野田 |
それにしてもやっぱ糸井さん刺激的ですねえ。
最近ねぇ……、 |
糸井 |
僕はやきもちやきなんで、いいもの観ると
急に頑張るんですよ。 |
野田 |
若いとき、20年ぐらい前は対談してましたよね。 |
糸井 |
してる。
それはもっとね、もっとビートルズな人たちだったかな。
あの韜晦の固まりだったじゃないですか。若い時って。
世代的にも。もう今さら韜晦する必要ないし。裸。
どうしたって背丈変わんないぜ、ってとこあってさ |
北村
マネジャー |
Right Eyeの前にごらんになったのは
何が最後だったんですか。 |
野田 |
いやあ、糸井さん相当観てないんじゃないかな。 |
糸井 |
紀伊国屋ホールの時代ぐらいだと思いますよ。 |
野田 |
いや、紀伊国屋出た後の駒場に戻ったのも
観てるかもしれない。 |
糸井 |
ああ、観てるな。そのくらいでプッツリ途絶えてますね。
受け手としての快感が同じになってきちゃったときに
だいたい人は「飽きた」っていうんですよ。
それはもう自分でわかってるんだけど、
どうなんだろう、一回ずつ刺激がある時期に
だーっと付き合っちゃうと、しばらくは
水のような関係になるんで。 |
野田 |
それって本でも何でもそうだね。 |
糸井 |
本でもそう。それがある意味では、
困ることでお金払ってくれなくなるんですよ。
お客さんとしてね。
その問題をどうするかっていうのがね、
今日話し合わないテーマとしてはねあるんだよ。
薬が効かなくなるみたいに。
自分は、お客さんとしてはそういうことは
人にさんざん冷たくしてるわけですよ。
でも自分のお客さんが、同じように面白いものから
だいたいいいかって思ってくのを、
どうなんだろう、つかむべきなんだろうか。
どうぞ行っちゃってくださいって言うべきなんだろうか。
新しい人に向けるべきなんだろうか。
わかんないから結局作り手同士とばっかり
会うようになっちゃうんですよ。
野田君に会うなんていうと
ちょっといそいそするんですよ。
いい意味で客と作り手じゃないですか。対談って。
これはね、僕は仕事というよりは、快楽なんですよね。
そうなっちゃうとね仙人化しちゃうんですよね。
まずいんですよねぇ。 |
野田 |
でももうちょっと仙人化しちゃってるでしょ。 |
糸井 |
うーん、あの、核はね。 |
野田 |
ユートピアの話が出たあたりはねえ……。 |
糸井 |
宗教家だしね。危ないねえ。
リアリズムをこんなに語っていながらね。
でもそうやって会って、そこまで面白いかなって人、
そんなに大勢いないから。
もっと俺、実業家って面白いかと思ったわけよ。
そうでもなかったんでねぇ……。 |
野田 |
俺も、実業家幻想はある。 |
糸井 |
あるでしょ。 |
野田 |
俺は全然会わないから、
実業家っていう人たちってのは。 |
糸井 |
一代で名を成した人とか……、 |
野田 |
その辺いいんじゃないの? |
糸井 |
ただ翻訳に時間がかかって。
つまり文脈が違うから即座にやりとりできるほど
僕に力が無いんですよ。
違うような気がするけど、
「はぁ……」って言ってる時間が
老い先短いんでもったいないんですね。
明らかに俺死ぬときから逆算して、
ものを考えるようになっちゃってるから。
そういう話を分析することもできるわけだけれど、
分析し終わって終わりじゃあ面白くないんで
やっぱりこうやって
動いてる人たちと会うのが一番楽しい。
最近では松本人志さんですよね。
ふらふらしながら動いてるじゃないですか。 |
野田 |
やっぱいいよね。 |
|
糸井 |
うち子供が演劇やりたいらしいんですよ。
大学行くし演劇やるって矛盾だよね。 |
野田 |
それ俺言われてもなぁ(笑)。 |
糸井 |
そうかぁ。野田君、学校行って演劇やってたのか。 |
野田 |
学校行って。
でも俺芝居やるために、まず大学に行ったよ。 |
糸井 |
遊び時間を作るために学生がいいっていうのが
最後の僕の納得なんですけどね。
仕事しながらは無理だもんね。
でもどう演劇やりたいのかって……、 |
野田 |
でも芝居やってくと
仕事しなくちゃいけなくなるんだよね。
芝居だけで喰っていけなくなるから。 |
糸井 |
そうなんだよね。
やっぱりね、最初に大きいお金を稼いで
株で喰えるとかね。そういうのがたぶん・・・
でも経済的なバックボーンがありつつ
やれたら、動機を失うんだよね。
「喰えない恐怖が俺を走らせる」ってところない? |
野田 |
若いときはそうだよね。 |
糸井 |
あるよねぇ。 |
野田 |
なんたって。 |
糸井 |
そういうところに自分を追い込むと、
知恵を使うじゃない。
そうなると、金あっても駄目だよな、とか。 |
野田 |
だって未だにやっぱそうだもん。 |
糸井 |
そうだよね。喰えない恐怖ってあるよね。 |
野田 |
そういう、ねぇ。 |
糸井 |
毎日あるよね。 |
野田 |
芝居やらなきゃ喰えないわけだから。もう絶対。 |
糸井 |
逆にその前の段階だと、
「芝居さえやらなきゃ喰えたのに」
っていう時期もあるでしょ? |
野田 |
そうだね。 |
糸井 |
それを行ったり来たりするわけでしょ。
でも芝居に戻るんでしょ。 |
野田 |
今は芝居をやめたら喰う道ないわ。
しばらくはなんかどっかでちょろちょろと動いて
ゴハン食べられるかもしれないけど。 |
糸井 |
それってなんかさあ、
「選び直した」っていうことだよね。
芝居をね。芝居と再婚したみたいな。
そこの決意は、他人には絶対わかんないね。 |
野田 |
わかんないね。 |
糸井 |
ずっと芝居やってる人だと思われてるね。たぶん。 |
野田 |
ずっとやってる人なんだけどね。結局(笑)。
見た目通りなんだけど。
内面的にはちょっと違うんだけどね。
(了) |