俳優の言葉は編集しにくい。扱いづらい。
きれいに整えられてしまうのを、
拒むようなところがある。語尾でさえも。
こちらの思惑どおりにならないし、
力ずくで曲げれば、
顔が、たちどころに、消え失せる。
ごつごつしていて、赤く熱を帯びている。
それが矛盾をおそれず、誤解もおそれず、
失速もせずに、心にとどいてくる。
声や、目や、身振りや、沈黙を使って、
小説家とは違う方法で、
物語を紡いできたプロフェッショナル。
そんな俳優たちの「言葉」を、
少しずつ、お届けしていこうと思います。
不定期連載、担当は「ほぼ日」奥野です。
> 山﨑努さんのプロフィール
1936年、千葉県出身。80歳。
1959年、文学座に入団。
1960年に『大学の山賊たち』(岡本喜八監督)で
映画デビュー。
『天国と地獄』(63)『赤ひげ』(65)『影武者』(80)
といった黒澤明監督作品、
『お葬式』(84)『マルサの女』(87)などの
伊丹十三監督作品に出演し、日本を代表する演技派俳優に。
2000年、紫綬褒章を受章、
2007年、旭日小綬章を受章。
『刑務所の中』(02、崔洋一監督)、
『世界の中心で、愛をさけぶ』(04、行定勲監督)、
『おくりびと』(08、滝田洋二郎監督)、
『キツツキと雨』(12、沖田修一監督)、
『藁の盾』(13、三池崇史監督)など、話題作に出演。
最新作は『駆込み女と駆出し男』
『日本のいちばん長い日』(15)『俳優亀岡拓次』(16)
『無限の住人』(17)。
著書に『柔らかな犀の角』『俳優のノート』など。
画家の熊谷守一さんを、
俳優の山﨑努さんが演じています。
読書日記『柔らかな犀の角』の一冊目に
熊谷さんについての本を挙げたほど、
山﨑さんにとって、「モリカズさん」は
「アイドル」だったそうです。
映画では、「モリカズさん」のなかに、
ときどき、
山﨑さんが顔を出すように感じました。
画家に、俳優が、溶けていました。
悲劇の王、死にゆくカメラマン、
トラックドライバー、念仏の鉄。
さまざまな役を演じてきた山﨑さんの、
最新の演技を、観ていただきたいです。
「モリカズさん」が、
庭のアリをじーーーっと見つめるように、
モリカズさん演じる山﨑さんを
ずーーーっと観ていたい、
そんなふうに思える映画だと思いました。
妻役の樹木希林さんとは、初共演!
5月19日(土)シネスイッチ銀座、ユーロスペース、
シネ・リーブル池袋、イオンシネマほか全国ロードショー
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