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大沢 |
あの、どこかで一度お会いしてるなという
記憶があるんですが‥‥。
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糸井 |
雑誌の企画とかじゃないですかね?
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大沢 |
‥‥あ、野球の話?
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糸井 |
たぶん、文春か何かだったと思うんですけど。
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大沢 |
だったら『週刊文春』か‥‥『Number』か。
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糸井 |
そんなとこでしょうかね。
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大沢 |
ぼく、むかしからアンチ巨人なんで
赤瀬川(原平)さんや糸井さんみたいに
巨人ファンのかたがたと
なぜ巨人がいいのか、
イヤなのかという話をした‥‥んでしたっけ?
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糸井 |
そうです、それです。
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大沢 |
そうか、そうか。
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糸井 |
今日は、それ以来ということで。
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大沢 |
ええ。
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糸井 |
どうも、おひさしぶりです。
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大沢 |
ご無沙汰してます。
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糸井 |
こういうかたちで、またお会いするとは。
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大沢 |
そうですね、ええ。
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糸井 |
ぼく‥‥大沢さんの『新宿鮫』シリーズのなかでは
圧倒的に『毒猿』がおもしろかったです。
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大沢 |
そう言ってくれる人は多いですね。
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糸井 |
やっぱりそうですか。
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大沢 |
だいたい6割は『毒猿』って言います。
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糸井 |
あ、そんなに?
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大沢 |
もちろん、人の好みはそれぞれですから
3作目の『屍蘭』(しかばねらん)がいいとか、
6作目の『氷舞』(こおりまい)が好きだとか‥‥。
宮部みゆきさんなんかは
『炎蛹』(ほのおさなぎ)がおもしろいとかって
言ってますけど、
それでもやはり圧倒的に『毒猿』が多いですね。
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糸井 |
あれって2作目でしたっけ?
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大沢 |
うん、でも『新宿鮫』シリーズのなかでは
もっとも異質な作品なんですけどね。
『毒猿』という作品は。
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糸井 |
つまり、鮫島が主人公っぽくないから?
※鮫島‥‥『新宿鮫』シリーズの主人公・鮫島警部。
「下の名前」は明らかにされていない。
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大沢 |
そうそう、あれは「毒猿」という暗殺者と
「郭」という台湾の刑事の話なんで。
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糸井 |
でも、本当に、あれはすごかったですよ。
覚えてるのは、パチンコ屋でパチンコ打ちながら
「うわーっ、おもしれーっ!」って(笑)。
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大沢 |
そうですね‥‥あの小説は
アクションを中心としているストーリーで、
「落ちるべきところ」に
ぜんぶ「落ちてる」物語なんですよね。
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糸井 |
うん、うん。
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大沢 |
最後、鮫島と毒猿が対峙する瞬間まで含めて、
ある意味、ハリウッド映画的に
きちっと要所要所を押さえた構造になってる。
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糸井 |
映画になったのは、別の話ですか?
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大沢 |
そう、1作目です。
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糸井 |
真田広之が鮫島で。
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大沢 |
いまや『おくりびと』で有名になった
滝田洋二郎監督です。
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糸井 |
あ、そうだったんだ。
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大沢 |
でもね、『毒猿』も
『グリーン・ディスティニー』とかを作った
ビル・コンって
中国人のプロデューサーが「やる」と言って‥‥。
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糸井 |
映画に?
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大沢 |
いや、もう10年ぐらい前に
その人が映画化の権利を持ってったんですけどね、
いまだにやるだの、やらないだのって。
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糸井 |
へぇ‥‥。
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大沢 |
ま、いいんですけど。
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糸井 |
でも、いちばん最初の『新宿鮫』がおもしろくて、
でも2作目の『毒猿』で
もっともっと、おもしろくなっていって‥‥。
1作目、2作目、3作目‥‥と読んでいくごとに、
「前よりおもしろい」って言わせてますよね。
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大沢 |
ありがとうございます。
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糸井 |
これって、人におもしろいと言わせる仕事の
「作家」にとって、
本当にもう‥‥えらいことだと思うんですよ。
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大沢 |
これを「道祖神現象」という。
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糸井 |
え、何ですか、それは。
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大沢 |
どんどんデカくなる‥‥。
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糸井 |
(笑)。
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大沢 |
あ、まだキャバクラじゃなかったっけ?
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糸井 |
‥‥あの、ハードボイルド作家って、
みなさん、こういう感じなんでしょうか?
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大沢 |
いや、ぼくだけを見ちゃダメなんじゃないですか。
「美脚」が趣味のオレと、
「巨乳好き」の北方(謙三)さんをだけ見て、
ハードボイルド作家を判断しちゃ。
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糸井 |
‥‥どうやら、今までの「ほぼ日」には
あまり出なかったタイプの人が来たようです。
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大沢 |
え? そうなの?
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糸井 |
読者のみなさんが、驚きませんように‥‥。
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大沢 |
ぼくはぜんぜん違和感ないんだけど。
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糸井 |
いや、冗談です。そんなことないです(笑)。
<つづきます> |