もくじ
第1回5代目になるかもしれない人の葛藤 2017-12-05-Tue
第2回彼女(たち)が家を継いだ理由 2017-12-05-Tue
第3回家族のために 2017-12-05-Tue
第4回時代に合わせて生きていく 2017-12-05-Tue
第5回私はどうしたいのか 2017-12-05-Tue
第6回独白 2017-12-05-Tue

東京で働いてはいるものの、岩手の紫波町というところで120年以上続く餅屋を継ぐかどうするかの瀬戸際にいます。先のことはわからないから、まずは頑張って生きます。

家族を守るための仕事

家族を守るための仕事

担当・髙橋元紀

第3回 家族のために

4代目
喫茶店を始めたというのは商売的にはそうだね。
で、私はいっとう最初になんで喫茶店にしたかというと日曜に休みにできるから、家族の用事を優先的にできるかなって思ったの。ほら、お餅の注文とかだと急に入ったりするから、用事が駄目になっちゃうことがあって、そういうのが嫌だったの。喫茶だと休みの日が決まっているから。みんなの休みに合わせて家族一義でやっていけると思って。
そもそも最初から継ぐ気だったの?
4代目
継ぐ気も何も考えてなかった。とりあえずあなたを育てて、家庭を守って、それが一番の夢だったから。
それはありがたいけれど、じゃあどういう風に考えていたの?学生時代とか。
4代目
全然考えてない。保育士になろうと思ってたし。で、ただここを手伝わなければ誰も手伝う人がいないからやらなきゃなとは思っていたし、理不尽だと思ったのは他で働いていても何していても手伝うのが当たり前になっていたことかな。
3代目
商人の子は家のことを手伝うのが当たり前だったの。昔はね。
はあ、まあ、今もそんな感じではありますが……。
3代目
手伝うのはあたりまえで、お金はどうのこうのじゃなかったのよ。
でもそれは将来的に家の商売をするというリターンがあったからだよね。今だと事業を継ぐことのリスクが大きくなってしまって……。
4代目
それも、考えないで手伝ってたな。なんでお金ももらえないのにこんな苦労しなきゃいけないんだろって思っていたんだけど、それでもやっていかなければいけないから、割り切るしかなかった。
3代目
代々そうやってきてるから、そんなところ気が付きもしないんだよ。
おばあちゃんもそうだったの?
3代目
私なんか小学校のころからやってたわよ。手に豆できて痛かった〜。
4代目
そんなこと言ったら私だって小学校の時にみんな遊んでる中、家の人達が忙しすぎて手伝ったり、家族分の料理つくって出したりしてたよ。それをみんなが美味しいって言ってくれるから、ご飯つくらなきゃってなった。もしかしたら今こうやって喫茶店で料理を出してる原点はそこかもしれないな。
3代目
そういう感じでとにかく忙しい家だったの。家で働くのが当たり前でね。

4代目
だから自然の流れで今こうなってるの。こうしよう、ああしよう、というのはなくて、気がついたらこの形になっていたっていうか。私にやりたいことがあったらきっとこの家から出て行ってたし、3代目と同じように私も離婚しちゃったけど、夫の考えに同意できていたら、やっぱりここを継がないでついて行っていたと思うし。でも、そうはならなかった。あとはここでやってかないと食べていけなかったからここにいるの(笑)
そうだったんだね。
4代目
そう。あなただって、こうしようああしようって決めなくてもいいんだよ。絶対に継がなきゃないってことは本当にないし、自分がどう考えるかだよね。
3代目
それはますます大変だね(笑)
そうだね……。
4代目
なんかさ、流れみたいなのはあるんだよね。

(つづきます)

第4回 時代に合わせて生きていく