MOOMIN LOVE
重松清×『ダ・ヴィンチ』横里隆+「ほぼ日」武井 おじさん3人、ムーミンを語る。

第10回 焚き火の跡を探して。

  久保 「ムーミンワールド」っていうテーマパークが
ナーンタリという南の方にあって、
夏の間だけ、3ヶ月だけ開いているんですけど、
物語に出てくる建物がいっぱいあって、
着ぐるみが寸劇を至る所でやってるんですけど、
いわゆる遊園地のアトラクションは
全くないんです。
なので自分の脳内で楽しまないといけない。
 
  重松 そりゃ大変なテーマパークだ。妄想しろと。
 
でもイギリスの
インディペンデント紙による
世界のベストテーマパークで
世界4位になるという。
  久保 妄想のきっかけになる物が
置いてあるだけっていう。
 
  重松 高度だね、すごくね。
 
  久保 そうなんですよ。
スナフキンの焚き火の跡とかがあるんですよ。
 
  さん
にん
(大声で)おーーーっ!!!
 
   
  横里 すごい声(笑)。
 
  武井 パチパチパチ(拍手)。
 
  横里 面白い。焚き火の跡って面白いですね。
 
  重松 それ、ほしいな。焚き火の跡はほしいね。
 
  横里 ほしいですね。
 
  武井 焚き火やりましたか、フィンランドで?
 
  重松 やってないんだよぉ、俺。
 
  武井 えー、焚き火やってないんですかー?
 
  横里 何、その自慢げな言い方(笑)!
 
焚き火はもう。
真冬でも湖の氷の上で
焚き火したりしますからね。
国立公園なんかにいくと、
かならず焚き火の場所があって
薪も置いてあるんですよ。
おまけに無料です。
トレッキングできる森の中にも
ところどころに焚き火できる場所が
しつらえてありますね。
落ちてる枝をひろってきて
それで焚き火して
ひとやすみしたり。
  武井 ぼくはあのとき焚き火に目覚めました。
薪割りと焚き火。
あんなに楽しいことはないです。
 
  重松 そうか、そうかー。
 
  武井 冬はつらいですけど。
火の前しか暖かくないから。
 
   
  重松 俺、あれがほしいな、
柵とさ、その杭。
これがあったら、
杭の上に座って、ギターが弾ける。
スナフキンができる(笑)。
俺のステージは杭1本だ。
 
  武井 かっこいいー(笑)。
 

えええ!(笑)
これ読んだフィンランドのおじさん、
「それはいい!」とかいって
自分で作りそう。
ムーミンワールドにも教えてあげたい。

 

  久保 それも、手を加えてできる遊びですよね。
 
  重松 そう、何かそういうのって、いいね。
杭が1本あるだけでスナフキンになれる(笑)。
 
  武井 『ムーミン谷の11月』的な話は
アニメに入ってるんですか?
 
  久保 あ、『11月』めいた話は
アニメになってないんです。
 
  武井 そうですか。
原作に、ムーミン一家が出てこない
巻があるんですよね。
 
  重松 島に行ってるときの
ムーミン谷の話だね。
 
  横里 それも焚き火の跡も一緒だね。
 
  武井 そうそう、その感じがする。
 
  横里 その、不在な感じの、切ない感じがいいよね。
 
       
  重松 そう。
 
  武井 あの喪失感は、
大人になってから好きになりました。
 
  横里 新しいムーミンの中だと
スナフキンはハーモニカなんですか?
 
  久保 あ、そうなんです、
ギターじゃなくてハーモニカなんです。
 
  重松 あー、そうだったね。
 
  武井 たぶんね、ギター、
放浪には向いてないんだと思います。
 
  重松 マーチンの「バックパッカー」
(小型ギター)とかあったらよかったね(笑)。
 
  重松 でもハーモニカだと、
弾き語りができないね。
いやあ、だから、やっぱりさ、
ムーミンももちろん魅力的なんだけど、
脇役がとにかくいいっていうことなんだよね。
 
  横里 そうですねー。
 
めそめそ Sorry-oo
その名のとおりめそめそ、
おどおどした臆病もの。
ぼろぼろのずきんに安全ピンでとめた
毛布をまとっているが、
勇ましいオオカミにあこがれている。
ムーミン屋敷の水浴び小屋に住んでいる。
(ムーミン公式サイトより)
  武井 めそめそくんも、いいですよね。
 
  久保 めそめそくんは、
自分が狼の仲間だと思ってるんですよね。
僕は仲間がいる山に帰るんだって
ひとりで狼のいる山に入っちゃうんだけど、
囲まれて食われそうになる。
何て言うんでしょう、
身分不相応というか、
夢を描いて妄想してしまっている。
それを通りすがりの元気なラッキさんという、
ヘムル族に助けてもらうんですが、
いかにも助けるふうではなく、
さらっと助けられるっていう
終わり方をするんですね。
それも含めて、人生の縁というか、
いるべき場所にいる、
会うべき人に会う、みたいな
切ないけどいいお話があったりします。
 
023
▲第23話「ムーミン谷の冬の住人」
   
  重松 みんな、持ってるね、
ちゃんと物語を持ってる。
 


2012-01-06-FRI

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