Lesson1086
「二重目標」で新しい習慣をつくる
2023-10-11
なにごとも三日坊主で続かない、
というときに、
「二重目標」
で、うまくやり続けられた人も多いだろう。
私は、二重目標のやり方のコツを
つかんだように思うので、共有したい。
きっかけは、今年89歳になる母の冷蔵庫。
昨年、父が旅立ち、
そのすぐあとの盆に帰省してみると、
母は哀しみから、食が細り、
げっそりとやつれてしまっていた。
なにかつくって食べさせてあげようと、
食材を買ってきて、
冷蔵庫にしまおうとしてあけたら、
ビックリ!
冷蔵庫はモノであふれていた。
それも質素な漬物のようなものばかり。
賞味期限もきれていて、
奥のほうをみると、まったく同じ、
さらに賞味期限の古い漬物が出てくる。
昭和ひとケタ生まれの母は、
「もったいない」の心で、もともと
食べ物をそまつにすることができない。
さらに、母は食が細って以来、
食材が使いきれなくてたまる一方。
さらに、食べようとしたが食欲がなく、
食べられなかったものも、また、冷蔵庫にしまう。
もらいもののビンづめなども、
母は高齢で手のチカラが弱って
あけることさえできず、
賞味期限が迫って冷蔵庫にしまい、
そんなこんなで冷蔵庫はいつのまにか、
「食べきれないもの」でびっしり。
こうなると、母は、
なにか新しくおいしいものを
買ってこようと思いたったとしても、
「冷蔵庫に入らないから」、
「古いものから食べなきゃいけないから」、
と、買い控えるようになり、
ますます食欲がわかなくなる悪循環。
「冷蔵庫は食の要(かなめ)」
なんとか母が自力で、冷蔵庫を
ずっときれいにし続けられる方法はないものか?
そこで、ズボラな私でも、
習慣づくりに大成功した、
「二重目標」
を思い出した。
二重目標とは、
「理想の目標」と「最低限の目標」の
2つを設定するやり方だ。
実際、母とこんな二重目標を設定した。
「理想の目標」
=毎週金曜日、15分間、冷蔵庫内を片付ける。
「最低限の目標」
=毎週金曜日、冷蔵庫をあけて庫内を眺める。
二重目標でいく場合、
「理想の目標」でも、「最低限の目標」でも、
どっちか1つやれたら目標クリアとする。
「ええっ! 眺めるだけ?!
そんなのだれでもやれるよ!」
とビックリした人もいるだろう。
そう! 最低目標は超ハードルを低くしておく。
「習慣をつくる」のが最重要で最難関だからだ。
それに比べれば、できた習慣の中身を
改善していくのはカンタンだ。
週1で冷蔵庫内を眺める習慣だって、
ひとたびできてしまえば、こっちのもの。
あとは習慣の中身を徐々に充実させていけばいい。
それに、「眺めるだけだ」と思って、
冷蔵庫をひらいてみてるうちに、
「これ賞味期限いつだったかな?」とか、
「あっ賞味期限が切れてる、捨てよう」とか、
ついつい片づけたくなるものだ。
「そもそも理想目標も、たった15分?
そんなんでいいの?」
と思った人もいるだろう。
習慣をつくるには、頑張ったらダメなのだ。
頑張ると苦痛になり、苦痛になると続かない。
母には頑張らないように、
15分とは言ったけど、
開始5分でも「嫌だな、苦しいな」
と思ったら、そこでやめるように伝えた。
もしも、15分間片づけたとき、
「もうちょっと頑張ってキリのいいところまで
やってしまいたい」と思っても、
15分がきたらやめるように言った。
疲れるまでやったら苦痛になる。
「楽しい」「もうちょっとやりたい」
というところでやめる。
「あともうちょっとでキリがつくのに」
という気持ちは、
「来週のおたのしみ!」
と、前へ送る。
1~2週休んでも、
また、しれっと次の週から始めて、
なにがどうでも3か月は続けていく。
二重目標で、
私自身がうまく続けられるようになったコツは、
「理想目標を達成しても、
最低目標を達成しても、
わけへだてなくおんなじ“ごほうび”を
自分に与える」
ということだ。
目標を達成したら自分へのごほうび、
みたいなことは、多くの人がやってると思う。
例えば、
「きょう目標を達成できたら、
高い方のコーヒーを淹れて飲む」とか、
「1か月続いたら、お寿司」とか。
私の場合、ごほうびは、
カレンダーにカラーペンで書きこむ、
「目標達成のマーク」だった。
理想目標をクリアできたらオレンジの「はなまる」。
こどものころ、ラジオ体操のスタンプを
もらうのが嬉しかったせいか、
「はなまる」はけっこうモチベーションがあがる。
で、最低限の目標しかやれなかったときは、
クロペンで、ただの地味な「まる」を書いていた。
つまり、最初のころは、
「理想目標達成」と「最低目標達成」とで、
ごほうびに差をつけていた。
これだと、カレンダーを見返して未消化感が残る。
カレンダーの黒いまるのところに目が行っては、
「もうちょっと頑張れば今月パーフェクトだったのに」
と後悔し、つい頑張ろうとしてしまう。
でも習慣づくりは、頑張ってはダメ。
「たのしくつづく」
に調整して持ってかないとダメなのだ。
5年でも10年でもこれならやり続けられる
という状態に、試行錯誤でたどりつくのだ。
そこで、
理想目標でも、最低目標でも、
どっちができても「同じごほうび」を
自分に与えるようにしてみた。
たとえば、水曜日の洗面所の掃除なら、
排水溝掃除から鏡をふくまでまで
ぜーんぶ完璧にやっても「はなまる」だし、
水ぶきで上っ面をちゃ、ちゃ、ちゃー、と
なでるだけでも「はなまる」。
こうすると、
今週はクタクタ、
洗面所の掃除パスしちゃえと思っても、
「でも雑巾で表面なでるだけで、はなまるよ」
という自分のささやきに、つい立ち上がってしまう。
そうやって、月の終わり、
はなまるだらけのカレンダーをみると、
未消化感なく、前に進める。
それに、最低目標しかしてないのに、
おんなじごほうびをもらったと思うと、
無意識に、なんだか申し訳ない気になるのだろうか、
翌週は、まるで恩返しのように、
自然にちゃんとやってる自分がいる。
「自分をうまく前に逃がす方法」
なのかもしれない。
完璧にはできない自分が、
その気持ちを悔いという後ろ向きにではなく、
前へ、送っていく。
前へ逃がしてやる。
母にも、冷蔵庫内を眺めただけでも、
片づけたと同じように自分をねぎらってと伝えた。
今年のお盆、
帰省するとき、
母に冷蔵庫の新習慣を提案してから1年、
どうなったか、とドキドキした。
はたして、
冷蔵庫の中は片付いていた!!!
母にちゃんと新習慣が定着していた。
母の食欲も戻ってきた。
高齢の母も、
ズボラな私でもできた、
「二重目標で新習慣」
これからも楽しくつくっていきたい、
と私は思う。
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『おかんの昼ごはん』について話しました!
録音版をぜひお聞きください。
●「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
(MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
または、iTunesからのダウンロードとなります。
ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!
▲『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
――山田ズーニー。
▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
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「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
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相手に通じる文章になる!
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『話すチカラをつくる本』
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自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
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『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
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『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書
内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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