第1回 | すぐにできないことをやってる。 | |
第2回 | 日比野、潰されるぞ。 | |
第3回 | ニューヨークの空の下で。 | |
第4回 | 若い芽は摘みたくなる。 | |
第5回 | アトリエと打ち合わせじゃ、オレが主役だ。 | |
第6回 | 広告を絵の具に、展覧会を絵の具に。 | |
第7回 | アートのできること。 | |
第8回 | のんびりした神様に。 | |
第9回 | どこにでも美術はある。 |
糸井 | 日比野くんと会うのは、えーっと、 ずいぶん久しぶりじゃない? |
日比野 | そのうち会うのかなぁ、なんて思いながら‥‥ なかなか会わないですね。 |
糸井 | 変装してるわけじゃないよね(笑)? |
日比野 | 変装してるわけじゃないです(笑)。 |
糸井 | 最初に会ったとき、 日比野くんは、たしか学生だったよね。 |
日比野 | ええ、最初のときはそうでした。 あ、この写真は 『おめでとうのいちねんせい』のときの? |
糸井 | 出版祝いの食事会かな? |
日比野 | へぇえ! |
糸井 | 覚え、ないでしょ。 |
日比野 | 覚え‥‥ない(笑)。 |
糸井 | いま、日比野くんは、 『おめでとうのいちねんせい』のような 仕事は、やってる? |
日比野 | じつは今度、絵本を出すことになってます。 テキストはもうできあがってて、 あとは絵を描くばかりなんだけども、 秋ぐらいに打ち合わせしたときには よゆうで「年内にできるなぁ」なんて 思ってたんですが、 なんだかんだなんだかんだで、 いまだに‥‥できないです。 |
糸井 | 締切って、 あると悲しいし、 ないとしないし。 |
日比野 | そうなのね。 |
糸井 | 不思議なもんだよね。 だけど、日比野くんは 締切のない仕事もいっぱいしてるでしょ。 展覧会だってそうだし。 |
日比野 | あー、そうだ、糸井さん、 水戸のときは (「HIBINO EXPO 2005 日比野克彦の一人万博」展) 観に来ていただいて ありがとうございました。 |
糸井 | あの展覧会は、ほんっとに、よかったです。 |
日比野 | 実はあれが、 「地域と一緒にやる」スタイルを はじめたときだったんですよ。 その後は、岐阜や太宰府、 金沢21世紀美術館などで あれがずーっと続いていて、 そういう意味ではまぁ、 あの系統の仕事には締切はないですね(笑)。 水戸でやり残したことを 次の美術館に持っていって、 次の美術館で思いついたことを また次の美術館でやる。 もう、ずーーーーっと終わらない感じ。 |
糸井 | 生きものなんだね。 |
日比野 | そう、生きものですね。 最近では、展覧会の最終日に 次の展覧会につなげるような お祭りをやるんです。 |
糸井 | わざと? |
日比野 | ええ、わざと。 『楽日初日』というタイトルにして 搬出もイベントにしちゃうぐらいです。 |
糸井 | はぁあ、なるほど。 水戸の展覧会も、たのしそうだったもんなぁ。 だけど、2005年? そんなに前だったっけ? |
日比野 | そうです。 |
糸井 | いまごろこんなことを 言ったってしょうがないけど、 とにかくびっくりしたよ、あれは。 |
日比野 | 砂場があったり、箱が積んであったりとか そういうことが? |
糸井 | うん‥‥いや、 なによりやっぱりうれしかったのは 日比野くんがあそこで、 すぐできないことばっかり やってたってことだな。 |
日比野 | はははは。 |
糸井 | うん、ほんとだよ。 いまの仕事って、なんにせよ、 すぐに完成品ができるようになってる。 特に、コンピュータが入ってからの仕事は、 「じゃ、明日ね!」って言ったら、 100年かかるようなことでも、 ちゃんと「明日」にできてしまいます。 |
日比野 | うん、うん。 |
糸井 | だけど、日比野克彦という人が あそこで見せようとしていた仕事は 「いつ頃から準備してたんだろう」とか、 「この部分は、かなり昔のだなぁ」とか、 そういうものばっかりなんです。 見てるそばからニッコニコしてきちゃう。 展示してある作品の、時間の大きさが、 ふつうのものとまったくちがうんですよ。 「あ! オレはこういうことを ちょぉっと見逃がしてたなぁ!」 なんて、反省したもん。 |
日比野 | ははははは。 |
糸井 | メディアを通してではなく、 生の作品を観るチャンスというのは、 ふだんそんなにあるもんじゃないから、 オレは、つくづく思いました。 人って、見えないところで、 こんなことを 一生懸命やってるんだなぁ、と。 それが、なんだかねぇ、 とてもうれしかった。 自然物を見るように 日比野くんの作品が、うれしかったんです。 |
日比野 | ありがとうございます。 うれしいなぁ。 (つづきます) |
2009-02-05-THU
「いちねんせい」のメール募集。コーナーに いただきましたおたよりをご紹介いたします。 |
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