糸井 | 「100のツリーハウス」もそうですけど、 なにか、とにかく、 新しい方法で人の行き来を作りたいな、 という思いでいろいろやってはいるんです。 でも、微力ですよね。 |
伊達 | いやいやいや、すごい力ですよ。 |
糸井 | とにかく、無理なく続けられるしくみを 作ろうと思ったんです。 それは陸前高田の自動車学校がヒントでした。 社長の田村満さんという方が すごくおもしろい人なんです。 みんな、満(まん)ちゃんって呼んでて。 この方が、震災のときに教習所の敷地を、 自衛隊と警察と放送局みんなに貸したんですよ。 テントを張ったり、アンテナを建てたり、 復興村のベースを作ったんです。 救援物資の拠点にもなっていました。 |
伊達 | なるほどぉ。 教習所って広いですからね。 |
糸井 | そうなんです。 敷地があるから、あんなに役立ったんです。 それがヒントになりました。 つまり、自動車学校っていうのは 地元の材料がないのにやれる仕事なんです。 名物とか、要らないんですよ。 敷地があって、先生がいて、車があれば、 教習所はやれるわけです。 「そうかー」と思っていろいろ考えてみると、 たとえば「広島風お好み焼き」は、 別に広島の名物が材料じゃないですよね。 |
伊達 | 言われてみれば(笑)。 |
富澤 | ほんとだ(笑)。 |
糸井 | かならずしも独自の材料がいるわけではない。 気仙沼の自動車学校では、 土地代が安いことを上手に利用して 無理なく教育産業ができているわけです。 それで、 こういうツリーハウスを思いついたんですよ。 |
富澤 | なるほど‥‥。 |
伊達 | すごい発想を東北のために‥‥。 ほんとに、ありがたいと思います。 うれしいです。 |
糸井 | もう、地元民としてよろこんでいるような(笑)。 |
伊達 | え? そうですよ、もちろんそうです。 地元として、こんなにね、 ほんとうに寄り添っていただいてありがたいです。 |
糸井 | ああー、そうかぁ、そうですよね。 「東北の役に立ちたい側」に 一緒にいるように思い込んでましたが、 おふたりは宮城の人でした。 |
伊達 | はい(笑)。 |
富澤 | ぼくらは地元だからというのがあるんですけど、 糸井さんは? なぜそこまで被災地にしてくださるんですか? |
糸井 | なぜそこまで‥‥ それは考えたことがなかったです‥‥。 うーん‥‥でもあんまり、 「そこまでやってる」とは思ってないです。 |
富澤 | え、そうなんですか。 |
糸井 | はい。 そんなに情熱的でもないんです。 どちらかというと、 情熱的な人を遠巻きに見ているタイプで。 熱い人はちょっと苦手なんですよ(笑)。 |
伊達 | あ、そうなんですか。 |
糸井 | いや‥‥ 言い方の加減がむつかしいな‥‥。 「熱い人が苦手」じゃなくて、 「強引な人が苦手」なのかな。 |
富澤 | ああ、はい。 |
糸井 | 眉間にしわを寄せながらじゃなくて、 ヘラヘラしながらでも手伝いははできることを 証明したいという、 いたずら心が根っこにあるんでしょうね。 ま、そうした姿勢についてはともかく、 微力でも手伝いたいと思った おおもとの理由は 自分もいっしょに、あのとき揺れたからです。 |
伊達 | 揺れを経験したから。 |
糸井 | そうです、そこがベースです。 「被災したのは東京だったかもしれない」 ということは何度も考えました。 そういうベースがまずはあって、 そのうえで、 「忘れちゃダメだ!」と叫んでる人を見ると、 「いやいや、忘れるもんだよ?」って言いたくなる。 「あなたも手伝わないと!」 みたいなことを言ってる人には、 「手伝わない人がいてもいいでしょう」 って言いたくなる。 大声で騒がなくても ふつうに続けられるような おもしろいことをやればいいんじゃない? っていう‥‥。 要するに‥‥ひねくれてるんです。 |
一同 | (笑) |
富澤 | 糸井さんの気の抜き方というか 自分もたのしんでるというスタンスが、 すごくいいなと思います。 |
糸井 | おふたりもたくさんの活動をされているから よくおわかりでしょうが、 実際はたのしいばかりじゃないですよね? それは当たり前ですよね? でも、それを強調するよりは、 「あいつほんっとに、ただ遊んでるぞ」 って言われたほうがぼくはうれしい(笑)。 |
一同 | (笑) |
伊達 | そういうのは大事ですよね。 どうしてもぼくなんか、熱くなってしまう方なんで。 |
糸井 | いや、当たり前です。 あの場所にいた人、 地元の方が熱くなるのは当然です。 ぼくはいなかったんだから、 言えないんですよ、やっぱり。 |
伊達 | ‥‥はい。 |
糸井 | 「遊んでる」って言われるのはいいんですけど、 いちばんぼくがこわいのは、 「あの人はもう要らない」って言われることです。 |
伊達 | それはないです(笑)。 |
糸井 | いや、よく言ってることですけど、 ぼくは帰りの東北新幹線で毎回落ち込んでますもん。 |
伊達 | なんでですか? |
糸井 | できることがすくないなっていう気持ち。 自分にできることは、 パワーショベル1台にもならないよな‥‥ みたいな気持ちがやっぱり、すごくあって。 |
伊達 | うーーん‥‥。 |
糸井 | でもね、 気仙沼の人がよろこんでくれたのを 自分の目で見ると、やっぱりうれしい。 「ああ、気休めくらいにはなったかな」と。 |
伊達 | 気休めですか(笑)。 |
糸井 | そう、気休め。 誰かの気を休めるだけでも ちゃんとできたなら、いいでしょう? だから、そう、 「気休めの本家」になりたいのかな。 |
伊達 | 気休め本家。 |
富澤 | いいですね、気休め本家。 |
糸井 | いやぁ、初めてですよ、 「なぜそこまで?」って聞かれたのは(笑)。 |
(つづきます) | |
2014-03-18-TUE |
伊達みきお(だて みきお)さんと、
富澤たけし(とみざわ たけし)さんによるお笑いコンビ。
ふたりとも、1974年生まれで宮城県仙台市出身です。
1998年にコンビ結成。
2005年、『エンタの神様』へ初出演。
2007年、『M-1グランプリ』の王者に輝き、
一躍人気者に。
宮城県仙台市の出身で、東北との関わりは深く、
現在は下記の役職をつとめています。
・みなと気仙沼大使
・みやぎ絆大使
・東北楽天ゴールデンイーグルス応援大使
・ベガルタ仙台仙台市民後援会名誉会員
・喜久福親善大使
・宮城ラグビー親善大使
・松島町観光親善大使
サンドイッチマンのテレビ出演情報などは、
おふたりの事務所、
「グレープカンパニー」のサイトでご確認を!
伊達みきおさんのブログ
「もういいぜ!」
富澤たけしさんのブログ
「名前だけでも覚えて帰ってください」