もくじ
第1回ちゃんと大人になれているかな? 2017-12-05-Tue
第2回うなぎのはなし。 2017-12-05-Tue
第3回仕事のはなし。 2017-12-05-Tue
第4回将来のはなし。父親のはなし。 2017-12-05-Tue
第5回結婚のはなし。 2017-12-05-Tue
第6回不安のはなし。家族のはなし。 2017-12-05-Tue
第7回大将との話を終えて。 2017-12-05-Tue

1994年生まれ。学生です。
水泳、空手、チェロ、生徒会活動、
シンガーソングライター、広告会社のインターン。
今日まで色々なことに挑戦してきました。
今度は「書くこと」に挑戦します。
よろしくお願いします。

大将!大人ってなんでしょうか?

大将!大人ってなんでしょうか?

担当・川西

第2回 うなぎのはなし。

お昼の営業時間を終えた頃。
わたしは約1年ぶりに東京都世田谷区駒沢にある
「駒沢 宮川」の暖簾をくぐった。

わたし
こんにちは!ご無沙汰しています!
大将
おお、よく来たね!
こっち入りな。これから、焼くから。

(厨房に入らせてもらう。)

わたし
うわー!やっぱり、めちゃめちゃ肉厚ですね。
身がおおきい!

大将
今が一番、いい時期だからな。
うなぎが冬ごもりをするから、たくさん食べるの。
丑の日のうなぎとは太さが全然ちがうよ。
わたし
バイトさせてもらって、冬が一番おいしいってことを
知ってからは、夏の丑の日だけ食べる人は
損してると思いますよ(笑)
大将
だろう?でも、あんまりそのこと知られてないからね。
この時期はせっかくおいしい時期なのに
客入りのことで、どこのうなぎ屋も大変だよ。
わたし
うなぎって、いつ食べられなくなるか分からないのに
おいしい時期にその問題があるのは、せつないですね。
大将
うん。それでいうと、うなぎ屋も減ってきてるみたいで。
わたし
そうなんですか?
大将
うん。こないだ鎌倉から、お客さんが来てくれて。
わたし
そんなに遠方から?すごいですね。
大将
「地元の有名なうなぎ屋さんが
3店舗ぐらいなくなっちゃったから」って。
わたし
もうそんなことになってるんですね。現実として。
大将
後継者がいないんだろうな。うなぎだけじゃなくて、
もう、俺たちも絶滅危惧種だよ(笑)
わたし
それは困ります(笑)
大将
あとやっぱり、うなぎって
これぐらいの値段はするからさ。

(竹で2808円。梅で3780円。)

わたし
そうですよね・・・。
大将
スーパーなんかで安いうなぎが出回ってるから
余計ね・・・。安いほうがいいっていう気持ちは
俺もあるから分からないわけじゃないんだけど。
わたし
むずかしいところですね・・・。
大将
うちは立地と昔から通ってくれるお客さんのおかげで
なんとか、やっていけてる。
だけどオフィス街でやってる店なんかは厳しいみたい。
サラリーマンがランチで食べるのには向いてないから。
わたし
そうですよね。
大将
うん。だから食べに来てくださったお客さんには
本当においしいと思って、帰ってほしいんだ。
その思いから、うちはホントにいいうなぎを使ってるの。
できるだけ自然に近い状態で育てているうなぎ。
 
このうなぎを育てる養鰻場に行ったことがあるんだけど
見学しているときにうなぎが泳いでいる水を
コップですくって「飲んでみてください。」って
渡されたんだよ。育てている人に。
ギョッとするでしょ?
わたし
はい。飲んだんですか…?
大将
うん。飲んだら、めちゃめちゃおいしかった。
南アルプスの雪解け水なんだけどね。
俺、そこの社長に水を売った方が
いいんじゃないのって言ったぐらい(笑)
わたし
へえ。人が飲めるような水を泳ぎまわって
このうなぎは育ってるんですね。
大将
そう。そんなきれいな水で育った貴重なうなぎを
殺してるわけだからさ
「うなぎの供養」っていうのもする。
ちゃんとお寺さんで供養するの。
わたし
ええ。
大将
東京にあるうなぎ屋の連中が喪服を着て、寺に集まるの。
俺みたいに頭を剃って、坊主にしてる職人がいっぱい来る。
もうホント、映画のアウトレイジみたいなんだよ(笑)
わたし
(笑)。そんなことまでしてるんですね。
大将
そういうこともしてるし日々、貴重な生きものを
料理してるって噛み締めながら一匹いっぴき捌いている。
食べる人に美味しいって思ってもらいたい一心で。
わたし
はい。
大将
だから、うなぎの値段って高く感じるだろうけど
俺はまだ、うなぎは安いぐらいだと思う。
けっして儲けてないよ。まず、やっぱり貴重だから高い。
わたし
いまはよくわかります。ニホンウナギは雷鳥と同じぐらい
絶滅が危惧されてるそうで。
大将
そうそう。それにただ肉を切って、焼くわけじゃないから
当然、技術がいる。うなぎを裂く、串を打つ、焼く。
その工程を1人で全部できない人は職人でも
いっぱい、いるんだよ。
わたし
え!そうなんですか?
大将
うん。裂くの専門だから、焼けないとか。
わたし
大将がすべて1人でやってるのを見てたから
そういうものかと思ってました。
大将
いやいや。指が熱くて、焼けないんだよね。
そういえば親父は
一番、面白いのは火鉢だって言ってたな。
わたし
火鉢というのは「焼く」ところですね?
大将
うん。真っ白なうなぎにタレを付けてる工程が
絵を描いてるようだって。
全部、同じ色にしなくちゃいけないから。
わたし
ほうほう。
大将
火鉢には段が2段あって、その段と段の間が一番熱いから
下の段に乗せておくと、うなぎの上の部分しか
色が付かないんだよ。色は火力が強いところに付くから。
わたし
はい。
大将
今度、上の段に乗せたらうなぎの下の部分に色が付く。
そうすると段の間の火が直に
串に当たってるから熱いわけだよ。
わたし
うわ・・・それは熱そう・・・。
大将
その串を持った時に「熱いっ!」って離しちゃえばアウト。根性と駆け引きだよ。今は1枚だから簡単だけど。
俺、この豆腐みたいに柔らかいものを
5枚や6枚は同時にこの色で焼けるからね。
わたし
はあ・・・すごい・・・。そんなことしてたんですね。
大将
そうだよ。だから決して高くはないと思うんだけどな。
わたし
そうですね。今、お話を聞いてて思ったんですけど
「寿司」はカウンターで食べるような
所謂、いいお店だと、1人あたり1万円とかしますよね?
大将
するよね。寿司は技術あるよなあ。
わたし
スーパーでパックの安い寿司も売ってるけど、
みんな高いお金を払って
お寿司屋で食べようと思う時もある。
大将
うんうん。
わたし
たぶん、スーパーの寿司とお寿司屋さんの寿司を
別の料理のように思っている感じもあるのかなって。
うなぎもそうなっていくと良いですよね。
大将
うん。そう思ってくれてるとうれしいな。
「今日はスーパーのうなぎで我慢しよう。」
「今日は七五三だから、うなぎ屋で食べよう」とか。
「ここぞ」の時のご馳走だと思うし、それがいい。

(つづきます。)

第3回 仕事のはなし。