とんでもない、原丈人さん。 次の時代のヒントは、この人のなかに? 第4部 アフリカへ!
昨年の秋、原丈人さんと最後にお会いしてから いろんなことが、起こりました。  世界的な経済危機や、オバマ大統領の誕生。 こうしたできごとを踏まえて、 原さんは、今、どんな話をしてくれるんだろう? 強い興味を持って、会いに行きました。  あいかわらず、とんでもなくて、おもしろくて、 元気の出る話をいろいろ、お聞きしました。  でも、半年ぶりの原さんが、 なかでも時間と熱意を割いて話してくれたこと。 それは「スピルリナ」のことでした。  前回、お会いしたときには ひとつの「カベ」に直面していたこの計画を 原さんは着実に、前へ進めていたのです。  この夏いよいよ、スピルリナは、アフリカへ!
プロフィール

世界不況とオバマ政権 2009-04-20-MON
敵陣まっただなかで理論を磨く 2009-04-21-TUE
友だちになれるかどうか 2009-04-22-WED
アフリカへ!  2009-04-23-THU
面接官は‥‥先日まで主婦だった 2009-04-24-FRI
原さんという「観光地」 2009-04-27-MON



ワクワクしながら来ました。
ええ、わたしも。
なにしろ、いろいろあったじゃないですか。
去年(2008年)の終わりくらいから。
そういえば、
前回、公益資本主義について話した回が
ちょうど、リーマン・ブラザーズ破綻の日に
更新されたんですってね。
※とんでもない、原丈人さん 第2部 
 第6回「グッバイ・ロンドン グッバイ・ニューヨーク」
そうなんですよ、偶然。
読んでた人は、ビックリしたかもね。
でも、原さんとしては、ずっと考えつづけて、
主張しつづけてきたことを、言っただけで。
うん。
アメリカの金融資本主義がダメになった今でこそ、
これまで、原さんが
ずーっとおっしゃってきたこと自体は
「めずらしい意見」というわけでは
なくなってますけど、ほんの数ヶ月前までは‥‥。
ニューヨークのウォールストリートや
ロンドンのシティでは
みーんな、疑ってなかったわけです。

「会社は株主のものであり、
 短期的な株主利益を最大化すべきものだ」
という考えかたを、みじんも。
そうでしたよね。

そういう流れとは逆の、
原さんが主張し続けてきたことが
現実となった今、
原さんは、いったい何を言うんだろう‥‥と思って、
楽しみにしてきたんです、今日は。
うん‥‥。
去年の秋口から今年にかけて、
いわゆるリーマン・ショックにはじまる
世界的な大不況、
もう一方では、オバマ新政権の誕生‥‥と
大きなことが続いたわけですけど、
原さん、この流れをどう見てたかなって。

いきなり、はじまっちゃいますが(笑)。
オバマさんには、わりと共感を覚えますね。
そうですか。
ふつうのアメリカ人と同じような感覚‥‥、
つまり、上院議員時代にも
けっこう質素な生活をしてたみたいだし。
ええ。
地下鉄に乗るタイプですよ、彼は。
ぼく、オバマのドキュメンタリーとかも
観たんですけど、
なんだか、聞いてて気持ちいい話が
いろいろと、あるんですよね。
一般的なアメリカの人たちが、
自分と同じ生活パターンだと思えるタイプの
大統領なんじゃないかな、たぶん。
原さんとしても、希望が持てそうですか?
ただね‥‥やっぱり大統領個人というよりも、
「アメリカの大統領職」って
その周囲を取り巻く、
さまざまな人やグループの集合体ですからね。
ほう。
だから、たとえば
「経済に関するスタンス」について言えば、
基本的に、ブッシュ政権のときと
大差ないのではないでしょうか。
そうですか。
わたしが「公益資本主義」で考えているような
「時間をかけて新しい基幹産業を育て、
 10年、20年というスパンで
 将来を見とおし、堅実に利益を上げていく」
というやりかたでは、
「効率が悪すぎる」と、言われるでしょうね。 
なるほど。
もう、この話は何度もしたと思うのですが、
会社を売買したり、
株価を上下させたりして短期的にバンと儲ける、
そっちのほうが賢い、
スマートだという国なんです、やっぱり。
そこは、そうそう変わるもんじゃない‥‥と。
で、その考えかたを基礎づけているのが
理論経済学派のグループ。

いわゆるIT産業が成熟しきったあとに、
彼らが、次なる基幹産業を
「金融」だと決めつけてしまったところに、
今回の間違いのもとがあったんです。
ずっとおっしゃってましたね。
でもまぁ、彼らの考えかたに従っておけば
異様にお金が儲かってたから
わたしの話には、説得力がなかったんです。

でも、今なら、瞬間的かもしれないけど、
かなりの説得力をもって、聞いてもらえる。

ミドルクラスの人やベンチャー起業家だけでなく、
大会社の社長のなかにも、
賛同してくれる人が、増えてきたんです。
へぇー、じゃあ、じょじょに‥‥。
まあ、簡単にはいかないでしょうけどね。

‥‥だって、ウォールストリートで
企業を破綻させた経営陣たちは、
さらに儲けてたりするわけですから。
え、破綻したのに?
会社をつぶすことによって、また儲けてる。
そんなことができるんだ。
サブプライムの問題が大きくなる前の
2007年1月には、
一般平均給与と企業CEOとの給与差は
およそ「441倍」だったんです。
すごい差。
ええ、1980年代には
その差は、30倍ぐらいだったわけだからね。

でも、昨年秋の金融破綻以降は、
わたしの想像だと、
1000倍は突破してると思う‥‥たぶん。
さらに格差が広がってる?
そうです。

富裕層はさらに儲けていて、
貧困層は、さらに貧しくなってる。
‥‥なんかもう、あきれますね。
金融資本主義の信奉者が収奪したのは、
中産階級以下の人たちの財産。

サブプライムの債券を買ったり、
住宅ローンを組んだりして痛い目を見たのは
ものすごいお金持ちじゃないけど、
貧しくもなかった人たちが、大部分なんです。
はぁ‥‥なるほど。
ファンドを組んだりしてるグループは
これまで、そういう人たちから
お金をしぼりとる構造で、儲けを上げてきた。

だから、それをもう一回、やりたいんです。
はぁー‥‥。
そのための布陣が、
オバマ新政権のまわりにも、組まれてる。
そうなんですか。
うん、民主党を支援する利益団体のなかには、
大きなヘッジファンドの集団もありますから。
いままで、いろんな意見を聞きましたけど、
今の原さんの話は、いちばん妥協がないというか‥‥。
まぁ、わたしなりの見方です。
ショック・アブソーバーなしでしゃべりますよね。
いつもだけど(笑)。
だから、彼らを納得させるようなかたちで、
公益資本主義の理論を、構築したいんです。
つまり‥‥。
彼らの信奉する「理論」を用いて、
「公益資本主義のほうが儲かるよ」と証明すれば、
彼らも、納得してくれるでしょう。
敵の土俵で勝負するわけですね。
わざわざ。
そのために、公益資本主義の研究の本拠も
ハーバード大学に置いてるんです。
え、ハーバードにあるんですか?
そう。

アメリカで最も金権主義的な理論を構築した学校の、
ど真ん中に。
つづきます


2009-04-27-MON