いままで映像化されてこなかったコンサートが はじめてDVDになったというのは やっぱり意味があることなんでしょうね。 今回のコンサート、 強く世の中に出したいという気持ちが あったということだろうから。 |
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DVDにはMC、おしゃべりが ほぼ入っていなかったですけど、 じっさいはどうなんですか。 |
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じっさいはたくさんしゃべりますよ。 ラジオみたいに。 |
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明るく楽しく? |
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明るく楽しく。客席も沸いてました。 「『地上の星』で中島みゆきを 知ったというお客さんが はじめてステージで見て このトークに びっくりしてるんじゃないでしょうか」 みたいなことも言ったりして。 あの、でもぼく、変遷があって、 そんなに数多くコンサートに 足を運んでいるわけじゃないんですが、 知り合いが買ったチケットが 余ってしまったので、買わないかと、 代打で行ったのが最初なんです。 10年以上前の大雨の日、 新宿厚生年金会館、 2階のいちばん前の真ん中っていう、 いい席だったんですよ。 |
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うん。 |
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でもそれを観たときは ちょっと恐かったんです。 客席があまりに静か過ぎて。 |
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へえ。 |
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トークにもあまり反応がないし みゆきさんの方も客席の反応を待たずに どんどん進めてく感じがあって、 ラジオの公開録音を聴いてるみたいな、 ちょっとした距離があったんですよ。 ぼくは全く知らずに行ったので、 気持ちが入り切れてなかっただけなのか 分かんないんですけど。 その次に、舞浜でやった、 「紅灯の海」を歌ったときのコンサート。 広ーい会場で観たんですけど、 わりとそれは会場のせいか、 わさわさしながらも コンサートにちゃんと参加する感じがして。 でも、今回は特別でしたね。 この距離の近い感じや、 お客さんがちゃんとリラックスもしてるけど 集中もしてるみたいな、いい感じ。 現場も恐くはなかったです。 |
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じゃ、いつもこのDVDの感じとは 限らないんですか、 そのお客さんの感じも? |
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よこさとさん、どうですか? |
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でも、ぼくは、だめですね、 行くと入っちゃうんで、 まわりのようすを ぜんぜんおぼえていないんです。 |
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常に1対1になるんだ(笑)。 場の空気とかじゃなくて。 |
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じゃやっぱり観るときの余裕とかこころの状態、 そのときの気持ちで 変わって見えるだけかもしれないですね。 |
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元々、音楽はそういうとこ、 あると思うんですけど、 みゆきさんの場合は特に 何かすごく個人的な音楽な気がして。 マスなんですけどね、 何か、こう、聴いてると 自分の思い出だとか、想いが 沸き上がってきますよね。 |
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以前のコンサートで、 知り合いにばったり会ったら、 「糸」でぼろぼろ泣いたって言ってた。 なんか、そのとき、 大恋愛をしていたみたいでね、 そういうのって自分の物語に 置き換えて聴くことができるからだよね。 |
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そう、感じ方に違いがあるので、 同じようにファンでも、 ぼくほどじゃない人と行くのは、 ギャップがあってやだなと思ったこともあるな。 |
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たしかに、気を遣いますよね。 |
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ところが、いまや、 もう全然気にならなくて。 |
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(笑)。 |
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誰と一緒でも、 1人で行った感じになっちゃうんです。 |
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もう誰と行っても一緒なわけですね。 |
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そうですね。糸井さんやたけいさんと行っても 1人で聞いている気になります。 |
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一緒に行く甲斐がないけど、 その集中力はたいしたものだと思う。 |
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あの時、糸井さんが真っ先に スタンディングオベーションしたんですよね。 みゆきさんのコンサートって。 みんな、座って聴いて、 そんなに立たないんですよ。 |
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糸井さんは途中で1回、 「with」の後に、何て曲、これ? って。 これ、すごいねみたいな感じで。 で、すぐその日、帰って、 iTunesで買ったんだって。 |
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すごかった、「with」は。 ほんと最初に「with」で泣いたもんなあ。 |
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withという言葉のあとに、 君の名を綴っていいか‥‥。 |
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書く側ですか、書かれる側ですか、 気持ちとしては。 |
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よこさとさんは 「(自分の名前を)書いて!」って思ったって 言ってたけど、 ぼくは「書いていいか?」側で 聞いてました。 |
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あ、でも「書いていいか」の方が 強いです、ぼくも。 さっきはああ言ったけど。 |
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張り合わない張り合わない(笑)。 |
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聞くたびに視点が変わることもあるからねえ。 |
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日によって違うときもありますね。聴くときに。 |
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そうなんですよね。不思議です。 何か、みゆきさんがぼくに歌いかけてくれてる、 というようなことも感じつつ、 歌詞の内容を味わうと、 歌ってる側として考えてしまったり。 まるでぼくが言ってるみたいに。 |
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自分がみゆきさんみたいな? |
