2017年3月31日、
僕は、8年間勤めた小さな広告制作会社を辞め、
フリーランスのコピーライターとして独立した。
独立開業。
それは僕の人生設計には存在したことのない、
まったく予期せぬ出来事だった。
会社の経営状況が悪くなったわけでも、
人間関係が悪くなったわけでもない。
休みはあまりなかったけれど、
給料に不満があったわけでもないし、
仕事が嫌になったわけでもない。
ずっとそこにいたいと思っていたし、
フリーになるつもりなんて1ミリもなかった。
自営業の両親のような苦労をするのは怖かったし、
小さいながらも組織に守られているという安心感を、
手放したくないと思っていた。
だけど、いつからか、
そこに居続けることの不安を抑えられなくなってきた。
8年間、ずっと変わらない仕事のあり方。
8年間、ずっと変わらない働き方。
ボロボロになりながらコピーを書いて、
朝、満員電車とは反対方向の電車で帰る生活。
もうすぐ、40歳か…
僕は、このまま生きていけるのだろうか。
50歳になっても、60歳になっても、
笑ってだれかと酒を酌み交わせるのだろうか。
このままだと、自分の未来に残されるのは、
「こんなはずじゃなかった」という言葉だけ。
まだ、40歳だ。
僕は、僕の人生を、きちんと手作りしたい。
70歳になっても、80歳になっても、
誰かに喜んでもらえる人間でありたい。
もう一度、社会の中での足場づくりから始めてみよう。
そうして僕は、2017年1月の仕事始めとともに、
お世話になった社長に「辞めます」と伝えた。
「辞めます」が先で、「これからどうしよう」は後。
フリーで食っていく仕事のアテは何もなかった。
「フリーは甘くないぞ」。
長年フリーランスとして働いている
先輩たちの言葉は重かった。
退職直前、関係各所に送ったメールの返信が、
僕の不安をさらに大きくした。
「独立おめでとうございます!(でいいんですよね?)」
僕の独立がおめでたいことなのかどうか、
念のため確認する気遣いに、
自分の置かれている状況がにじんでいる気がした。
会社を辞めなかったほうがよかったんじゃないか。
せめて、もっと準備をしてから辞めるべきだったのかも。
人に会えば会うほど不安は膨らみ、気分は沈んだ。
このままじゃダメだ。
いまフリーランスとして働いている同世代は、
どうやって仕事をしているんだろう。
これからのことをどう考えているんだろう。
僕の頭の中に、5人の友人の顔が浮かんだ。
それぞれ立派にフリーランスの道を歩んでいる。
彼らの歩みの中に、何かヒントはないだろうか。
僕は、「ほぼ日の塾」の課題であることを口実に、
5人の友人に取材を申し込んだ。