おめでとうのいちねんせい 再販記念企画  のんびりした神様に。 日比野克彦+糸井重里
1980年代、10歳ちがいのふたりが出会いました。 それぞれ、 「新しいタイプの」「おもしろいやつ」 と呼ばれていました。 アーティストとコピーライター、 その肩書きで活動をつづけ、 ほぼ30年が経とうとしています。 これまでの道すじ、あの頃の空気といまの潮流、 そして、見えてきたそれぞれの役目。 ひさしぶりに会って、たっぷり話しました。
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おめでとうのいちねんせいとは?
いちねんせいのメール募集
第1回 すぐにできないことを やってる。
糸井 日比野くんと会うのは、えーっと、
ずいぶん久しぶりじゃない?
日比野 そのうち会うのかなぁ、なんて思いながら‥‥
なかなか会わないですね。
糸井 変装してるわけじゃないよね(笑)?
日比野 変装してるわけじゃないです(笑)。
糸井 最初に会ったとき、
日比野くんは、たしか学生だったよね。
日比野 ええ、最初のときはそうでした。
あ、この写真は
『おめでとうのいちねんせい』のときの?
糸井 出版祝いの食事会かな?

日比野 へぇえ!
糸井 覚え、ないでしょ。
日比野 覚え‥‥ない(笑)。

糸井 いま、日比野くんは、
『おめでとうのいちねんせい』のような
仕事は、やってる?
日比野 じつは今度、絵本を出すことになってます。
テキストはもうできあがってて、
あとは絵を描くばかりなんだけども、
秋ぐらいに打ち合わせしたときには
よゆうで「年内にできるなぁ」なんて
思ってたんですが、
なんだかんだなんだかんだで、
いまだに‥‥できないです。
糸井 締切って、
あると悲しいし、
ないとしないし。
日比野 そうなのね。
糸井 不思議なもんだよね。
だけど、日比野くんは
締切のない仕事もいっぱいしてるでしょ。
展覧会だってそうだし。
日比野 あー、そうだ、糸井さん、
水戸のときは
「HIBINO EXPO 2005
  日比野克彦の一人万博」展

観に来ていただいて
ありがとうございました。
糸井 あの展覧会は、ほんっとに、よかったです。
日比野 実はあれが、
「地域と一緒にやる」スタイルを
はじめたときだったんですよ。
その後は、岐阜や太宰府、
金沢21世紀美術館などで
あれがずーっと続いていて、
そういう意味ではまぁ、
あの系統の仕事には締切はないですね(笑)。
水戸でやり残したことを
次の美術館に持っていって、
次の美術館で思いついたことを
また次の美術館でやる。
もう、ずーーーーっと終わらない感じ。

糸井 生きものなんだね。
日比野 そう、生きものですね。
最近では、展覧会の最終日に
次の展覧会につなげるような
お祭りをやるんです。
糸井 わざと?
日比野 ええ、わざと。
『楽日初日』というタイトルにして
搬出もイベントにしちゃうぐらいです。
糸井 はぁあ、なるほど。
水戸の展覧会も、たのしそうだったもんなぁ。
だけど、2005年? そんなに前だったっけ?
日比野 そうです。
糸井 いまごろこんなことを
言ったってしょうがないけど、
とにかくびっくりしたよ、あれは。
日比野 砂場があったり、箱が積んであったりとか
そういうことが?
糸井 うん‥‥いや、
なによりやっぱりうれしかったのは
日比野くんがあそこで、
すぐできないことばっかり
やってたってことだな。
日比野 はははは。
糸井 うん、ほんとだよ。
いまの仕事って、なんにせよ、
すぐに完成品ができるようになってる。
特に、コンピュータが入ってからの仕事は、
「じゃ、明日ね!」って言ったら、
100年かかるようなことでも、
ちゃんと「明日」にできてしまいます。
日比野 うん、うん。
糸井 だけど、日比野克彦という人が
あそこで見せようとしていた仕事は
「いつ頃から準備してたんだろう」とか、
「この部分は、かなり昔のだなぁ」とか、
そういうものばっかりなんです。
見てるそばからニッコニコしてきちゃう。
展示してある作品の、時間の大きさが、
ふつうのものとまったくちがうんですよ。
「あ! オレはこういうことを
 ちょぉっと見逃がしてたなぁ!」
なんて、反省したもん。

日比野 ははははは。
糸井 メディアを通してではなく、
生の作品を観るチャンスというのは、
ふだんそんなにあるもんじゃないから、
オレは、つくづく思いました。
人って、見えないところで、
こんなことを
一生懸命やってるんだなぁ、と。
それが、なんだかねぇ、
とてもうれしかった。
自然物を見るように
日比野くんの作品が、うれしかったんです。
日比野 ありがとうございます。
うれしいなぁ。

(つづきます)

2009-02-05-THU









「いちねんせい」のメール募集。コーナーに
いただきましたおたよりをご紹介いたします。

メガネの思い出

長男が初めてメガネをかけたのは、
やっと小学校に慣れ始めた6月でした。
1年生でいちばん最初にメガネをかけることに
抵抗を感じている様子で、
心配な私は先生にお手紙を書いて
メガネと一緒にもたせました。

その日元気に帰ってきた息子は、
なんとメガネをかけてルンルン。
みんな、かっこいい!!
って誉めてくれたらしいのです。
すっかりその気になって、
それ以来、元気すぎて壊すことはあっても、
メガネを嫌がることはなく、いまや中3。

はじめて息子がメガネをかけていったあの日、
担任の先生が、息子に用事を頼み、
教室を離れたところで、
クラスのみんなに上手にお話ししてくださったと
あとになって聞き、ハッとしました。

メガネをかけたらからかわれると
覚悟を決めていた母親より
若い男の先生のほうが
息子や、クラスの子供に対して
なんと細やかな愛情をもっているのかと‥‥
忘れられない思い出です。

(大ちゃんのママ)さんより






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