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そう、ぼくがみゆきさんなんですよ。 |
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あー。 |
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うん、うん、うん。 |
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そこが難しいですけど、 2人っきりで向き合って、 みゆきさんがぼくに、ぼくだけに 歌ってくれてるんですよ。 これは間違いないんです。 |
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(笑)。 |
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はい、間違いない。 |
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しょうがないなあ。 |
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だってだって、 ぼくが、本人が言ってるんで 間違いないんですっ。 たけいさん、ケーキをこっちに よこさないでくださいっ。 太っちゃうでしょう。 ダイエット中なんですから。 |
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せっかくピエール・エルメで 買ってきたのに。 |
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じゃあ2人で1個にしません? |
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うん、ぼくが上のフルーツ食べるから 下の台をどうぞ。 |
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えー、だって下、炭水化物と バターじゃないですか。 |
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ぼくもダイエット中だもん。 |
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その乙女な会話‥‥ |
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(笑)じゃ下げましょうね、 切りがないので。 |
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山下さんが保父さんみたいです。 |
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でね、なんだっけ、 ぼくの中ではですね、 みゆきさんがぼくに歌ってくれてるの。 で、そのぼくも、みゆきさんそのものなの。 ぼくの気持ちなんですよ、それが。 |
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うーん? |
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だから「with」もたけいさんと一緒で、 「with」の後に名前を連ねていいか? って歌ってるのは、 ぼくが歌ってるんです。 |
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うーん。うん、うん。 |
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CDの方にカラオケが入ってるじゃないですか。 「地上の星」の。 |
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そうだった。 CDは、最後の最後が 「地上の星」のカラオケなんですね。 それも、ライブ音源から、 みゆきさんのヴォーカルだけを 除いたバージョンが入っている。 |
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そうそう。 |
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そう。それが聞きたかった。 なぜなんですか? |
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ほんとうの意図はわからないですが、 『歌旅』のCD版のほうを通して聴くと、 ずっと、客席にいる気分で聴いていたのが、 「地上の星」でぐるーっとカメラが回って 自分がステージの上に立った みゆきさんに重なるように思えるんです。 |
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そうそう、急にステージの側に くるーんとなって 客席が見えるような気分でこれを聴くんですよ。 始めて聴いたとき、すごい緊張しちゃって。 |
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「ちょっと最後、わたしになってご覧」 みたいな。 |
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あー。そうかも! |
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ほんとは、わからないよ。 みんなカラオケ好きでしょうという ただのサービスかもしれないし、 真意は分からないんだけど。 |
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でも‥‥何か意図がありますね、やっぱりね。 |
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ある、ある、絶対ある。 |
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普通、カラオケバージョンとか入れるなら、 歌入りも入って、 ボーナストラックにカラオケですもんね。 でもCDに歌入りはないんですよね。 |
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その入れ替わるって感じで言うと、 DVDの最後のところで、 唯一のMC(語り)が入りますよね。 「同じ時代に、生まれてくれて、 ありがとう」って。 |
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言いますねえ。 |
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言うじゃないですか。 |
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全国を回って、 この土産言葉を置いていきますって。 |
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ぼくらの観た回も、あの言葉を 言ってくれたんですけど、 あれって、何かね、 こっちが思ってることなんですよね、 みゆきさんに。 |
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思ってますね。 同時代のあらゆるすばらしい芸術家に対して そのことを、思いますよね。 |
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うん。 |
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我々が生まれたこの時代に 存在してくれて ほんとにありがとうございますっていうふうに 思ってるんですけど、 それを逆に言われちゃった感じで、 あれも何かひっくり返った感じがしたんです。 え、みゆきさんにそんなこと言われて、 ぼくが思ってることなのにって。 あそこで、だーっ、と涙です。 |
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ああー。 |
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話聞くだけでもわーっ、です。 |
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(つづく) |
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2008-10-15-WED | |||