- 4代目
-
喫茶店を始めたというのは商売的にはそうだね。
で、私はいっとう最初になんで喫茶店にしたかというと日曜に休みにできるから、家族の用事を優先的にできるかなって思ったの。ほら、お餅の注文とかだと急に入ったりするから、用事が駄目になっちゃうことがあって、そういうのが嫌だったの。喫茶だと休みの日が決まっているから。みんなの休みに合わせて家族一義でやっていけると思って。
- ―
- そもそも最初から継ぐ気だったの?
- 4代目
- 継ぐ気も何も考えてなかった。とりあえずあなたを育てて、家庭を守って、それが一番の夢だったから。
- ―
- それはありがたいけれど、じゃあどういう風に考えていたの?学生時代とか。
- 4代目
- 全然考えてない。保育士になろうと思ってたし。で、ただここを手伝わなければ誰も手伝う人がいないからやらなきゃなとは思っていたし、理不尽だと思ったのは他で働いていても何していても手伝うのが当たり前になっていたことかな。
- 3代目
- 商人の子は家のことを手伝うのが当たり前だったの。昔はね。
- ―
- はあ、まあ、今もそんな感じではありますが……。
- 3代目
- 手伝うのはあたりまえで、お金はどうのこうのじゃなかったのよ。
- ―
- でもそれは将来的に家の商売をするというリターンがあったからだよね。今だと事業を継ぐことのリスクが大きくなってしまって……。
- 4代目
- それも、考えないで手伝ってたな。なんでお金ももらえないのにこんな苦労しなきゃいけないんだろって思っていたんだけど、それでもやっていかなければいけないから、割り切るしかなかった。
- 3代目
- 代々そうやってきてるから、そんなところ気が付きもしないんだよ。
- ―
- おばあちゃんもそうだったの?
- 3代目
- 私なんか小学校のころからやってたわよ。手に豆できて痛かった〜。
- 4代目
- そんなこと言ったら私だって小学校の時にみんな遊んでる中、家の人達が忙しすぎて手伝ったり、家族分の料理つくって出したりしてたよ。それをみんなが美味しいって言ってくれるから、ご飯つくらなきゃってなった。もしかしたら今こうやって喫茶店で料理を出してる原点はそこかもしれないな。
- 3代目
- そういう感じでとにかく忙しい家だったの。家で働くのが当たり前でね。
- 4代目
- だから自然の流れで今こうなってるの。こうしよう、ああしよう、というのはなくて、気がついたらこの形になっていたっていうか。私にやりたいことがあったらきっとこの家から出て行ってたし、3代目と同じように私も離婚しちゃったけど、夫の考えに同意できていたら、やっぱりここを継がないでついて行っていたと思うし。でも、そうはならなかった。あとはここでやってかないと食べていけなかったからここにいるの(笑)
- ―
- そうだったんだね。
- 4代目
- そう。あなただって、こうしようああしようって決めなくてもいいんだよ。絶対に継がなきゃないってことは本当にないし、自分がどう考えるかだよね。
- 3代目
- それはますます大変だね(笑)
- ―
- そうだね……。
- 4代目
- なんかさ、流れみたいなのはあるんだよね。
(つづきます)