マダムがおっしゃった。
「それは、あの横尾さん、だからよね‥‥」
あの横尾さん、とは、あの横尾忠則さんのことである。
それ、とは
横尾さんがTwitterでつぶやかれた言葉のことである。
マダムの言うとおり、あの横尾さんだからこその言葉である。
でもわたしは、このつぶやきがタイムラインに流れてきた時
自分の装い方はこれかと
まるで、お医者さんが不調の原因を突き止めるかのように
横尾さんが、わたしに言葉をくださったと感じたのだ。
わたしには数年来、いや、始まりは20年以上前になる、
ひとつの解決したい課題がある。
学生時代に古着屋で出会った、
ショッキングピンクのレースでできた
古い映画の衣装のような形の小ぶりなワンピースを
どうにかすることである。
ぐずぐずぐずと仕舞ったままにしていたが、
解体して、よし、スカートにしようと決めた。これが2年ほど前。
上半身のレースを継ぎたそうか、どうしようかと
またぐずぐずしていた。
ようやく最近、決めたのである。
季節に1回くらい参加している、
アトリエシムラのワークショップで織った裂を組み合わせて
あのレースでフレアスカートを作るのだ。
「今日織った裂はスカートにする」と皆に宣言したけれど
色や柄を計算して織ることができるほど習熟はしていない。
いつも通り、
ひらめいたまま、糸の、色の声を感じながら織った。
これでたぶん、わたしに似合ういいスカートができるはずだ。
先人の方々の言葉を借りていうと
色が、模様が、
同根の意識で収まるべきところに収まるはずだからである。
織った裂は、まだ機にかかっているはずだ。
あたたかくなる頃には届くだろう。