今年の10月2日。
キジ美が子猫を連れてきたのは
ぽかぽか陽気のお昼でした。
普段のように1匹か
黒太郎と一緒かと思ったら、
見たことのないきなこ色のコが
ぴゃっぴゃっとスキップするようにやってきたので
心底びっくりしました。
もう離乳は済んでいる頃だろうに、
キジ美のおなかのあたりで甘えています。
赤ちゃんよりは大きくなっていますが、
まだあどけさが残っていて
猫好きにはたまらないかわいさです。
お母さんに似て、ニャーニャーよく鳴きました。
「きなこ」と呼ぼうとしたらオスだったので、
このコの名前は「きなこ太郎」です。
キジ美がすでに母だったなんて!と
家族一同で驚き、
このままではいけない、と焦りました。
わが家の庭にやってくる猫たちを
かわいいと思って見守りたいのなら
なにかしなければ、と思いました。
といっても、わたしはまったくの初心者です。
具体的にどのようなことをすればいいのか、
調べることからはじめました。
野良猫についてインターネット上には
さまざまな意見があふれていました。
積極的に保護活動をしている記事だけでなく、
野良猫の被害を訴える文も読みました。
誰が一番正しいなんて軽々と言えません。
ぐるぐると考えます。今も考え中です。
でも、目の前に猫はいるのです。
かけがえのない、かわいい命です。
悲しい思いはさせたくない、と強く思います。
そのうちに「TNR」という活動に出会いました。
Trap・捕獲し
Neuter・不妊手術を行い
Return・元の場所に戻す
という取り組みをそう呼ぶそうです。
この用語は世界共通でした。
いま、わたしができることはこれかもしれない。
「TNR」をやってみよう、と決めました。
「TNRを考えている」と伝えながら
野良猫の手術について
動物病院に電話で問い合わせること数軒、
治療にかかる費用は
病院によってかなり差があると気がつきました。
きなこ太郎もいつか、と思っていたので
あまりに高額だと
ボランティアにしては負担が重くなります。
そんなとき野良猫の不妊手術は
補助金が出る場合があると聞きました。
しかし喜んだのもつかのま、
わたしの住む区は残念ながら
まったく助成の制度がないことも知りました。
そのなかで
自宅からさほど離れていないところに
野良猫の不妊手術を専門におこなう
動物病院を見つけることができました。
11月のはじめ、
事情を説明するメールを出すと
すぐに獣医さんから電話がかかってきました。
先生はやさしそうな声で相談に乗ってくれます。
そこからはとんとんと話が進み、
キジ美を連れていく日が決まりました。
11月16日が作戦実行日です。
手術には、前日の夜からの“絶食”が必要です。
野良猫がなにかを食べないようにするには、
前日に自宅で保護するしかありません。
(※入院の制度がある病院もあります)
術後も翌日の朝までは様子をみるそうです。
いざ実行するとなって、
はじめて知ることばかりでした。
捕獲用にハードタイプのキャリーを購入し、
段ボールに猫用の砂を敷いた簡易トイレを作り、
猫のために一部屋を空けました。
夜間に猫になにかあってはいけないと、
私の布団も運びこみました。
一大プロジェクトです。
ここまできたらやりきろう、と思いました。