おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1079
人は、ただ想いを表現できるだけで

「依存症」から生還した人の体験を聞いた。

教授が、ゲストとして呼んでくださったのだ。
いま私が学ばせてもらっている大学院の授業に。

その方は、学校にも家庭にも居場所がなかった。

学校から完全に疎外されるきっかけは、
なんと、

「時間割」。

“時間割”がどういうものなのか、どう使うのか、
彼には「さっぱりわからなかった」と言う。

やっとわかったのは、大人になって、
それもかなり最近になってからのことで。

だから、ひとりだけ「時間割」という概念がなく、

でも、先生も、まわりも、まさか、
時間割がわからない子どもがいようとは、
思いもよらず、

だれも気づかない、
だれも教えてくれないまま、

彼は、何年も学校に通い続けた。

とてつもない孤独。

想像しても想像しても足りない、
深い深い孤独だと、私は、
いま思っても胸をしめつけられる。

学校は時間割をもとに回っている。
先生も、生徒たちも、職員も、保護者たちも。

たった1人の子どもだけが、
時間割が存在しない世界に生きている。

「自分と、世界は、時の流れがズレている。」

なにがズレているのかもわからないまま。

想像しただけで、とてつもなく切ない。

当然、学習にも、学校生活にも、大きな支障がでるが、
先生は、「ただやる気のない子」、
「言ってもしかたない子」と見なしてしまった。

一方、家庭はというと、

父親はアルコール依存症、
母親は仕事で不在がちだったそうで、

「寂しい。」

とてつもなく寂しいのだけれど、
その寂しいを出した時の周囲のあまりの反応に、
彼は、それ以降、

「寂しいという自分の感情を出しちゃいけない。」

「そもそも寂しいなどと思ってもいけない。」

「この感情は無きものにしなければいけない。」

と思い込んでしまった。

いま、ここに、確かにある自分の感情を、
自分自身が「否認」し続ける日々。

それでも寂しい感情が顔を出そうものなら、
全力で「否定」し、自分で「墓に葬り去る」日々。

まさに地獄。

学校からも、家庭からも、そして自分自身からも、
彼は疎外されてしまった。

渡邊洋次郎さん、現在、四十代。

中学の時から薬物依存になり、
以降、壮絶な自傷行為、入院、入所をくりかえし、
あるきっかけで立ち直る。

いまは、回復施設の職員として働くかたわら、
著書『下手くそやけどなんとか生きてるねん。
薬物・アルコール依存症からのリカバリー』を出版。
講演は、日本各地にとどまらず、海外にも及ぶ。

子どもの頃、
欲しい愛情が得られなかったことについて、
渡邊さんは、たとえを用いて、

「目の前に、
500円のとてもおいしそうな弁当があるとする。
自分はものすごくお腹が空いていて、
それがものすごく食べたくてしょうがない。

でも手持ちは300円しかない。

その弁当は絶対に、永遠に、手に入らない。

だったら言ってもしょうがない。

言ったところで、自分もつらくなるし、
言われたほうもつらいし、
まわりもつらくなるだけ。」

というようなことを言っておられた。

その日、渡邊さんは、

「いい状態ってなんですか?」

という問いを投げかけた。
その授業は、毎回1人が問いを出し、
哲学のディスカッションをするのだが、

渡邊さんは、人生いろいろありすぎて、
何がいい状態で、何が悪い状態かわからないと。

だから、一般論でなく、ここにいるみなさん、
それぞれにとって「いい状態」は何なのかを聞きたいと。

「人は、ただ想いを表現できるだけで‥‥」

私の番がきた時、
私はつぎのようなことを言った。

「人は、ただ想いを表現できるだけで、
幾分、いい状態と言えるんじゃないだろうか。」

うまく行くことが、いい状態、と思う人も多いけど。

「お弁当のたとえ」で言えば、

500円の弁当を、
人の厚意で食べさせてもらえる、

なーんてことは、なかなか起きない。

「300円しかないけど500円の弁当が食べたい」

と主張したとして、
食べさせてもらえるか、バカにされるかは、
自分でどうにもならない、「他者に負う」ところが大きい。

うまく行っても他者のおかげ。
自分がいい状態とは言い切れない。

そうかといって、

「そんな弁当食べたくない。」

「もともとちっともお腹が空いてなかったんだ。」

と自分の感情をすりかえたり、殺したりは、
ちいさなことでも、ものすごく苦痛だ。

感情を殺すのも苦痛。
感情をやり場のないまま抱え続けるのも苦痛。

「自己が表現されないとき人は虚しい。」

では、どうすればいい状態なのか。

私は、「想いが表現できれば」ただそれだけで、
ある程度いい状態と考える人間だ。

「お弁当のたとえ」で言えば、

感情は、確かに、いま、ここにあるのだから、
食べたいという想い、
それが叶わなくて切ない想い、
それでも食べたい侘しさを、

表現するのだ。

俳句や短歌を詠む人なら、
言うに言えない自分の想いを五七五で、
あるいは五七五七七で。

写真を撮る人は写真で、
絵を描く人は絵で、
日記を書く人は日記で、

「想いを表現する」

ただそれだけで、叶わなくても、少し息が楽になる。

「これだ!」というピッタリの表現ができたとき、
想いは昇華される。

叶う叶わないにとらわれず、

「想いを表現して生きる」

その状態が私にとっていい状態、と
私は思う。

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ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
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【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
自分はつまらない人間ではない。

今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
そもそも自分に伝えたいことはあるのか、
と悩む人も多く、その人たちに、
自分を貫くテーマを発見したり、
相手の心に響くように伝えるコミュニケーション力を
つけたりできる場を提供したい。」
という志に共感しました。
2時間×12コマで、
文章表現の本格的な基礎づくりから始まって、
相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
さらに、自分にしか書けない主題を発見して書く!
までを責任を持ってサポートします。
ひとりでは気づけない自分の潜在力も、
多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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