ほぼ日酒店 YOI
HOBONICHI
PUCHI PUCHI WA-SAN-BONはこんなワイン。
[1]ドメーヌ・ヒデ
渋谷英雄さんインタビュー
「いいブドウと、いい蔗糖」
ドメーヌ・ヒデの「ヒデさん」こと
渋谷英雄(しぶたにひでお)さんがつくる
「ほぼ日酒店 YOI」のワイン、
第2弾は「赤のスパークリングワイン」です。

発泡ワインの作り方にはいろいろありますが、
今回は、蔗糖を使って発泡させるスタイル。
その選定を「ほぼ日」がおこない、
和三盆と黒糖をえらび、ワイン作りに参加しました。

ヒデさんに、このワインができるまでのことをききました。

赤の泡は、いままでにも何度かつくってきました。
ブドウの持ってる糖分を、一旦、酵母が食べきって、
澱(おり)が下がったあと、
再発酵をさせて発泡させます。
たとえばシャンパーニュは、一度発酵を終わるのを待ち、
澱を下げてきれいにしてから
もう1回あまり澱が出ないような酵母を入れます。
その時、糖分がないと発酵しない。
でも、もう、ブドウの持ってる糖分が足りないので、
蔗糖(しょとう)を入れるんです。
僕が以前からつくっている
「BEBE」という赤の発泡ワインは、
ペティアンという手法をつかい。
発酵が終わりかけのところで瓶詰をする、
つまり蔗糖を使わずに発泡をさせる
方法をとっているんですが、
今回のワインは蔗糖をつかっています。

●ほぼ日の蔗糖選び

今回の蔗糖選びは、「ほぼ日」に託されました。
これまでヒデさんが使ったことがあるのが
黒糖と和三盆ということで、
各地から「おいしい」と評判の
8種類の黒糖と3種類の和三盆を集めて試食。
「最後まで風味が残る」ことから、
鼻に抜ける香りの印象を大事に選んでいます。
当初は、味が深くなりそう、ということから
黒糖をメインに考えていたのですけれど、
基本を和三盆におき、
黒糖をアクセントで使う、という方法に落ち着きました。

ドメーヌヒデに農業を教えてくれている
師匠の畑のぶどう(マスカットべーリーA)を
9月に入った新月の日に収穫し、
その翌日から仕込みを始めました。

畑は砂礫質の石ころだらけで水はけのいいところです。
日差しも程よく当たり、
風が抜ける場所なので、
ワインのブドウ畑としては最高の場所だと思います。
ブドウは頑張って甘くなる努力をする。
毎年、おいしいブドウがとれるんです。

ブドウをつぶすのは、足踏み破砕です。
酵母はヴィーガンという農薬を使わない
自然酵母(ピエ・ド・キューブ)を使っています。

ふたつの蔗糖のうち、最初に入れたのは黒糖です。
そして10月に入ってから澱引き(おりびき)を2回。
2回目は満月の引き潮時間におこないました。
それは香りを落ち着かせるためのタイミングで、
ワインが華やかなのはいいんですけれど、
化粧品と一緒で、華やか過ぎても、
きつい香りになっちゃうんですね。
それをなじませるには、
引き潮のときが一番いいと言われているんです。

そしてすぐに仮瓶詰めをして、
瓶の中で2次発酵を始めます。
そのときに和三盆を入れます。

どんな味になるかは、
正直に言うと、作り手としては未知なんです。
でも経験的に、和三盆が悪さをすることはない。
黒糖はコクを持ってきますが、
やさしさとかまろやかさを持ってくるのが和三盆です。
いいバランスで合わさっているはずだと思います。

そして11月の後半になったら、
氷結デゴルジュマン作業をします。

氷結デゴルジュマンっていうのは、
瓶の中で溜まる澱を、凍らせて飛ばす作業です。
底ではなく瓶の先のほうに澱を溜めて、
1回、栓を抜いて圧力で飛ばすんですが、
凍らせないときれいに飛ばないんですね。
凍らせるのには氷を使うんですけれど、
通常の氷だと凍らないので、
塩水を使うんです。マイナス20℃まで下げます。

ここで、大手さんはフリーザーを使うんですが、
僕らは高額なフリーザーを導入する余裕もスペースもなく、
キーンっていう稼働音も苦手なので、_
古典的な手法でやっているんですね。
これは、おそらく、他のワイナリーでは
あんまりやっていないことだと思いますが、
シャンパーニュでも冷凍機が無かったころのやりかたです。

それを1日2日かけてやって、
そのあと2週間後ぐらいには出荷です。
つまり「出来立て」をお届けします。

栓は、コルクではなく、王冠です。
お客さまに気をつけていただきたいのが、
生きた酵母が活動している状態のまま詰めていますから、
開栓のときに泡が出やすいということです。
とくに赤の泡は吹きやすいので、
うんと冷やして、静かに、
すこしずつ空気を入れて開栓してください。

保存は、赤ワインの温度(14℃程度)でいいんですが、
飲むときはガンガンに冷やします。
できれば2℃ぐらいまで冷やしていただき、
そこから立ち上がりを楽しむのがいいと思います。

冬ですから、温かい部屋で、温かい料理、
お鍋とかシチューとかといただくこともあると思いますが、
だんだんグラスに注いだワインの温度も
上がってきますよね。
それも面白いと思うんです。
味わいの最初は口に収斂味(しゅうれんみ)があって、
引き締まるような味わいから広がっていく。
1本、飲み切るころが一番おいしいと思います。(談)

2021-12-14 TUE
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