今回、この話を書くにあたり、
バイトちゃんには事前に相談をしていたのですが、
ある時突然、こんな提案をされました。
「バイトくんと、会ってみませんか?」
「バイトくん」とは、いか文庫の最初のメンバーの一人で、
2014年冬まで、一緒に活動していた人です。
業界でも有名な古本コレクターで、本業界についても、
本屋で働く私よりも詳しい人でした。
もともと、本好きが定期的に集まる会で知り合った
飲み仲間でしたが、ある日、いか文庫の話をしたところ、
「面白そう!俺、バイトくんやる!」
と、立候補され、あっという間に仲間になりました。
そこにバイトちゃんが加わり、
2012年3月、いか文庫は、3人グループの本屋として
活動をスタートさせます。
バイトくんもバイトちゃんも、
面白いことを考えつく達人だったので、
一緒にいるのが楽しくて仕方がない日々でした。
年齢も性別も見た目も、何にも共通点が無かったこともあり、
周りの人には「不思議な組み合わせだよねぇ」
と言われていましたが、
3人で遊びに出かけたり、喫茶店で何時間もお喋りしたり、
それぞれが出くわした「面白いこと」「楽しいこと」を
日常的に共有し合う仲間になりました。
↑左から、バイトくん、私(店主)、バイトちゃん
でも・・・
3人で2年を過ごした頃、
ちょうど、クラウドファンディングがスタートする直前に、
私とバイトくんとが仲違いをしてしまいました。
そして彼はフェスの準備には加わらないまま、
連絡を取り合わなくなり、フェスが終了したあとすぐに、
いか文庫を去ることになりました。
その仲違いは、バイトくんの、
「本はもう面白く無い」
という発言にネガティブに触発されてしまった私が、
バイトくんを信用できなくなってしまったことがきっかけでした。
今なら、
「バイトくんが、本の未来を明るく考えることができなくなってしまった」
という意味だったのかもしれないと捉えられますが、
当時はそう考える余裕すら無い状態でした。
3人でずっと楽しくやりたいと思っていたバイトちゃんは、
そんな私とバイトくんの険悪なムードを理解できず、
でも、元に戻すこともできず、
もどかしい気持ちを抱いていたようです。
それでも意固地になってしまった私は、それ以降、
「バイトくん」という言葉自体NG!という態度のまま、
バイトちゃんの気持ちを見て見ぬ振りをしたまま、
今まで過ごして来てしまいました。
そんな中、今がきっかけだと思ったのか、
バイトちゃんは、私にこう言いました。
「店主は、すごく嫌がるかもしれないんですが、
バイトくんのことを書いてみるのはどうでしょうか?」
まさかの提案に、思わず苦笑いをしてしまいました。
意地を張った私は、バイトくんが去った後3年間も、
彼が現れるだろう場所だけでなく、情報すらもシャットアウトし、
存在自体を避けて来たのです。
そんな私に、そんな提案を?
でも、その案を伝えるのは、バイトちゃんにとっても
とても勇気がいることだったのかもしれないと思い直し、
何日か考えた後、意を決してバイトちゃんにお返事しました。
「バイトくんに会ってみようと思うんだけど・・・」
バイトちゃんは、すぐにバイトくんに連絡を取ってくれ、
そして彼からも、すぐにOKのお返事が届きました。
そこには、こう書いてあったそうです。
「店主に対しては、何のわだかまりもないし、
いか文庫をやってた時は楽しかった思い出しかないので、
そのことは伝えられそうなら伝えといてください。
正直に思ったことしか言えない性格なので、
店主が期待したことを答えられないかもしれないけど、
楽しみにしてます。」