- 糸井
- みうらと俺は、
共通点があまりないような気もするんだけど、
ひとつあるとしたら、
「自分のことがわからない」ということを
ちゃんと知ってることだね。
自分というものに、ふたりとも
すごく信用がないんです。
- みうら
- ええ、ないです。
ぼくはほとんどないです。
- 糸井
- 「こういうときに自分はどうするんだろう?」
ってことを
いつも問いかけてないと、自分でいられない。
- みうら
- 以前、Tシャツを作ったとき、
なにかメッセージを入れようと思って、
「I don't believe me」と書かれた
Tシャツを作ったんですよ。
- 糸井
- ああ、いいね。
- みうら
- それ着て浅草とか行くと、
外国の人たちはどう思うだろう?
「この人は自分を信じていない」
そんなふうに、
自分を信じないということを明確に言うと、
さらにそれがはっきりしていくから、
すごく楽になりました。
- 糸井
- 俺たちが一家だとしたら、
そこでつながってるかもね。
- みうら
- 「I don't believe me 教」ですね。
- 糸井
- 俺もさ、
「みうら、そのシャツいいな。
だったら自分は違う言葉で作ろう」
といって
「YOUDENTITY」というTシャツを作ろうかな。
- みうら
- ああ、いいですね、それ(笑)。
- 糸井
- うん。でも、ほんとに
そういうことだよね。
「自分を信じない」
- みうら
- ぼくが少し前に
「自分なくしの旅」と言ってたのは
そこがポイントなんです。
- 糸井
- 「自分さがし」じゃなくて「自分なくし」ね。
- みうら
- ないものを探してもない。
だから、ぜんぜんないところから、
ものを発想するんだ、と思って。
- 糸井
- あ、それは本のタイトルそのままだね。
- みうら
- ええ、ホントにそうですね。
自分を信じないことを明確にしてたら、
こうなっていくしかなかった。
- 糸井
- それはもう結局、
ほとんど仏教徒の‥‥
- みうら
- 空の思想ですよね、ええ。
「仕事がない」という言葉は、
聞いたことがあります。
「ない仕事」があるように見せる仕事、
それがあるんだということは、
ぼくは完全に、
糸井さんから教わったと思ってるんです。
糸井さんは、ずっとそれをやっておられたから。
- 糸井
- まぁ、やってたことはおそらくそうです。
だけど俺がいちばん、この発想が
ほんとうの意味で役に立ったのは、
東日本大震災のあとなんです。
例えばツリーハウスとか、まさにそう。
ツリーハウスなんて、ないものなんだけど
みんなが大好きです。
- みうら
- うん。前に
気仙沼のツリーハウスに行かせてもらいましたけど、
登ると気持ちいいですよね。
- 糸井
- 「俺、見たことあるよ」って人も
あんまりいないんです。
「登ったよ」って人もいない。
それはつまり大勢にとって
ツリーハウスが「ないもの」だということです。
それを作れば、東北に行く理由ができる。
みうらがやってることと
俺がやってること、
実は同じなんだなと 思いました。
- みうら
- 糸井さんとぼくとでは、
見せ方が違ってるとは思うんですけど、
でも、それは糸井さんに
教えてもらったことなんです。
- 糸井
- 「経営って何ですか、仕事って何ですか」
という問いに対して、
ドラッカーの「市場の創造です」という
有名な説明があります。
つまりそれは、マーケットを作ることです。
「なかったものを作る」こと。
ドラッカーが言うことと、
みうらの言うことがそのまんまつながります。
- みうら
- かしこい人が言うことと、
バカなことを言ってる人が
ピタッと合うとこがあるって
言いますもんね。
- 糸井
- そうね(笑)。
「ある」の中で仕事をしてたら、
競争になるだけですからね。
- みうら
- かまぼこ板の看板を抱えて、
ぼくのイメージとしては、一人相撲を
ずっとやってる感じなんです。
- 糸井
- でも、奉納相撲と同じで、
それを誰かが見ていないと
成り立たないんだよね。
▲一人相撲 今治市大山祗神社
- みうら
- そうなんですよ。
- 糸井
- 崖からみうらの視線を外したら、
ただの風景に戻っちゃうけど、
みうらが「崖や!」と思ったら、
そこにグッとくる崖が現れるわけです。
「ない仕事を生むこと」は、
きっと誰もができる。
しかもみんなが喜ぶことなんだよね。
- シジュ
- <えーっと、時間が来たから、もう終わりダジュよ‥‥>
- みうら
- そうだった、今日はタイムキーパーが
ゆるキャラでしたね。
俺、これまでいろんなゆるキャラを
見てきましたけど、
遠目にも「中の人」いや、魂の部分が
見えるキャラはめずらしいですよ(笑)。
- シジュ
- 〈ワハ、とにかく時間だジュな、終わり!〉
- みうら
- 終わり(笑)。
ありがとうございました。
- 糸井
- ありがとうございました。