TOPへ

三脚を使うことにした理由。
糸井重里

ティーテーブルに「三脚を使おう」
というアイデアは、
糸井重里から飛び出したものでした。
なぜ、三脚を?
なぜ、テーブルの脚にしようと?
完成したばかりのティーテーブルを眺めながら、
発想の原点を糸井に訊ねました。
※この記事の取材は2015年におこなったものです。

糸井
おおーー(笑)。
こーれは、たのしいんじゃないですか。

できましたね。
──
はい、できました。
長い時間がかかってしまいましたが。
糸井
そういうタイプの仕事も、なかにはありますね。
──
ようやくここまできました。
ティーテーブルをつくろうと最初に思ったのが
もう2年以上前のことですから。
そこから長い試行錯誤の期間があって、
「家具をつくるのは、ぼくらには無理かも」と、
あきらめかけていたある日、
糸井さんがポンッと手を叩いて
「そうだ、三脚を使おう」と。
糸井
「ちょっと三脚もってきて」と。
──
あのとき、なぜ「三脚」と思ったんですか?
糸井
それは、どこから話せばいいか‥‥。

あの、「脚のある家具」がありますよね。
たとえば椅子とか、テーブルとか。
そういう家具に接するときって、
みんなが意識しているのは
面積の広い、からだに触れる部分なんです。
椅子だったら背中の部分とか肘かけとか。
テーブルなら天板。
──
たしかに。
そういう場所に目がいきます。
糸井
ところが、いろいろ見てきて思うのは、
テーブルとか椅子の場合、
「脚がどういう考えで作られているか」
ということが
ものすごく大事なんです。
──
脚が大事。
糸井
つまり、どのくらい脇役になるのか、
もしくはどのくらい「俺もいるぞ」と言うのか。
「主張」と「謙虚さ」、
「押し」と「引き」。
このバランスをどうとるかが、
ものすごくむずかしいんですよね。
──
ええ。何度も壁にぶつかりました‥‥。
糸井
ぼくら、最初の動機はばっちりなんです。
「小鳥たちがエサをついばみにやってくる
 バードテーブルみたいな、
 みんなで集えるティーテーブルがほしい。
 ピクニックとか、ちょっとしたミーティングに
 ひょいっと持っていける、
 コンパクトでかわいいテーブルがほしい」
この動機は、たのしくていいものです。

でも、試作を横から見ていると‥‥
やっぱり「脚どうする?」で苦労をしている。
──
はい。
糸井
一方で、上にのせる天板の部分は、
案外ぼくら、どんどんできるんですよ。
すてきなデザインを誰かと組んで考えるのは
うちの得意なことなんですね。
──
そうでした。
デザインの候補がどれもかわいくて、
絞り込むのがたいへんなくらいで。
糸井
でしょう? そこは得意なんです。
だったら、
そういう得意なことをしっかりやって、
むずかしい脚の部分については
もっと軽くできないかな? と考えました。

とは言ってもねぇ‥‥
どうすれば軽くできるのか。
なかなか答えは見つからないですよ。
その見つからない期間がこれまた長かった。
──
はい。
糸井
で、同じ頃、
うちのリビングにずーっと長いこと
三脚が置いてあったんです。
なぜあるのか、理由はよくわからない。
たぶん家の中で写真を撮ったり、
あるいはセルフタイマーに
使うかもしれないと思って、買って、
置きっぱなしにしてたんだけど‥‥
なんていうの?
置きっぱなしにしてても三脚って、
「私はいませんから」(三脚の声で)。
──
ははははは。
三脚が言ってる。
糸井
うん(笑)。
自然音みたいなものなんですよね。
川のせせらぎがずっと聞こえてるんだけど、
いつのまにか意識から消えているような。
そこに三脚があるのは認識してるんだけど、
「ないことになってる」っていうのが
おもしろいなぁと思ってて。
──
黒子みたいです。
糸井
そうそう、文楽の黒子。
「誰もいないから見ないで」
という約束ですよね、黒子は。
──
黒い三脚も同じですね。
糸井
だから、
考えが重なったんですよ。
「テーブルの脚を軽くしたいなぁ」と、
「三脚って黒子みたいだよね」という考えが
あのとき自然に重なって‥‥
──
「そうだ、三脚を使おう」と。
糸井
うん。
で、その方向で試作をしたら、
案の定いろんな問題が解決しましたよね。
──
「脚どうしよう?」から開放された上に、
他にないテーブルが誕生しました。
糸井
三脚はどこにでも置けます。
酷使できる道具です。
だから、どこにでも置けるテーブルになった。
車に積んでおいて公園で使ってもいいし、
ベランダとリビングとか、
家の外と中を行き来もできる。
マグカップをのせても、植木鉢を置いてもいい。
なんなら、
カメラをのせて写真も撮れる。
──
はい(笑)、
もともとはそのための道具ですが。
糸井
久々に、
「ほぼ日」発の新商品ですよね。
──
ええ。
見たことないものです。
糸井
こんな感じでね‥‥(コップを乗せる)。
糸井
いいんじゃなーーーーい?
──
はい(笑)。
糸井
撮影は? もう終わったんですか?
──
ええ。
公園とか家のなかで
モデルさんが使っているカットを
いろいろ撮りました。
糸井
いいですねぇ。
とにかく、かわいく使ってるシーンを
届けたいよね。
なんかこう‥‥
たとえば本当にあるすてきな会社とか、
なにかのグループの人たちが
これを手にとってさ、
驚きながら、わいわい使ってみるみたいな。
そういう写真も、あるといいですよね。
──
あー、いいですね。
実際に使っているところの写真。
糸井
バンドの人たちもいいな。
ほら、たとえば、チャットモンチーとか。
──
‥‥え?
チャットモンチー?
糸井
いや、たとえばですよ。たとえばの話。
彼女たちみたいな女の子が
このテーブルで遊んでる写真が撮れたらさ、
うれしいじゃない?
──
それは、かなりうれしいです。
あのふたりがこれを‥‥。
糸井
ま、むずかしいでしょうから気にしないで。

とにかく、
完成しておめでとうということです。
あとはこれを、たのしく届けましょう。
──
はい。
ありがとうございました。お疲れ様です!
糸井
おっつかれーーーっす!!

※この糸井へのインタビューから
2週間後のことでした‥‥。