第1回 たったの10分なのに‥‥
シェフ
(リモコンの停止ボタンを押す)
‥‥‥‥‥‥という作品でして。
‥‥‥‥‥‥。
スガノ
‥‥‥‥スン。
杉江
‥‥スン‥‥スン。
ゆーないと
スンスン‥‥ズズズズ。
シェフ
‥‥‥‥みなさん、鼻をすすってますが。
ええと‥‥まいりましたね(笑)。
じゃあまず、そもそもの話をしますと、
ちょっと前のことなんですが、
「アヌシー国際アニメーション映画祭」
というフランスの権威ある映画祭で、
日本の10分のアニメーション作品が
最高賞をとったと聞きまして‥‥。
で、そのあとに文化庁メディア芸術祭の
アニメーション部門でもその作品が
大賞を獲得したと耳に入り、
それはどんなアニメーションなんだろうと、
この前、観させていただいたんですよね?
山下
ええ、ぼくと‥‥
杉江
わたしと、
ゆーないと
あっしも。
シェフ
そしたら、もう、すばらしくて。
山下
「10分のアニメーションを観ますよ」
って言われて、気軽に観たんですが、
ちょっとね、あなどってましたよね。
杉江
あなどってました‥‥スン。
セリフのないアニメーションでこんなに‥‥。
ゆーないと
うん‥‥ズズズ。
10分だし、軽い作品を想像してた。
シェフ
びっくりしてしまったので、
今日はみなさんをお呼び立てしまして、
10分で観られる作品ですし、
せっかくなのでいっしょに観ましょうと。
山下
で、いま、観終わったところで、
みんなが鼻をすすっている。
(笑)
シェフ
そう、そう、ごあいさつがまだでした。
いまさらですが、こんにちは、感激団です。
よろしくお願いしまーす。
スガノ
スン。
シェフ
さて、今回の感激団には、最年長乗組員、
コギーこと、小木曽さんにも
参加していただきました。
コギー
いやいや、あのね、
すごいね、身につまされたわけ。
山下
いきなり感想がきました(笑)。
スガノ
小木曽さんは、そうだったんですね。
コギー
うん。なんていうか、
いま、五木寛之さんの本を読んでてね、
人生を25年ごとに区切って
100年で考えると、もう後半の25年だけど
その25年は、まだまだこれからだ!
というようなことを彼は書いているんですよ。
はい。
コギー
私もね、これからだと思ってるんだけど、
いま観た作品では、
「で、どうするの?」ていうところで
終わっちゃうじゃないですか。
シェフ
そうですね。
読者のみなさんには「あらすじ」
簡単にご説明しますが、
たしかにこの物語は、
「で、どうするの?」で終わるとも言えます。
コギー
主人公が昔にさかのぼって‥‥。
それで終わっちゃうじゃないですか。
「じゃあ、これからどうするの?」
っていうところが見つけられなくてね、
どーんと、こう、身につまされたわけ。
スガノ
そうかあ、希望がない感じがしたんですね。
コギー
どうすりゃいいんだと。
シェフ
なるほど、
小木曽さんは、かなり重い受け止め方を。
スガノ
身につまされるっていうのはすごいなぁ。
杉江
きょうはみんなと年代が違う
小木曽さんがいらっしゃるから、
これを観たときにどう感じるんだろうって、
すごく気になってたんです。
コギー
私はね、そんなふうに思ったの。
シェフ
たぶんぼくらには気づかない視点なので、
ありがたいですよね、その感想は。
ゆーないと
うんうん。
シェフ
スガノはどうでしたか?
スガノ
ええ〜? あのう‥‥スン‥‥
シェフ
泣いてますね。
スガノ
もう、最初の、
おばあさんが出てきたところからずっと。
シェフ
あ、ぼくもあそこです。
ゆーないと
ですねぇ。
スガノ
う〜ん。いろいろ考えるポイントがあって、
どれからしゃべればいいのかと
思っているところですが。
う〜んと‥‥
小木曽さんのおっしゃる寂しさも感じてたので
最後におじいさんがちょっと笑ったように
見えたのが救いでしたね。
ゆーないと
ああ・・・・。
スガノ
いまの生活を楽しんでるっていうのが、
なんとなくわかったっていうのが、
ちょっと救いだったかなあと。
シェフ
希望がないかも? っていうのは
スガノもすこし感じたんだね。
スガノ
