もくじ
第1回猫の紹介からはじめます。 2016-12-06-Tue
第2回「不妊手術(TNR)」という選択。 2016-12-06-Tue
第3回大失敗の捕獲作戦。 2016-12-06-Tue
第4回きなこ太郎と過ごした一日。 2016-12-06-Tue
第5回手術のこと。 2016-12-06-Tue
第6回地域猫として再び外へ。 2016-12-06-Tue

東京出身の22歳。
ひとりっこで、中高の6年間は女子校の温室で育ちました。今は編集の仕事に憧れる大学生です。
のんびりやに見られますが、好きなものにはとことんの行動派です。

庭にくる野良猫と</br>つきあうために

庭にくる野良猫と
つきあうために

担当・あやこ

第6回 地域猫として再び外へ。

さすがに怖い思いをさせてしまったかな…
というわたしの心配をよそに
きなこ太郎はキャリーのなかでも
わたしと目が合うだけで
ゴロゴロのどを鳴らしました。
たまに思い出したように
「出してくれ」と鳴くものの
キャリーのなかにいると
前日よりずっと静かでした。
先生によれば、前日の捕獲後も
一晩ならキャリーのなかで大丈夫だったそう。
夜鳴きをあやさなくてもよかったのか…。
またひとつ学びました。

翌日。きなこ太郎は早くに目を覚まし、
ニャーニャーとわたしを起こしました。
リリースの朝です。

窓を開けて、いつものベランダに
きなこ太郎を放しました。
すこし戸惑った様子で
あたたかい室内に戻ってこようとします。
それでもしばらくすると
外の空気を思い出したのか
庭のほうへおりていきました。
「TNR」は
「Return・元の場所に戻す」で完結します。
耳カットがされたきなこ太郎は
また外に戻って行きました。

家で飼うことにしたり、
里親を探したり、
もっといい方法もあるかもしれません。
でも野良猫の数を考えると
現実的ではありませんでした。
二日間でも情はうつるもので、
「もう戻ってこなかったらどうしよう」
とすら思い、さみしくなりました。

・・・・・・・・・・・・・・・

その日の夕方。
きなこ太郎はこれまでのように
我が家の庭に遊びにやってきました。
なにか変わった様子もありません。
こちらにお尻を向けたので
ちらっと失礼すると、
手術跡もわからないくらいきれいです。
ほんとうにうれしかった!

しかも、もうひとつうれしいことが。
庭にはあのキジ美の姿もありました。
前日の捕獲失敗は、
トラウマにはなっていなかったようです。
黒太郎も一緒で3匹勢揃いです。
耳カットの地域猫は2匹になりました。

母キジ美の「地域猫作戦」は
失敗に終わりましたが
息子のきなこ太郎は
「地域猫」デビュー、成功です。
お母さんも近いうちにリベンジしなきゃね。

我が家の庭にくる猫たちを
大事にしたいというスタートだったのが、
実際に経験すると
野良猫と地域猫について、TNRについて、
いろいろ考えました。
何も知らなかった、ということを知りました。
外にいる猫も、
人間と一緒の街に生きています。
かわいい猫たちと
うまくたのしく暮らすために
これからも考えつづけようと思います。

取材協力:杉並区梅里 ハナ動物病院
     分院 野良猫不妊手術(TNR)専門病院