考え方も価値観も人それぞれ。
だから時々、傷つくこともあります。
熊本のために何かしたいと奮起した真純ちゃんも、
思わぬ壁に何度もぶつかったそうです。
- むらかみ
- 今まで大きな災害があって、可哀想だなとか、怖いな、
って思っても、結局遠い町での話だったんだよね。
熊本で地震があって、ちょっとびっくりするくらい、
ぐわっと、周りが動いているのを感じたんだよね。
当事者になるってこんな気持ちなのかと。 - 富永
- やっぱりふるさとが被害を受けるって全然違うよね。
- むらかみ
- どんな思いを持つか、それをどうアウトプットするかは
人によって本当に違うなと思った。
現地ボランティアとか、東京で募金活動をするとか、
色々な動きをみたけど、
真純ちゃんのくまモンのマドレーヌを作って売るって、
本当に素敵な発想だなって思った。
準備はスムーズに進んだの? - 富永
- 実はそうでもなくて。結構断られたよ。
- むらかみ
- そうなんだ。
被災地のために、って前向きな反応を見るから、
割とウェルカムな感じなのかと思っちゃってた。
私だったら断られたら弱気になっちゃう。

- 富永
- そうだね、落ち込むこともあるね。
原価を引いて募金することにしているんだけど、
売上を全部募金したほうがいいんじゃない、とか
マドレーヌを売るという間接的なやり方じゃなくて
そのお金をそのまま募金した方がいい、
とか、自分の考えたこととは違う意見もあって。 - むらかみ
- うーん。
- 富永
- 言いたいことはわかるんだよね。
私も指摘されたことは自分でも悩んだところだから。 - むらかみ
- でも無理をしても、持続性がないんじゃないかな。
- 富永
- 私もできるなら、
募金してくれた人にはタダでマドレーヌあげたかったし、
もっと言えば昔働いていたお店のオーナーみたいに、
現地に行ってお菓子を作って食べてもらいたいなって
思ってた。でも今の私ではできなくて。
じゃあ自分がなにをできるかを考えた結果だから。
募金する以外に自分にもできることをやりたいと思って
はじめたことだから、って自分を納得させることにした。 - むらかみ
- 自分がやることを、自分が無駄だとは思いたくないよね。
- 富永
- 東北の震災の時に何もできなくて、
これが自分の出来ることだって思ったから。

1つ500円で販売。追加で募金をしてくれる人も多い
- 富永
- 水を送ったり物資を送ったり。募金をして。
それプラスやりたいことがあったからやりたい。
東北の震災の時に何もできなくて、
これが自分の出来ることだって思ったから。
だけど同時に自分が熊本を支援したいってやり始めたのに
そこでお金とか、時間とかを考えるのは、
小さいのかな、自分勝手なのかなと思ったり。 - むらかみ
- 実際お金は掛かっているわけだしね。時間も。
いくらって決めないで、募金してくれた人にあげるなら、
じゃあ10円の人も千円の人も同じ?って思っちゃう。
思いは金額じゃないけど、たくさん支援してくれた人には
たくさんお返ししたい、と思うのが人情な気がする。 - 富永
- 私自身、経費を引くことに悩んだから、
言いたくなる気持ちもわかるの。
でも色々考え出すと、もうやめたくなるでしょ? - むらかみ
- なにもしないほうが傷つかなくていいんじゃないって
思うよね。 - 富永
- そう。だから、お店を置くことを断った人には、
そういう気持ちで、何もしないほうがいいんじゃないの、
って言う人がいたんだと思う。
迷ったり傷つくことになるよって。 - むらかみ
- ボランティアのやり方はそれぞれだから、
考え方が違うなあと思うこともあるけど
それぞれに思いがあるんだね。
今回、真純ちゃんとか、色々な人に話を聞いて、
お金以外のものを介して支援することで、思いとかお金が
何倍も価値を持つようになるんじゃないかと思った。

- 富永
- そうなるといいなって思うよ。
自分がやりたくてはじめたことだけど、
本当に落ち込むこともたくさんあって。私は自分のしていることは全然足りないって思っていて、
出来る限りのことをやっているけど、
私の気持ちが重い、怖いって言われたこともあって。
悲しくて凄くショックだった。 - むらかみ
- 真剣すぎてついていけないみたいな?
- 富永
- そういうことなのかな。
マドレーヌを置いてくれたお店の人や、募金してくれた
人との写真をSNSにアップしていたんだけど、
やりすぎじゃない?みたいな。
それは、人様のお金と思いを預かってるから、
ちゃんとやってますよ、って
責任のつもりで更新していたんだけど、
それを重い人、みたいに感じられたみたいで。
そういう見方をされちゃうんだって思うと、
とても怖くなった。 - むらかみ
- 価値観とか、感受性の違いなのかな。
動くと、どうしても摩擦が起きちゃうよね。
それがすごくしんどい時もあるし。
やらない方がよかったという気持ちになるかも。
でも私は真純ちゃんがやっていることを見て、
素敵だなって思ったよ。
私もこうして話を聞いといてなんだけど、
こういうことって意味があるのかな?とも思ってる。
私はボランティアとかをやったわけじゃないけど、
自分の発言や行動を変に解釈されたこともあったし。 - 富永
- 受け取り方とか、考え方は人それぞれだよね。
- むらかみ
- でも、これからも続けるんだよね?
マドレーヌでの支援は。 - 富永
- うん。続けることが意味があるのかなって。
募金という形ではあるけど、初めて私の作ったお菓子を
買ってくれる人がいて嬉しかったんだよね。
お店の商品として売れるとか、カフェで出すのとは
全然感謝が違って。

- むらかみ
- そういう個人的な喜びもないと続かないよね。
- 富永
- お店にマドレーヌを置かせて欲しいって頼んだ時、
「そういうことやらない方がいいよ」
って言う人もいて。
やる前からそう言われると、自分も、
「やらない方がいいのかなあ?」
って挫けそうになったし、
この2か月色々あったけど続けたいなと思ってる。 - むらかみ
- やりたい気持ちがあるなら、
小さなことでも、自己満足でもやっちゃうのが
前向きなのかな、と思うな。
それについての評価は覚悟して。私も今回こういう記事を書こうとしていて、
何度も、これって意味があるのかなあ、って考えた。
報道を見ていても、本当に価値が有るものは
一握りだなとも実感したし。
でもやりたいし、やるべきだなと思ったからやろうと。
あとは誠実にやることだけなのかなって。
身も蓋もない言い方になるけど、
結局やりたいようにやるのがいいのかもね。
誰かへの言い訳とか、建前とか全部なくして。 - 富永
- そうだよね。私にできることは限られているから、その中でも自分ができることをやることかな。
- むらかみ
- 東北の震災の時、できなかったことができたというのは、
真純ちゃんにとって、とてもよかったよね。
私はこれまで何もできなかったし、
何かをすべきだと言われるとつらかったから、
お話を聞けてとてもすっきりしました。
本当にありがとう。
(おしまい)