まずはきなこ太郎の情報を記入します。
保護者としてわたしの名前と、
性別はオスに丸。
捕獲場所は「自宅の庭」。
色は……きなこ?
「これ、何色ですか?」
「ミルクティーですね、
野良ちゃんでは珍しい色ですよ。」
“きなこ色”よりずっとおしゃれな呼び方でした。
外に放つ猫には必ずワクチンを接種すること、
そして猫の白血病(FeLV)と
免疫不全(FIV)に感染していないか
ウイルスの検査ができることの説明がありました。
きなこ太郎の健康状態がわかれば、と
検査もお願いすることにしました。
鎮静剤と麻酔の注射を打たれると、
だんだん動きがとろんとしてきます。
舌が呼吸の邪魔をしないように、
きなこ太郎はぺろっと舌を出されて
仰向けに寝かされました。
がんばれ、と思いました。
大げさではなく、無事を祈りました。
「血とかが苦手じゃなければ、
見ててもらっても大丈夫ですよ。」
と先生が提案してくださったので、
手術の様子も部屋の端で
見させていただくことにしました。
わたしはなにもしないのに緊張します。
毛が剃られ、手術がはじまりました。
でも切開はわずか2センチくらい。
血もほぼ出ませんでした。
先生は手際よく処置を進め
不妊手術自体にかかった時間は
ほんの数分でした。
しかも縫合せずとも、
傷は自然にくっつくそうです。
すごいなぁ。
猫は弱い立場の生きものだと思っていたけれど、
人間よりずっと強いのかもしれません。
最後に右耳がV字にカットされました。
これできなこ太郎も「地域猫」です。
寝ている間にワクチンを接種し、
水分補給のための点滴もしました。
そのほうが麻酔も抜けやすくなるそうです。
診察や手術の合間にうかがった先生のお話も、
はじめて知ることばかりでした。
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それから30分ほどすると
きなこ太郎はゆっくりまばたきをして
目を覚ましました。
まだぼやんとしていますが、
具合の悪そうなところはなさそうです。
ウイルス検査の結果も陰性でした。
おつかれさま、よくがんばったね。
「麻酔でふらつくと
段差で怪我をすることがあるので、
明日の朝までは
キャリーのなかで様子を見てください。
夏だと深夜のリリースでも大丈夫なんですが
今は寒いので朝までは待ちましょう。」
先生から教えていただいたことを書き留めて、
いつもより少しおとなしいきなこ太郎と
家へ帰りました。