依頼をいただき、
じっさいにこの削り節を食べさせてもらって、
あまりのおいしさにびっくりして。
「こんなにかけるの?」という
人生最高の削り節の量をごはんにかけて、
それをおつまみにお酒をいただきました。
えっ、おかしい?(笑)
わたし、あれでお酒飲めちゃった。
それで、どんな絵にしようかなと、
イメージをふくらませました。
「いきのいい鰹を描こうかな」
「かまどの風景はどう?」
など、いったん考えて、
それを描きながらまた考える、
という作業をくりかえすんです。
そうして最終的に出てきたのが、
茶わんのごはんの上で踊る削り節と、
たちのぼる湯気のなかに見える薩摩の海の景色、
それから、3匹の猫でした。
私にとって、海といえば、
浮世絵にある、江戸の佃島のイメージです。
それをもとにこの削り節に使っている
かつお節がつくられた薩摩の海の景色を重ねました。
猫はですね‥‥、歌川国芳の浮世絵に、
「猫の当字(あてじ) かつを」というのがあって、
それを思い出したんですよ。
当字とは江戸時代のことばあそび。
国芳の絵は、猫が何匹も組み合わさって
「か・つ・を」のひらがなを表しているんです。
それから、削り節をごはんにかけていただくことを
「ねこまんま」とも言うでしょう?
そこからの発想もあって、
「猫とかつお節」のすがたを
擬人化して描きました。
わたしの本業は江戸型染で、
まず木版画をつくるんです。
筆で描いたものをもとに、
型紙を彫ることもありますが、彫刻刀のあの独特の線が
かつお節には合ってる気がして。
今回もその手法、そのタッチを残しました。
商品名も、きっちり彫りましたよ。
これ、フォントではないので、
そんなところも見てもらえたらうれしいです。(談)
(おぐら・みつこ)江戸型染作家。
1884年より続く、
神田神保町の大和屋履物店に生まれる。
都立三田高校、東京藝術大学・大学院美術研究科
デザイン専攻修了。大学院卒業後は、
染色作家・西耕三郎さんのもとで「江戸型染」の技術と
江戸文化を学んだのち、「小倉染色図案工房」として独立。
現在は、着物、手ぬぐい、下駄の花緒、暖簾など、
バラエティ豊かな型染作品を生み出している。
図案、木版、型紙づくり、染めまで、一貫して手作業。
小倉さんの「江戸型染」の世界は、
「ほぼ日」に2009年に掲載されたコンテンツ
「小倉充子さんと、江戸のきもの。」、
小倉さんデザインの「やさしいタオル 江戸」もどうぞ。
●公式ウェブサイト
http://www.ogurasensyokuzuankobo.jp/