「おひつ膳 田んぼ」のお米のこと。

ごはんにのっけるぜいたくな削り節。

「ごはんにのっけるぜいたくな削り節。」と
いっしょにお届けするお米は、
第一期、第二期ともに、「おひつ膳田んぼ」から
分けてもらった新米です。
「おひつ膳田んぼ」は、
ながく青山に事務所のあった「ほぼ日」にとっては、
ずっと「なじみの定食屋さん」のような存在でした。
なにしろお米がおいしい。
お米そのものも、炊きかたも、
おひつに入っているようすや、
おかずもみそ汁も漬物もいいあんばい。
昼・夜と食べに行くのはもちろん、
よくおにぎりをテイクアウトで持ち帰りました。
「生活のたのしみ展」で「たのしみ弁当」を
つくってもらったこともありました。
「ほぼ日」が神田に引っ越して、
ちょっと遠くなっちゃったんですけれど、
都内に3つあるお店には、「ほぼ日」乗組員たちが
いまでもときどき通っています。
ここでは「おひつ膳 田んぼ」の社長である
岡野真吾さんに、
ごはんを炊くとき、食べるときの
いろんなヒントをききました。
岡野さんはお米のプロ。
つくり手でもあり、目利きでもあり、
そして「炊く人」としても
「おいしく提供する人」としても
最高のプロフェッショナルなんです。
せっかくの削り節ですから、
最高の状態で炊いたごはんと
一緒にいただきましょう!

どうして「おひつ膳 田んぼ」の
お米はおいしいの?

簡単なようで、身近なようで、お米は深い。
それをみなさんに伝えたいと思って、
「おひつ膳 田んぼ」を25年やっています。

うちで扱っているお米は、つねに4種類です。
そこに絞り込むまでにはそうとうな数の分母があり、
そこを勝ち抜いてきたお米なわけですから、
どれも自信を持ってお出しできるものです。
もちろん並べて食べ比べたら
「こっちはちょっともちもちしているね」とか、
「粒々のハッキリ感がちがうね」とわかると思いますが、
どの品種であっても、おなじように
「うまいな、やっぱごはんっておいしいんだね」
って言っていただけるお米だと思います。

今回は、新米を提供したいというスケジュールに合わせて
ふたつの米をえらびました。
1回目は新潟長岡コシヒカリ。
充実したもっちり感と食べごたえがあるお米です。
2回目は岩手江刺金札米ひとめぼれ。
ほどよいもちもち感と、きわだつ粒々感が特徴です。
昭和初期に天皇献上米となり、
いまで言う高級ブランド米として知られたお米で、
ちょうど今年誕生100周年をむかえます。
どちらも、冷めていく過程で
どんどん甘みが出るのが特徴です。

ひとめぼれは、コシヒカリにさっぱり系の違う品種を
掛け合わせてできたもので、
系統はもちもち系なんだけれども、
コシヒカリほど粘りがあるわけではありません。
ただ、そこには、食べる人の育った環境、
食べ慣れている味による好みがありますから、
「どっちがいいですよ」とは言えません。
おおまかに言うと
西で育ったひとはサラサラしたお米が好きで、
東で育った人はもっちりしたお米が好き。
そこに「どっちがいい」は絶対にないんです。
これは、僕がこのお店を25年やってきて、
議論をしないって決めたことです。
なぜこの品種を選んだか、と聞かれたら、
オーナーであるぼくが好きだから、と答えています。

「ほぼ日」のみなさんが、
「どうしてこんなに田んぼのごはんはおいしいんだろう」
とおっしゃってくださるんですが、
その理由は精米です。
肉眼だと差がわからないんですが、
高精細顕微鏡で撮影をした画像を見てください、
一般的な精米では生じてしまう「割れ」が、
うちの米にはありません。

