高阪 |
お忙しいところ、お時間いただいて
ありがとうございます。
すみません、不躾な質問させていただきます。
自分は日本舞踊のことは、
知識がありませんので、
失礼があったらお許しください。 |
花柳 |
大丈夫です、どうぞ、どうぞ! |
高阪 |
日舞というのは、
男の踊りと女形の踊りがありますよね。
男の踊りが開く動きなのに対して、
女形になると
閉じる動きをされますよね。 |
花柳 |
はい。 |
高阪 |
それには、特別な練習方法が、
おありなんでしょうか。 |
花柳 |
そもそも、日本舞踊には、
基礎練習のいろはみたいなのは、
あまり、ないんです。
ヒップホップ‥‥にあるかどうかは分からないけど、
たとえばバレエだと基礎の練習がありますよね。
アン・ドゥ・トロワ、というような。
ああいうものが、ないんです。
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高阪 |
あ、そうですか! |
花柳 |
男踊り、女踊りっていうので
一から演目を練習することによって
基礎も一緒に体に覚え込ませていくという、
お稽古方法なんです。 |
高阪 |
最初、いきなり踊りから入るんですね。 |
花柳 |
はい、そういうところが多いですね。
ただまあそれじゃあいけないっていうので
最近は基礎練習をするようになってきました。
先生ごとに、体系づけているんですが、
僕のところでは、歩く練習から入ります。
生徒さんに、役者さんが多いものですから。 |
高阪 |
はい。 |
花柳 |
でも、基本的には、
踊って、それをまねて、
それを芸として身につけていくっていう
練習の仕方ですね。 |
高阪 |
その、歩く練習を、
教えていただいていいですか。 |
花柳 |
ええ、もちろんです。
では、初めの歩き方なんですけども、
まずは男も女もなく歩いていきますね。
西洋舞踊と違って、
基本的に日本舞踊は重心は下、腰の辺りで、
立ったときには踵に重心がある。
これが真っすぐな状態です。
「姿勢を正す」というと、
皆さん、そってしまうんですが、
そうすると重心が上がってしまいますので、
姿勢をよくしすぎないように
ちょっと腰が曲がるぐらいの状況の方が
横から見ても真っすぐですし、
重心が下がるわけです。
坂東三津五郎さん、前名を八十助さんと
おっしゃいましたけれど、
その方が「腰を入れるっていうのはどういうことか」
というのを、製氷皿の水を冷蔵庫に持って行くとき、
そろそろっと歩きますよね。
それを「腰を入れる」というんだと。
ですので、膝を曲げて、
そのときにお尻を出さないようにすると
お腹が出ますんで、そのお腹も引っ込めます。

この状況が膝を曲げる、腰を入れるということです。
この状況で歩いていきます。
で、すり足。足を踵をつけたまま床をすります。

床をするのと、
右足だったら左足の側面をするっていう、
二つの「すり」方があります。
なんでするようにするかっていうと、
軸がずれないで真っすぐ歩けるように。
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高阪 |
視線はこういう感じで大丈夫でしょうか。 |
花柳 |
はい、大丈夫。
爪先なんですけども、何も力を入れないと、
爪先上げたときに
足の裏が前から見えてしまいますよね。
舞台を見ているお客さまから。
そうすると、きれいではないので、
爪先に少し力を入れてちょっと折るように、
そうすると前から見ても、
足の裏が完全に見えなくていいんです。 |
高阪 |
これが基本の歩き方ですか?
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花柳 |
ええ。 |