- わたし
-
大将は本当になんでも先回りして
考えて、行動して、ここまで来られたんですね。
大学も。仕事も。結婚も。
僕は真逆で、3ヶ月後に自分がどんなことしてるかも
まったく分からないような歩み方を今日までしてきたので。
だから、いいなと思います。
- 大将
-
そうか?ずるかっただけだよ(笑)
でも、この先が分からない。この先が不安だな。
- わたし
- へえ。やっぱり大将でも不安になることってあるんですね。
- 大将
-
あるね。子どもがやっぱりどんどんでかくなるでしょ。
そうすると家が狭くなるから、部屋割りどうしようとか(笑)
もっと踏み込んだことで言えば、子どもたち3人を
大学に行かせられる稼ぎはできるかって思ったりする。
これからのことの方が不安だらけだよ。
- わたし
- あー。今の方が。
- 大将
-
うん。ちょっと前は若さと勢いでなんとかなった。
この店を建て替えるときだって、スパッと決められた。
少し前までは先が読めて、今の行動ができたけど
最近は先が読めないから、今の行動ができないんだよ。
- わたし
-
いろいろなことがものすごいスピードで
変わっていく時代ですもんね。
- 大将
-
そうそう。だから、とにかく美味しいものを出す。
今来てくれてるお客さんに満足してもらいつつ、
もっと繁盛させる。それしか今はない。
最終的にはミシュランを取るぞぐらいのつもりでやる。
- わたし
- ああ。まさに、やり抜く根性ですね。
- 大将
- そうそう。
<大将のご子息(次男)が学校から帰ってくる。>
- 次男
- ただいまー!あ、こんにちは!
- わたし
- こんにちは!
<大将のご子息(次男)が二階に上がっていく。>
- わたし
- 少し見ないあいだに、あんなに背が高くなってるとは。
- 大将
- そうだろう?(笑)来年、中学生になるんだもん。
- わたし
-
やっぱり子どもがいるっていいですね。
バイトで来させてもらうと、いつも賑やかで活気があって
楽しそうで幸せそうだなって思っていたんです。
だから自分もいつか子どもを育てられたら
いいなっていう思いはずっと頭の中にあるんですよ。
- 大将
- そっか(笑)大変だよ(笑)
- わたし
- たくさん子どもがいる家庭を築きたいと思ってたんですか?
- 大将
-
まあ自分が男兄弟2人だったから
男の子が1人はほしかったかな。
もう男の子と遊びたかったし、男の父親をやりかったね。
キャッチボールや釣りしたり。
- わたし
- あー。
- 大将
-
なるようにしかならないなとは思ってたけど。
けっきょく息子が2人、娘が1人できたから
楽しく多摩川に行って遊んだり。
公園行って、仮面ライダーごっこしたりしてる。
小さいとき、自分も好きだったから
一緒にやってるの。
- わたし
- 幸せな親子って感じでいいですね。
- 大将
-
まあ自分もそういう風に育ててもらったから
その流れだよ。親がしてくれたことを
俺も子どもにできればいいかなって思ってただけ。
自分の親には何も返せないと思うけど
親と同じようにやってる姿が
一番の恩返し、親孝行になるかなと。
- わたし
- ああ。
- 大将
-
親父は俺を大学まで行かせてくれたわけだからさ。
このうなぎ屋を親父から継いで、繁盛させる。
結婚して、子どもを育てる。両親に親父と同じことを
ちゃんと自分がやれている姿を見せることがね。
- わたし
- その姿を。
- 大将
-
うん。こういったお客さん商売だから
俺を小さい頃から知ってるお客さんが今でも来てくれて、
「息子さんも立派になったわね」って
言ってくれるんだけど、それを親は一番、喜ぶんだよ。
- わたし
- はいはい。
- 大将
-
別に意識したわけじゃなくて
そういう形になっちゃったんだけど。
たぶん喜んでくれるんだろうなと思う。
- わたし
- へえ。そうだったんですね。
- 大将
-
ハワイ旅行のプレゼントなんかはできないけどさ。
無事に健康で両親も、俺も
お互い普通に生活ができているってことが
幸せだと思うし、一番の恩返し。
- わたし
-
お互い、普通に生活できる幸せですか…。
親への恩返しや親孝行をそういう風に
考えたことはなかったです…。
今日はありがとうございました。
- 大将
-
こちらこそありがとう。
しっかり稼いで、後輩でも連れて食べにきてよ。
- わたし
- そうなれるようにがんばります。
(つづきます。)