玄米の大きさが10だとしたら、
それを一度に磨いて9にするのが一般的な精米でつくる
「白米」です。
うちはそれを二度にわけて磨き、
一度目に9.5にしてから、
二度目で9.3にもっていきます。
そうすることで、まったくひびが入っていない米が
仕上がってきます。
それを炊飯すると、つぶつぶのまま、炊けるんですよ。

ひびの入った米は、炊飯中に割れてしまうんですね。
もちろん全部じゃないんですが、一部の割れた米が、
割れていない米と米の隙間に入るので、
隙間がなくなって、全体がねばねばになってしまう。
極端に言うと、団子になるんです。
ちなみに、精米のときに欠けた米が混じっていては
同じことになるので、
うちでは、精米のあと、選別機にかけて、
割れた米をはじくようにしています。

ちなみに、いいお米は、
冷める過程でアルファ化して甘みを出します。
いいお米の「ひやごはん」がおいしいのは
そういう理由があるんです。
ただ、いい冷めかたをしないと、ごはんは乾くだけで、
甘みを出してくれません。
適度に蒸気をとりつつ、
ゆっくり冷めるのがいいんですね。
うちが「おひつ」、蓋付きの木の容器で
ごはんをお出ししているのはそんな理由があるんです。
だから最初はアツアツで食べて、
2杯目はすこし冷めて、甘くなったごはんが食べられる。
「おかわりしてもおいしいな」って
おっしゃっていただけるのは、そういうわけなんです。

お米の炊きかた

炊飯器がなんであれ、土鍋であれ、
ごはんを炊くときには絶対の決まりがあります。

まず最初にお米を量るとき、
ちゃんと「すりきり」で量を決めること。

米はサッと洗って浸水させ、
1.3倍になったら炊くこと。
なってなかったら、炊いちゃダメです。
ガシガシ研ぐと割れてしまうので、
指をひろげて水中で攪拌する程度で大丈夫です。
1.3倍になるまでの浸水時間はおよそ50分です。

ちなみに、米はいくら長く浸水させても
1.3倍以上にはなりません。
20時間だろうが、それ以上は水を吸わないんです。

そうしたら、水を取り替えて、
水を切ったらすぐにおかまに入れます。
ザルにあげたまま放っておいて、乾燥させちゃダメですよ。
それが割れる原因になりますから。
みなさん、お風呂から出て、
拭きもしないでずっと立ってたら、
皮膚がパリパリしてきますよね。
同じです。米もヒビが入るんです。
米がかわいそうです。

炊くときの水の量は、
最初の米と同重量です。
これは道具がなんであれ、一緒です。
炊飯器の目盛りは、ガイドラインでしかないので。
メーカーによってちがいます。
多くの炊飯器は「ちょっと少なめ」
(マイナス1~3ミリ)の水量がいいように思いますが、
お使いの炊飯器の個性をみきわめ、
ご自身の好みで決めてください。
そして炊き上がりの蒸らしも重要な炊飯過程です。

こんなふうにルール通りに炊けば大丈夫。
時間がなくて浸水時間が短かったり、
水の量が適当だったりしたら、
お米からしてみたら、
「僕、もっとおいしく炊けたんだけどな」
ってことです。
「半端な僕を食べるんだね、残念だったね」って。
あるいは「お前、もっと待てよ。待つだけじゃねぇかよ!」
みたいなね(笑)。

ちなみに、さきほど「さっと洗って」と言いましたが、
ぼくの推奨は「べつに洗わなくてもいいですよ」です。
「おひつ膳 田んぼ」の米は、
無洗米だと思って扱っていただいてかまいません。
今回、3合入りですから、まとめて炊いてください。
というのは、1合って、どうしてもうまく炊けないんです。
そして2合よりも3合のほうがおいしく炊けますから。

「ごはんにのっけるぜいたくな削り節。」は、
とても繊細な味ですよね。
これをたのしむには、僕は、味を足さずに、
ごはんと削り節だけで食べるのが
いいんだろうなと思います。
口の中で、ちょっとゴワゴワさせながら、
ごはんと絡ませて食べるのがいいんだろうなと。(談)