場所は家の喫茶店のカウンター。お客さんの居ない空間で、話がはじまりました。
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- 今ってこの店はどういう状況なんでしょう?餅を食べる文化もなくなってきているように思うけれど……。
- 3代目
- 娘がひとりでやっていくのには十分。あとは人を雇ってとか、もっと店を大きくするとか、そういうことはやらない。ただただ自分だけのことでいっぱいいっぱい。それだけのこと。
- 4代目
- そんなに儲かっていないけど、お餅の注文は毎月定期的にまだ入ってくるし、喫茶店も生活する分のお金はなんとか入ってきている。でも、これから先、ばあちゃん(3代目)が倒れるとかしたら厳しいかもねぇ。
- ―
- そもそもおばあちゃんはなんで継いだの?
- 3代目
- 離婚したから。
- ―
- 止むに止まれない……!!!
- 4代目
- そして、なんで離婚したんですか?
- 3代目
-
離婚理由はねえ、大したことではないんだよね。
我慢しようと思えばできることだったんだけど浮気だなんだって、家に帰ってこない人で、そんな人に無理してついていく必要はない!と思ったの。
我慢して、面白くない、って言ってるより家で悠々自適にやっていく方がいいって。
それでびた一文貰わないで淳子(4代目)を育てたの。
この店があったから自分で稼いでいくことができた。
- ―
- じゃあ逆に、離婚していなかったらこの店はなくなっていたってこと?
- 3代目
- なかった。だから私は流れの中でたまたまそうなったという感じ。
- ―
- なるほど……。
- 3代目
-
もともと2代目はモナカの皮を焼いてお菓子屋さんに卸してたの。
それを手伝ってたんだけど、私にはお金入ってこないのよね。家にいて、食べさせてもらってるだけで、
結局自分が稼いだお金で娘を食べさせていけないから一般企業に勤めたの。10年間くらい。
- ―
- 初耳!!!!ずっとこの店をやってたんだと思ってた。
- 3代目
-
38歳くらいから47歳くらいまで。
そしたらそこにいたら、すごい嫌な所長がやってきて
いざこざがあって喧嘩するようになって辞めたの。
それからまた家に入って、そっちをやろうと思ったんだけど、
ちょうどおじいちゃん(2代目)がすっかり弱ってしまっていて、
私がメインで餅つきしてたんだけど、すごい忙しかった。
餅をつくるのが周りにウチしかなかったのよ。
- ―
- そのとき淳子さん(4代目)は手伝ってたの?
- 4代目
- 手伝ってたよ。もうずっと、保育士になって働き始めてからも手伝ってた。無給で。
- ―
- あぁ……(その悪しき伝統が僕にまで引き継がれていたのか……)。
- 4代目
-
「当たり前でしょ、手伝うのが」みたいに怒られてさ。
私だってやることあるし……って思いながら(笑)
- 3代目
-
で、その他に2代目が入院したりで大変だったのよ。
そんな中でも、来る注文を全部受け付けてたら何もかにも忙しかったのよ、お餅つき。
- 4代目
- すごかったよねぇ。
- 3代目
- ところが今はもう産直センターがどっこも餅を始めて全然注文がこなくなった。
- 4代目
- 農協関連だから大きい仕事が全部そっちに持ってかれちゃうんだよね。
- 3代目
- そう、今はそんな感じ。それでお餅だけじゃダメだって、4代目が喫茶店をはじめることにしたの。
(つづきます)