた!」と思って、
外観がすごくカッコいいけど、中に入ったら、
とにかく集めてきたみたいな感じだったりします。
- 天野
-
分かります。
台湾の人はありものをどうやるか、
そういう臨機応変はうまいですね。
- 田中
-
うまいですよ。
- 天野
-
でも、それも良し悪し。
- 田中
-
はい、良し悪しですね。
- 天野
-
日本人はいちから逐一でやると、
開店する前に消えていくかもしれない。
台湾は表が綺麗だけど、
裏はまだできてなくても開店しちゃう。
それは面白いし、いいと思います。
それもお互いさまで、
我々はもう少し見切り発進のやり方を
覚えておいた方がいいじゃないかと思います。
- 田中
-
そうなんですね。
- 天野
-
うちは聞文堂という会社をやっていて、
台湾の本を日本に紹介しています。
会社にしたのはなぜかというと、それこそ私ではなく、
相棒の訳者の台湾人がやりたいというのが最初でした。
自分は日本の本を台湾に翻訳しているが、
そればかりだと面白くない、輸入超過だと。
- 田中
-
はい。
- 天野
-
「いいんじゃないの?」と言ったら、
会社作ると言い始めました。(笑)
まだ本出てないですよ?でも会社作ります。
多分私一人だとやっていなかった、絶対に。
- 田中
-
日本人的に難しいですね。
- 天野
-
でも、会社作ると言われて、
「なるほど、乗った方が面白いかもしれない。」と思いました。
ただ、本を出す前なので、資本金がほぼない状態から
会社やろうというわけです。
それは「ハコ」を作りたかったかと思います。
会社名とか、「ハコ」があると多分楽ですよ。
『LIP』もタイトルがあるのはすごく大事でしょう。
- 田中
-
そうですね。
- 天野
-
名前でいきなり「田中です。」とか、「天野です。」とか、
有名な人ではない限り、多分通じないですよ。
ものがあって、雑誌があって、
きちんと『LIP』と書いてあると違うと思います。
でも「ハコ」から作るのはやはり台湾人であって、
日本人はなかなかやらないと思います。
- 田中
-
そうですね。中身を作ってから枠を作りたくなりますね。
- 天野
-
私は台湾に行く前は、
自分が全部決めなきゃいけないタイプだったが、
台湾に行くと、それがね、揺るがされるんですよ。
日本人らしくカッチリまじめに作りたくても、
翻訳するだけじゃなくて、もっと手広く出版ということで
きちんと枠を決めてやりましょうと言われます。
どう考えてもリスクしかないけど、
会社設立するだけで税金はかかると言っても、
「いいから、やりながら考えましょう。」と言われます。(笑)
- 田中
-
そうなんですね。(笑)
- 天野
-
まあ、翻訳だけだと楽かもしれないが、
普通に翻訳をやるだけだと、
良くも悪くも、現状は多分ないですね。
「ハコ」という意味で、そうかもしれないですね。