- ――
- 生き物を探しちゃう病気、ですか。(笑)
それってもう昔からっていうことですよね。
- 寺田
- でもね、
昔に遡ると、俺も幼稚園くらいまでは
生き物が苦手だったらしいんだよ。
- ――
- なんと、そんな時代が。(笑)
- 寺田
- あったんだよ、あった。(笑)
うち、家は東京の江東区にあって
幼稚園くらいまではミミズも触れないような
子どもだったんだけど。
でも、おやじの田舎が長野だったんだよね。
田んぼに行ったり川に行ったりするぐらいしか
遊びがないような場所だったから、
親戚と遊んだりしてるうちに、
いつの間にか好きになった。
- ――
- 知らない間に慣れるものなんですかね。
- 寺田
- で、それを助長したのが小学校3、4年の先生。
普通は学校に次から次へと生き物持ち込んだら
怒られるだろうけど、
「飼いたいならいくらでも持ってこい、
その代わり自分たちで面倒を見ろ」
ってなことを言うから、
教室の3分の1くらい水槽が置いてあった。
- ――
- そんなに!
- 寺田
- そうそう。
川とかも危ないから他のクラスは
行くなって言われてたんだけど、
うちは自然で遊ぶことは悪くないから行っていいぞ、
って感じに言われてて。
結構やりたい放題やらせてくれてたよね。
それがすごい良かったのか、
なんか3、4年で生き物好きのキャラが
自分の中で確立されて。
授業中、自分の机の上にカメとか置いてたしね。(笑)
- ――
- 机にカメ(笑)
- 寺田
- その頃の経験があるから、
多分余計に生き物が好きになったんだと思うんだよね。
でも、自分の中で
「この時に生き物好きになったな」
っていう象徴的な出来事は見当たらなくて。
「理由の無い好き」って感じなのかなあ。
- 寺田
- 子どもの頃から江東区っていう都会に住んでたから、
近所は別に自然が豊かなわけじゃなくて。
そこで無理やりドブ臭い運河でハゼ釣ったりとか、
公園の中の溝が詰まってる所があって、
そこにザリガニがたくさんいるのを見つけて
ザリガニ釣りに行ったりとかしてたな。
ダンプカーが走り回って
まだ何の整備もされてないお台場まで
夏休みとかはチャリで遠征していったよ。
そこでザリガニ釣ったり、
ハゼ釣ったり、
エイ捕まえたり。
当時あの辺りは野犬がいたから、
持っていったポテトチップスを
その犬に狙われながら釣るんだけど。(笑)
- ――
- (笑)
- 寺田
- 海浜公園くらいしかないお台場に行って
ひたすら魚とったりとかしてたね。
ただ、そういう場所って、
最近の方がきちんと水辺の護岸が整備されてて。
人と水辺に連続性のできる場所が
うまく用意されてるんだけど、
それを使う人がいないんだよね。
- ――
- ちゃんと配慮して作られていても
だめなんですね。
- 寺田
- 子どもの頃だったら絶対にここで遊んだよな、
っていう場所をせっかく行政の人が用意しても、
誰も使ってなかったりするから、
それがなんかすごくもったいない。
こういうことを話してると
どうして今の仕事をしてるのか
って話に戻ってくるよね。
環境学習をやって自然に興味を持つ子が増えると、
自然の今後の管理にプラスに作用していく。
そういう長い視点の部分が1つ。
純粋に、自分たちが子どもの頃
やって楽しかったことを、
やらせてあげたいっていう直感的な部分が1つ。
その2つがちょうど交差する部分が今の仕事なのかな。
- ――
- なんか、環境学習っていうと
国立公園のレンジャーだったりとか、
山の中にいるガイドみたいな人たちを
普通思い浮かべると思うんですよね。
たとえば屋久島とかにいたりするじゃないですか。
でも、むしろ寺田さんの場合は町が舞台ですよね。
- 寺田
- そうだね。
多分、他にそういうことやってる人が
いないなって思ったから
そこが狙い目だって思ったのもあるかな。
あとはやっぱり偶然自分が、
自然が好きなのに都会に生まれてしまった
っていう境遇だったから。
都会の中にも生き物がいるっていうのを
子供の時から気付いてたしね。
特に自然がきれいでもない場所で、
なんとか生き物を捕まえようとして
子どもの頃から過ごしてきたんだよね。
それが今でも勝手にできちゃうから、
逆に自然大好きな人が見向きもしない都市河川の方が、
自分に合ってて。
子供の頃から自然の中で育った人だと、
都市の自然って見つけられないと思うから。
- ――
- あっ、なるほど。
- 寺田
- 離島とか、山もそうだけど
大自然って言われる場所はレンジャーが多すぎて
レンジャー同士で仕事を取り合う状態に
なってる所もあるんだよね。
でも、都市の方が人は集まるじゃない。
この横浜の町だって、
土日になると黙ってても大勢の人がやってくる。
田舎の豊かな自然の中に
自然の大好きな人が10人とか20人集まる
ビジターハウスがあったとしても、
その規模には限界があって。
今日みたいな横浜のイベントなら
自然になんか興味がなくても、
ひょっとすると1万人くらい
人が通りかかるかもしれない。
そうすると、
そのうちの1%でも興味を持ってくれたら、
もうそれは相当な人数に自然をPRできるんだよね。
それに、
自然の少ないところでひたむきに
こんな生き物が生きてるぞ、
そこにも生態系が形成されてるぞ、
ってことを伝える方が自分にはすごく面白い。
小さい頃から魚釣りやザリガニ釣りで
磨いてきた自分の特技も生かせるし。(笑)
だから、なんで今の仕事やってるのって言われると
本当に自分でもいろんな答えがあるんだけど、
逆に言うと、
多分それをやらない理由がないんだよなあ。
「そんな仕事で食って行けるの?」とか
よく聞かれるんだけど、
食って行けるようにするかどうかは
自分の手腕とかやり方次第だと思うから。
これをやろうって決めて職業にして、
他人に価値を見いだしてもらってお金をもらう。
そのプロセスは、どんな仕事でも同じだと思っていて。
だから、そうだね。
今の仕事をやってる理由、結論としては
「やらない理由がないから」なのかな。
別の言い方をすれば、
「こういう風にしたいからやってる」って、
ただそれだけかもしれない。
(つづきます)