Lesson1081
勇気を出したその先にあるものは?
2023-07-26
いま、勇気出さなきゃと思っても、
なかなか勇気が出ない人へ、
「勇気を出したその先にあるものは?」
私の、ちっさいながらも勇気だした経験から
お伝えしてみたい。
ことしの春、私は、ここに次のように書いた。
…………………………………………
この4月、私は未知の分野に一歩踏み出す。
頭のいい人たちの中で、
恥をかくだろう、
失敗するだろう。
「こんなことも知らないのか自分」、
「こんなこともできないのか自分」、
と、自己嫌悪にどこまで心は耐えられるだろうか。
それでも、自尊心を代償に差し出してでも、
いま自分の枠組みを広げなきゃ人生先細る、
と強い危機感がある。
「自分が知らないということを知らないの壁」
を突破したい。
(Lesson1071 「自分という枠組みは広がっているか」より)
…………………………………………
これを書いた4月から約4ヵ月のあいだ、
私は、とある大学院で学んでいた。
「環境」が一変した。
毎週、哲学のディスカッションをした。
そこは、教授や、修士・博士課程の院生たちや、
中国や韓国など海外からの留学生たちや、
多様な社会人がいて、出入り自由で、
毎週、2つのお題でディスカッションすることで、
私は、海外の視点、Z世代の視点、哲学の視点を、
空気のように浴び、思考の呼吸をした。
それは、いつも独りでものを考えていた私にとって、
まさに、「自分が知らないことも知らないの壁」を
小さく突破していく日々だった。
また、論文など知的生産の文章を書く、
具体的な技法も学んだ。
修士・博士課程の院生たちと文章を書く。
1つのテーマに問いを出し合い、
ストラクチャー(文章構造)を組み、
他者と一緒に文章を書く。
それは、独りでものを書いてきた私にとって、
「ひらけ」の連続だった。
そこは頭がいいとされる人がうじゃうじゃいるところ、
偏差値で言ったら筆頭に出てくる大学の、院で。
でも、頭がいい人たちは、私をバカにしなかった。
もちろん、自分の発言の恥ずかしさに、
「ああ、こんなアホはことを言ってしまった」と、
自分でのたうちまわることは、何度もあった。
でも、間違いを指摘されることはあっても、
バカにされるなんてまったく、一瞬も、なかった。
それどころか尊重された。大切にされた。
それは、驚きであり、新鮮な発見であった。
面白い学問が活発にされているところは、
いろんな人が出入りしている。
その中で不思議な出逢いもあった。
たまたま、数回だけ哲学のディスカッションに
参加された方が、高校の国語の先生だった。
その先生の依頼で、
私は、講師として、都内の高校で、
高校2年生112名と小論文のワークショップを
させていただくことができた。
ずっとずっと高校生の書く力の育成をしてきて、
でもコロナ禍で対面のワークショップが全てなくなっていた
私には、希望の光が射すような依頼だった。
当日は、ラストに高2生が、
書き上げた小論文を次々に読み上げた。
それは、高校生の腹から出た純粋な想いでありながら、
いまの社会への視野の広さ、思考の深さ、個性が
にじみ出る文章。
中高一貫で4年間、その生徒たちを見てきた先生も、
涙する、新鮮で、心揺さぶる表現だった。
高校生たちがちょうど進路を考えたくなる時期で、
「小論文のこともそろそろ」と思う高校生にとっても、
うってつけの内容で、高校生の反響は大きかった。
感激された校長先生のご依頼で、
来年度からも、その高校で小論文ワークショップを
させていただくことが決まった。
そのオファーをいただいたのは、
大学院前期の最終日、つまり、
私の約4か月間の挑戦が終わる日だった。
最終日には、大学の門の外で、
出版のオファーをいただいていた
編集者さんも待っていた。
その企画は、私がこの4ヵ月で改めて大事だと
再確認していた内容で。
「できすぎていないか?」
挑戦前は、自分でも唐突で、
どうなるかまったくわからず、
恐くてしかたがなかったのに、
あれこれゆきづまっていたのに、
挑戦が終わってふりかえってみると、
初日から最終日の出口までが、
すーっと一本道で志につながっている。
まさにそれを学びたかったという内容で、
世代も、国も、知識の領域や多寡もぜんぜん違うのに、
なぜか気持ちの通じる、懐かしさすら覚える仲間たちで。
意図して求めたとしてもなかなかつながらないような
出逢いもあって。
挑戦前は、先細る予感しかなかった人生が、
挑戦後の今は、ふつふつと、広がる予感がする。
4月に勇気を出して一歩踏み出してからは、
すべてが新鮮だった。
環境も、人間関係も、学びも。
でも、なにより新鮮だったのは自分の内面。
毎日、新しい風が吹くようだった。
「それは、あれこれうまくいったからでしょ」
と思うかもしれないけど、そうじゃない。
たとえこれが、失敗・恥・無意味に終わったとしても、
私はやっぱり、「新鮮だった」と言ってると思う。
人は、未知をすごく恐れるくせに、
それでいて、新しい景色を見ずにはいられない
生き物なんだと、今回のことでつくづく思う。
人が、勇気を出す時は、たいてい、
それまでの延長ではどうにも予測できない、
どうにもたちうちできない、どんづまった時だ。
つまり、勇気を出す時は、先が予想できない=未知。
だから、
「勇気を出したその先にあるものは?」
と問われれば、
「見たこともない景色。」
答えるだろう。
勇気を出して、見たことのない景色を見る。
ただそれだけで、人は、失敗しても、
うまくいくかどうかも関係なく、
心も、命も、歓んでイキイキしてくる。
勇気を出してつかんだ世界は、
新鮮で、輝いて、面白かった、幸せだった。
この先、どんづまることがあったとしても、
こんなふうに勇気だして、
自分からつかみに行って、
人生切り拓いていけばいいんだな、
という感覚が少しつかめた気がする。
「勇気を出して見る景色は、なにもかも新鮮。」
あの新鮮な景色に触れるだけでも、
一歩踏み出す価値はある、
と私は思う。
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大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。
『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!
『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
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▲『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。
『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!
▲文庫版でました!
あなたの表現がここからはじまる!
『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)
ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/
おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
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まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。
「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!
『考えるシート』文庫版、出ました。
『話すチカラをつくる本』
三笠書房
NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。
『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫
自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!
『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
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『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
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内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)
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