うん。だから、
「いまもおじいちゃんは
 エンジョイしているんだって」
自分に言い聞かせてた気がする(笑)。
山下
あの‥‥ぼくは小木曽さんに言われるまで、
身につまされるようなエンディングだとは
まったく思わなかったんですよ。
スガノ
うそ!?
山下
え、え? なんでですか?
スガノ
山下さん、すぐ身につまされそうじゃない?
なにごとにおいても。
杉江
ねえ、心配しそう(笑)。
山下
いや、それよりもその、
過去の積み重ねほうに気持ちが行ったので。
おじいさんはひとりなんだけど、
足もとにある過去はすごく豊かなもので、
人からは寂しく見えるかもしれないけれど
自分はその思い出といっしょに
しずかに過ごしていくんだろうなぁ、
そういうのって、いいなあっていう。
ゆーないと
うん、あたしもそっち。
どっちかというと、豊かに感じた。
シェフ
ぼくもじつは救われたほうで。
このおじいさんは、
思い出という蓄えみたいなものが
ものすごくたくさんある人ですよね?
で、それで、十分生きていけるんだ
っていう希望みたいなものを感じました。
スガノ
うん、そうあってほしいと思うよ。
でも、楽しいんだろうなって思い込まないと
「もう本当に救いがない」とも思ったの。
だから、絵本の最後を確認して、
自分でそこをすごい補ったんです、もう。
シェフ
アニメと絵本はちょっと違う点もあって
絵本のラストでは、
はっきりとおじいさんが笑ってるんだよね。
スガノ
うん、だからそれにすがって(笑)。
コギー
うーん‥‥でもそれでも僕は、
希望がね、ほしかったんで‥‥。
杉江
わたしは、両方わかるっていうか、
両方そうだなって、すっごい思います。
なんかこのおじさんが自分にも思えるし、
親にも思えるし、子どももこうなるしって、
結局みんなこうなるじゃないですか。
コギー
そうね。
杉江
そうなんですよね。
だから、さっき山下さんが言ってたみたいに、
不安や孤独もあるだろうけど、
自分の足もとにすてきな思い出が
たくさんある人っていうのはやっぱり‥‥
ゆーないと
豊か。
杉江
うん。
山下
自分も、
それがあるようになりたいと思いました。
スガノ
でも、みんなあるよ? いい思い出。
コギー
みんなあるんだよ。そう、みんなあるの。
山下
そうか、そうですね、ないわけがないですね。
シェフ
それぞれにね。
山下
はい。で、もちろんこの物語の、
おじいさんの周りの人たちにも
思い出はみんなあったわけで。
杉江
うんうん。
山下
町はどんどん水没していって、
人々はよその場所に移るじゃないですか。
シェフ
はい、そういう描写もありました。
山下
ということは、
最後まで残っているおじいさんは、
とくに思い出をだいじにしてるようにも‥‥。
スガノ
ああ、そうかあ、そうだよね。
たいせつなんだよね。
山下
もしくは、このおじいさん、
ちょっと頑固なのかもしれないですが。
スガノ
いずれにしてもおじいさんは
いまの暮らしを捨てちゃっていい
とは思ってない。
ゆーないと
うん、だいじにしてると思う。
コギー
うーん、でもなあ‥‥。
(笑)
シェフ
のっけから白熱ですね。
しかもほとんどのみなさんが、これ、
鼻をすすりながらしゃべってますからね。
ゆーないと
半泣き(笑)。
シェフ
10分の、たった10分のアニメーションで、
‥‥ねえ(笑)。
ゆーないと
こんな深い話に。
杉江
すごいと思う。
シェフ
みなさんまだ、
ぜんぜん話し足りないですよね?
もちろん!
(つづきます!)
 
2008-12-19-FRI
 

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いままでの感激団。アニメーション「つみきのいえ」編

今回の感激団メンバー
シェフ コギー ゆーないと
スガノ スギエ 山下
 
終盤の特別ゲスト
作者・加藤久仁生さん
カトウ    


感激団による
『つみきのいえ』のあらすじ
 
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