キジ美の反省をすこしでもいかそうと
捕獲は慎重に進めました。
餌の入った器をキャリーケースに入れて、
静かに様子を見ることにしました。
すると美味しい匂いにつられて
すうっと自分の足で入っていきます。
奥まで入ったところで扉を閉めました。
とりあえず一安心。成功です。
長期戦も覚悟していたのですが、
1分もかかりませんでした。
まだ好奇心のかたまりの子猫だからか
あまり警戒心のないコなのか…
構えていたぶん、すこし拍子抜けです。
捕獲したところで病院に電話をしました。
メスからオスへの変更は可能とのお返事でした。
先に用意しておいた部屋に
キャリーごと移して扉を開けると、
きなこ太郎は周りの様子をうかがいながら
おそるおそる出てきました。
「今日から2日間は、ここが君のおうちだよ。」
ですが、大変なのはここからでした。
いつもと違う場所にいることに気づいてからは
とにかく鳴きます。
アオーンアオーンと止まりません。
本能なのか、窓辺に行って外に向かって鳴きます。
「大丈夫だよ」と声をかけるも
とっ捕まえて閉じ込めたのは人間の自分なので
切なくなってしまいます。
それでも撫でていれば
落ち着くことがわかりました。
撫でるのをやめると
またアオーンアオーンが始まるので、
ひたすらどこかを触れているようにしました。
そうすればゴロゴロとご機嫌でした。
しばらく撫でていると
きなこ太郎は寝てしまいました。
きっとはじめての状況に緊張して、
疲れてしまったのだと思います。
寝顔を見るとホッとしました。
深夜2時
きなこ太郎の鳴き声で目が覚めました。
今度は撫でてもおさまりません。
きっと絶食でおなかも空いていたのでしょう。
心苦しいけれど、ここは我慢してもらうしかありません。
落ち着くには1時間ほどかかり、
早朝6時前には次の「夜鳴き」がはじまりました。
この鳴き声が外まで聞こえて
近所迷惑になっていたらどうしよう、と
不安になるくらいの絶叫でした。
結局、外には聞こえていなかったようですが
近くにいたわたしはすっかり寝不足です。
動物と向き合うことは
簡単にいくものではないなぁ。
わかっていたつもりでも実感します。
そうやって手術の日を迎えました。
病院へ連れていく時間になりました。
慣れない場所で暴れてしまうと危険なので、
きなこ太郎を洗濯ネットに入れてから
キャリーに入れます。
さらに外の様子が見えないように
キャリーごとタオルでくるんで車に乗りました。
再びのただならぬ事態に
きなこ太郎はひたすら鳴きます。
なだめながら病院に着くと、
同じように手術を受ける猫たちが
すでに何匹も待機していました。