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- 流れといえば、おばあちゃんの(元)旦那さんがこの店をやるとかそういう話はなかったの?
- 3代目
- ないことはなかったんだけど、そうしたら「もっと事業を大きくする」って言ったの。海外とか、いろんな販路を作ってね。でもそれで2代目のおじいちゃんは「こんな奴に家に入られたらどうなるかわからん」って、家に入れないように私を嫁に出したの。
- ―
- 2代目は店がどうなってれば幸せだったんだろうね?
- 3代目
- 細々とやっていけばそれでいいや、だったの。
- ―
- 身内だけで、細々と、ね。
- 3代目
- そうそう。
- ―
- おばあちゃんとしては僕にどうして欲しい?家のこと。
- 3代目
- いいの、言って。
- ―
- いいよ。
- 3代目
- いいよ、言うと淳子(4代目)に怒られる。あなたのいいようにして。
- ―
- またそんなことを言って……。本心でいいよ。
- 3代目
- ダメだ。また、孫まで束縛することになったらよくない。娘だけでもう終わり。どうしてほしいとかないよ。
- ―
- そんなお行儀いいようにいって……。
- 3代目
- 結婚だけ早くして。ひ孫がみたい。あとはない。あなたがどうするかはその相手の人にも寄るんじゃない。
- ―
- ここをもし終わらせてしまったときに困る人っているの?
- 3代目
- いないんじゃない?ずっと卸してるところとか注文をもらっているところはあるけれど、今はこの周りにも餅を扱っているところもできたから、そっちで代わりになるでしょう。
- ―
- うーん。
- 3代目
- うちももともと餅だけじゃなくて華菓子とか桜種とかも出してたけど、それは需要がなくなって終わってしまったからね。これからの餅だって同じかもしれない。
- 4代目
- それであなたはどうしたいの?
- ―
- どうしようかなー……。
- 4代目
- まだ見えないよね。
- 3代目
- 生活していくうちにだんだんと見えてくるんだ。
- 4代目
- 流されるがままにやるといいかもね。今そうやって与えられた仕事があるんだから、それを大事にするのが一番じゃない?で、うちの方は必要性があればお声がかかるから(笑)
- ―
- んー、でもそうやって必要性が出てきてからで間に合うのかなって。
- 4代目
- 間に合う間に合う。大丈夫だ。
- 3代目
- その時の時代時代で、生き方変えてけばいいんだ。これを絶対こういうふうにしなければいけない、なんてことはないんだから。
- ―
- それはそうなんだけどね。
- 3代目
- お餅なくしてもいいんだし。
- ―
- お餅なくしたらなにを看板にすればいいんだろうね。
- 3代目
- 喫茶だけの看板でさ。甘味処になるかもしれない。
- 4代目
- それはもしあなたがやるんだったらあなたが考えればいいよ。それも楽しいんじゃない。あなたは私と違っていろんなところ見てるんだから。海外とかにも住んでたし。京都だって名古屋にだって住んでたんだから。これから先どんなものが流行るのかわかるでしょう。
(つづきます)