- ――
- 寺田さんを見てると、
生き方とか仕事の姿勢とか、
1つのものを貫いているような気がします。
- 寺田
- そういう風に見えてるだけじゃない?
今日の横浜のイベントだって、
何をやろうか、どこまで凝った展示をやろうか、
ってのはすごく直前まで悩んできた。
ただ、当日にはちゃんと
こういうスタイルでやるぞってものを
その場に表現しなきゃならないから。
そこはどうにかして結論を出す。
まあ後、何をやるか迷ってる時も
柱はしっかりしてるつもりだね。
1つは、
横浜駅のそばを流れてる帷子川について、
人間が汚いと決めつけてる川でも
貴重な生き物がいるんだって伝えること。
もう1つは、
生き物の体には不思議がいっぱいある、って
子どもに伝えること。
その2本の柱だけは
絶対譲らないで企画を作る、
っていうことを考えてきた。
だから1つめの方は今日の水槽展示に結びついたし、
2つめはウニランプのワークショップ。
でもほんと、毎日勉強だよ。
今でもどうやって展示するか、
何を教えるか、ってことを
毎回悩んで、悩んで、ってのを繰り返してる。
- ――
- そうなんですね。
- 寺田
- 環境学習についても、
はじめは分からないことだらけだった。
ザリガニ釣り1つとってもそう。
ザリガニ釣りにお金を払って参加をするってことが
信じられなくて、最初。
- ――
- ああ
- 寺田
- 俺が子どもの時を振り返ったら、
あれは放課後の暇つぶし以外なんでも無かったから。
それが、土日にわざわざ親子で
ザリガニ釣りのイベントに来てくれる人がいて。
「そこでお金を取っていいの?」って
初めは自分でも思っちゃって。(笑)
でもみんなはやりたいから来てくれる訳だよね。
来てくれるお父さんやお母さんたちは
釣り方が分からないことが多いんだけど、
それならこっちが教えて、
子どもたちにザリガニをちゃんと釣ってもらって
楽しんで帰ってもらわないと。
無料ですから勝手にどうぞ、ってするんじゃなくて、
釣り方をどういう風に教えようとか、
スタッフを増やして
みんなに細かくアドバイスしようとか、
景品を用意してゲーム形式にして盛り上げようとか、
色々と工夫をすることになっていくんだよね。
徐々に手の込んだイベントになっていくから、
参加費もはじめ100円だったのが
300円とか500円になったんだけど
でも参加してくれる人は全然減らなくて。
それどころか、手間暇かけた方が
来てくれた子どもたちが
すごく楽しんで帰っていくのが顔で分かる。
ザリガニ釣りでお金を取る意味があるんだって
やってみて初めて気付いたんだよね。
- ――
- はい。
- 寺田
- もしそこで、
安い参加費で楽しくないイベントをしてしまったら、
次からその子たちは来なくなっちゃう。
自然に興味を持ってもらいたくてやってるのに
そんなことになったら、負けだなと思って。
- 寺田
- 今の環境学習の仕事をやる前に
俺は結構色々な職をやってたんだよね。
まず初めは、環境の調査をする会社に5年か6年いた。
そこはね、よその会社の人から
「あそこの調査は精度がとんでもなく高い」
って言われるくらい厳しい会社で。
仕事に対する姿勢とかはそこで身についたかな。
次は、横浜のNPO時代。
さっき言ったザリガニ釣りもその時の経験だね。
専門的な調査技術も身についたし、
ただ生き物を好きだって所から、
それを仕事にするというレベルに
持ち上げてくれたんだよね。
その後は何年か、
物を教えるスキルが欲しくて
理科の実験教室をやる塾にも2年勤めた。
そこでは受験対策として理科実験をやっててね。
理科実験の体験を通じて、
子どもたちに学ぶということを好きになって欲しい、
ってことをやってたんだよね。
そこでは、どんな風に体験を他のことと結びつけるか、
そういう考え方を学んだかなあ。
でもね、やってる当時は
どれも「自分、遠回りしてんなー」って思ってたよ。
今俺36歳なんだけど、
30歳くらいの頃まではそう思ってた。
- 寺田
- でも今になってみると
それが良かったなって思うんだよね。
こうやってあちこち遠回りしてるのってさ、
ちょうどくねくね蛇行してる川みたいなもんで。
無駄にくねくねしてるんだけど、
何かきっかけがあって洪水みたいな水が流れてくると、
今度はすごく幅の広い1本の川になるわけ。
すると、そこからの生き方がすごくスムーズになる。
初めからまっすぐな川だと、
もう後から幅が広くなりようがないでしょ。
- ――
- はい。はい。
- 寺田
- これは自論だけど、
遠回りイコールよくない、
と思っている人によく言いたいのは、
自分は結構そういうことをしていて、
今結果として
あまりそれが悪かったと思ってないってことかな。
むしろ、良かったと思ってる。
こっちやりたいな、
あっちやりたいなってその時はふらふらしてても、
最後のゴールさえぶれなければ、
それは全然いいんじゃないかなって
今でも思う。
俺の場合は「人と自然をもっと近くに」
っていうゴールというか、目標があって。
それは、「自然とは?」「人とは?」って
細かいこと言い出すと突っ込み所はあるんだよね。
でもそうしたざっくりした表現で目標を立てて、
そこからぶれずにやっていくと決めた方がいいなって。
たとえば「子どもと水辺を近くに結びます」
ってピンポイントで掲げるよりも、
やれることに幅が出ると思うんだよね。
- ――
- はい。
今、次にこれやりたいなって
思っていることってなんですか?
- 寺田
- 次ねえ。
やっぱり今思うのは、
隅田川で環境再生をやりたいってことかな。
隅田川は人目につきやすい川で、
「汚い」って思われることも多い。
でも一方で、上流や河口の東京湾の環境をみてると、
頑張ればきちんと再生は可能なはず、っていう
生物的なポテンシャルがある。
あとはやっぱり、
生まれ育った江東区がこの川に面してるから、
というのも、大きいかな。
今、そのために具体的な活動もしている所です。
- ――
- 新しいことが始まったら、
その時はまたぜひ教えて下さい。
- 寺田
- いいよ、また連絡するよ。
- ――
- 時間がもう午後11時になってしまいました。
明日も仕事ということなのに、遅くまですみません。
今日は本当にありがとうございました。
- 寺田
- こちらこそ。
今日は一日、ありがとうございました。
(これで終わります。
最後までお読み頂き、ありがとうございました。)