ほぼ日酒店 YOI
HOBONICHI
大山圭太郎さんと
「遅桜」のこと。
このコンテンツで重要な役割をになっている
西麻布の日本ワインの専門ショップ
「遅桜」のソムリエ、
大山圭太郎さん。
そもそも、大山さんってどんなかたなんだろう?
「遅桜」ってどんなお店なの?

最初の仕事は音楽でした。
作詞作曲をして、ギターを弾いて、歌って。
けれどもそれだけでは食べられないし、
スタジオ代とかレコーディング代とか、
ライブ代だってかかる。
それでイタリアンレストランへ
アルバイトに行くんですが、
そこでワインに目覚めました。
もともと母親が料理が好きで、
食べることも飲むことも好きな家でしたから、
わりとすんなりその道に入ったんだと思います。

レストランに入ると、
接客や料理はもちろんなんですけども、
ワインと触れ合う機会が増える。
そのなかでワインの魅力にどんどん引き込まれ、
音楽をやめて、
ワインの仕事をしたいなと思うようになりました。

当時、1998年、99年ぐらいかな、
世界のワインが日本にどんどん入ってきていました。
チリワインとか南仏ワインとか、
知らなかった珍しいものがたくさん。
当時はロバート・パーカーというワイン批評家の影響で
濃いワインが流行っていた時期でした。

そんななか、イタリアンだけじゃなく、
フランスワインとフレンチ(料理)のマリアージュを
もっと勉強したいなと思ったので、
25歳の時にフレンチレストランに転職をしました。
5年間、店長をやりながら、
資格をとってソムリエをつとめました。

そうして20代はレストランで仕事をして、
飲食とは違うワインのかかわり方を身につけたかったので、
30のときにワインショップに転職をしました。
そのあとはいろいろな人との出会いがあって、
ワインに関するいろんなチャンスがめぐってくるんです。
そうしてワインショップ、ワインバー、ワインバル、
レストランの立ち上げの
プロデュース業をするようになりました。
仕入れから店舗づくりから料理まで
すべてのプロデュースをして、
オープンしたら数か月はスタッフたちを育てるため
店長として勤務をするんです。
そして店がまわるようになったら、
僕は次の店の立ち上げに向かう、
というサイクルでした。
飲食店の経験があって、
ワインショップの経験もあるので、
どちらも理解をしていたことが強みになりました。

そうして、いまから6、7年前、
僕が立ち上げた赤坂のワインバルで、
お客様として来ていたのが、
現在、僕が店長をつとめている
「遅桜」をつくることになる人でした。
そのワインバルはいろんな世界のワインを
グラスワインで楽しめる場所だったんですけれども、
その頃から注目されてきた日本のワインも
グラスで出していたんですよ。
それを出したとき、その人は
日本のワインにいいイメージがなかったらしくて、
すごく驚いてくださったんです。
「あ、こんなに日本ワインって美味しいんだ?!」って。

「そうですよ、最近は、
こういうふうに日本ワインも注目されてきて、
美味しくなっているんですよ」って言ったら、
「日本のワインの専門ショップって、日本にあるのかな」。
当時は日本のワインだけで正直やってる専門ショップって
なかったんです。そう伝えたら、
「そういうお店、できる?」って訊かれて、
「できますよ!」って言っちゃった(笑)。

というのも、そのときは、
フランスワインの専門ショップもやっていて、
フランスに買い付け行ったりとか、
そっちのほうが大変だなあと思っていたんです。
だから日本のワインだったら、
そんなに大変じゃないのかなと思って(笑)。
ところが、蓋を開けてみたら、
なかなかどうして、日本のワインのほうが大変でした。

フランスだったら、
国によって専門のインポーター(輸入会社)もあるし、
さらにフランスなら
地域によって細分化されているんですよ。
ブルゴーニュ、ボルドー、シャンパーニュ、
もちろん自社のブランドで南仏のワインを
入れたりもしていたんですが、
インポーターからチョイスする仕事も多かった。
そうして集めたワインは数も多く、
品物が届けばすぐに販売ができるわけです。

ところが、日本のワインにかんしては、
昔からの文化として「酒蔵」なんですね。
とりまとめる会社はなく、
ワイナリーごとに契約をしなきゃいけないんです。
しかも酒蔵ですから、みなさんが想像するとおりの
「職人気質の頑固さ」もあって、
信頼を得なきゃいけないですし、
そのためには足しげく通って
仲良くなるところから始めないといけない。
ところが、店の場所として決めていた西麻布は、
彼らの印象は「怪しい場所」。
じっさいはそんなことばかりじゃないですよ、
高級住宅地でもあるし、評判のレストランもある、
グルメの多い町なんです。
けれども、やっぱりイメージがよくなかった。
だから自慢で作った西麻布の住所の名刺が
あだになりました。
「大丈夫なのか」と疑われることが多く、
なかなか取引をしてもらえないんです。

でも、どうにかワイナリーのみなさんに理解をいただいて、
専門ショップと言えるだけの品揃えでオープンしました。
それがここ「遅桜」です。
1Fが日本のワインショップ、
2Fが料理と日本のワインがたのしめるレストランです。

日本のワインの専門ショップを始めて驚いたのが、
お客さんの反応です。
日本のワインを楽しんでいる人たちの感覚は、
とてもクリアで分かりやすいんですよ。
それは「日本のワインがどんどんおいしくなっている」
という感覚の共有です。
「1年前に飲んだものより美味しいですね!」とか、
「もう1本買った同じワインを飲んだら、
3か月しかちがわないのに、
前に開けたときより美味しくなってる!」とか。
日本のワインの成長スピードの速さで、
お客さんの喜びの笑顔がどんどん膨らんでくる。
ほんとうにやりがいのある仕事です。

「遅桜」の品揃えで
日ごろ僕が気にしているのは、
季節にあったワインの提案です。
春に合うワインとか、新緑の季節、梅雨、夏の真っ盛り、
紅葉の季節、雪の季節‥‥、
それを気にして店頭の品揃えを考えています。

東京・西麻布の日本ワインの専門ショップ
「遅桜」でも、このワインを24本限定で販売します。
くわしくはショップにお問い合わせください。
●遅桜 http://osozakura.jp/

2021-04-23 FRI
YOIのこと。
10年後、ニッポンのワインはもっとおいしくなる。 こんなワイン。渋谷英雄さん こんなワイン。大山圭太郎さん ワインに合う料理 エチケットの絵は画家山口一郎さん archives 渋谷英雄(ヒデ)さん、50歳からワインを目指す。 「ビオ・ディナミ」のこと。 大山圭太郎さんが語るヒデさんのこと。 「遅桜」と大山圭太郎さんのこと。 前回販売した、Les Forts de Laputa 2017について