久保 | ニョロニョロって 水平線を求めて常に旅をしてるんですよね。 でも自分が進めば水平線は必ず先にゆく。 |
||||||||
重松 | 哲学的だよね。 |
||||||||
武井 | うわー。 |
||||||||
▲第5話「ニョロニョロの秘密」 |
久保 | だからムーミンは ニョロニョロって変なやつだと言うんだけれど、 「逆に、彼らからしてみたら 僕らの方が変わった生き物かもしれないんだよ」 ってスナフキンが言うシーンがあるんです。 そこは崖、下が海、 水平線の方にニョロニョロが船で移動している。 それを見ながらムーミンに その話をしてあげるんです。 それがまたとっても、いいシーンなんです。 |
|||||||
横里 | いいですねー。 |
||||||||
重松 | うん。 あのさ、夏至や冬至って、日本ではあんまり、 大事にしてないじゃない。 けどフィンランドではその意味合いが おっきいんだろうね。 |
||||||||
武井 | きっと、そうですね。 夏至が終わっちゃうと、もう、 日に日に日が短くなるわけで、 そして冬至が終わると日に日に長くなるわけで。 その喜びたるや、悲しみたるや。 |
|
|||||||
重松 | だから太陽との関係って すごくおっきいんだろうね。 ムーミンの世界観においてはさ。 |
||||||||
武井 | 夏は夏で、ふしーぎな、 ぼんやりした夜の明かりの世界があって、 そんな光で湖とか木を見ると ほんとに美しいですよね。 |
||||||||
久保 | 波が立ってないから、鏡のような水面で、 雲がほんとにきれいに映ったりするんですよね。 |
||||||||
|
武井 | でも湖は蚊が多くて。 |
|||||||
重松 | そうだ、蚊が多いね! 蚊はすごいよ、ほんとに。 |
|
|||||||
武井 | ジーンズなんか刺しちゃうから、 もう1枚上から着ないと。 |
||||||||
横里 | 何で蚊が多いんだろう? |
||||||||
武井 | 基本的に国土の多くが湖と川と平地で、 夏が短いから‥‥。 |
||||||||
重松 | 短い時間に、ばーっと 子孫を作んなきゃいけないから。 |
||||||||
武井 | 生命力が半端じゃないんですね。 |
|
|||||||
重松 | 一気にくる。植物もそうだけども。 |
||||||||
横里 | ああ、じゃ、そういうのが、 ニョロニョロの集団のもとかも? |
||||||||
重松 | そうそう、一気にぶわーっていう感じ? |
||||||||
武井 | そうかもしれないですね! |
||||||||
重松 | それと、あんまり山がないんだよね。 フィンランドって。 |
||||||||
武井 | そういえば、ないですね。 |
||||||||
重松 | だからほんとに雲が低いところから沸いてくる。 すごいよね、あの空の雰囲気は。 |
||||||||
横里 | 山がないんだ。 でも何で山がないのに「おさびし山」が? |
||||||||
武井 | ほんとだ。ここは、 森下さーん、お願いします。 おさびし山は山だけど、 あんなふうな山ってあるんですか。 |
|
|||||||
重松 | たださ、ほんとによく、 これだけのキャラクターを作ったよね。 |
||||||||
横里 | ほんとですよね。 |
||||||||
武井 | すごいですよね。 それぞれがちゃんと成立してる。 |
||||||||
重松 | そう。ちゃーんとさ、ひとりひとりの、 ネガティブなものもあるんだよね。 それがすごいんだよな。 人数合わせじゃない。 |
||||||||
武井 | タンペレという町に ムーミン谷博物館ていうのがあるんです。 トーベ・ヤンソンが全てを寄贈して、 市の図書館に併設してつくったのかな、 そこに原画がたくさん展示してあるんですが、 パートナーのトゥーリッキさんとつくった ムーミンのジオラマがいっぱいあるんですよ。 で、それはどうやらぼくらの知らない、 小説やマンガのムーミンの世界には 出てこないお話らしきものがいっぱいあって。 |
||||||||
横里 | へえー! |
||||||||
武井 | もしかしてもっともっと彼女の中には‥‥ |
||||||||
重松 | まだ、物語が、あったんだ。 あったんだね。 |
||||||||
|
武井 | そう思うとね、なんだか切なくなります。 見ていると、どうも決まり事がなくて、 ムーミン屋敷のようすも ちょっと違ったりとかする。 たぶんどれが正解ということではなくて、 これが完成版ですよというものもなくて、 きっとムーミンの世界は トーベ・ヤンソンのなかで 永遠につづいているのかなあなんて。 |
|
||||||
重松 | うん、うん、うんうん。 |
||||||||
久保 | 実はこれは森下さんに伺ったのですが、 トーベさんが、ご存命でいらっしゃったとき、 ムーミンが人気になってグッズを作りましょう、 となったときに、 こんなふうにおっしゃったんだそうです。 「おもちゃとして作るっていうのも もちろんいいんだけれども、 完成させないでほしい。 何か子どもが手を加えて遊びになるようなもに してくださいね」と。 ね、森下さん! |
|
|||||||
横里 | へえー! |
||||||||
重松 | うーん! いいね。 |
2012-01-05-THU