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糸井 |
堀江さんの『ゼロ』という本、
じつは「cakes(ケイクス)」に
ゼロ章が公開されたときにも
ちょっとだけ読ませていただいてたんですよ。
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堀江 |
そうなんですか? ありがたいです。
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糸井 |
ぼくのまわりにも読んでるひとがいっぱいいて。
読者の方からも
「堀江さんと対談されたらいかがですか?」
というご提案があったりしました。
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堀江 |
そうなんですか、うれしいです。
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糸井 |
本になってからも読ませていただきました。
おもしろかったです。
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堀江 |
ありがとうございます。
おかげさまで書評がどんどん出はじめている感じで。
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糸井 |
そうでしょうね、
そうだと思いますよ。
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堀江 |
内容には自信があったんですけど、
はたして広がっていくのかというのが、
ちょっとぼくの中では、やっぱり不安だったんです。
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糸井 |
速度はどうでもいいやって思っちゃったら、
ぜんぜん心配ないんじゃないですか。
「この本は売れます」とぼくは思う。
最初の勢いで売っちゃう本じゃなくって、
ちゃんとロングセラーになるんじゃないでしょうか。
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堀江 |
いままでのぼくの本も
時事的なものってそんなになくて、
普遍的なことを書いてきたつもりなんです。
でも、なかなか難しくて。
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糸井 |
そうですか、
そう受けとめられるとは限らなかった。
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堀江 |
ええ。
だからぼくはこれを書くにあたって、
過去のベストセラーや
ロングセラーの作品をいろいろと読んでみたんですよ。
ベストセラーってどんな本なんだろう? って。
刑務所にいたとき、
水野敬也くんが本を差し入れしてくれたんです。
あの、『夢をかなえるゾウ』の。
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糸井 |
はいはい、水野さん(笑)。
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堀江 |
彼もそういうことをすごく考えていますよね。
実際、彼の本は売れていますし。
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糸井 |
売ることをほんと真剣に考えてるから、
打席に立ってる数も相当なものでしょう。
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堀江 |
彼とは同じ雑誌に連載していて知り合ったんですけど、
ある日「遊びにきてください」っていうから
家に行ったんですよ。
そしたら、本棚が当時出たばっかりの
ぼくの本で埋めつくされていて。
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糸井 |
やったなぁ!(笑)
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堀江 |
そりゃ驚きましたけど、
「どうすんの、これ?」って(笑)。
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糸井 |
うーん、やるなあ(笑)。
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堀江 |
そんな彼が刑務所に差し入れてくれたのが、
黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』、
乙武洋匡さんの『五体不満足』、
飯島愛さんの『PLATONIC SEX』。
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糸井 |
はい、はい。
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堀江 |
そして矢沢永吉さんの『成りあがり』。
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糸井 |
おお(笑)。
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堀江 |
知らなかったんですけど、
あれは糸井さんの仕事だったんですね。
あの語りかけてくる感じ。
糸井さんがいたからこそ、
ああいう本になったんだろうなって。
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糸井 |
合いの手があってこそ、
というところはありますよね。
でも、この『ゼロ』もそうでしょ? |
堀江 |
そうですね。
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糸井 |
やっぱり合いの手がないと、
自分としてはあんなふうに語るつもりがないから。
『ゼロ』の構造は、
『成りあがり』だなあと思いましたよ。
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堀江 |
おもしろかったです、『成りあがり』。
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糸井 |
おもしろいですよね。
それは矢沢永吉という人が
全身で生きている人だからです。
いまだにそうですよ。
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堀江 |
あと、何年か前にほぼ日でやられていた
『はたらきたい。』の矢沢さんとの対談も。
あれなんか、まさに
『ゼロ』のテーマとも重なると思いました。
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糸井 |
おんなじ話をしてますよね。
『ゼロ』を読んで「おなじじゃん!」って思いました。
それでぼくも、
いまのタイミングってすごくいいなと思ったんです。
最初にもいいましたが、
読者の方から「堀江さんと対談されたら?」
ということもあったりして、
いまのタイミングってすごくいいなあ、と。
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堀江 |
はい。
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糸井 |
「評価しなきゃいけない状況」で
誰かと会うのって、ぼくは苦手なんですよ。
たとえば堀江貴文というひとと会うときに
「それであなたは堀江さんを支持してるの?
してないの?」
と迫られるタイミングってあるじゃないですか。
「好きなの? 嫌いなの?」みたいな。
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堀江 |
ええ、ええ。
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糸井 |
みんなが堀江貴文という人物を通して
「自分」を表明しているんですよね。
ぼくはどうもそれが苦手で、
会うことが評価になりそうなときは
それが冷めるまで待つんです。
で、いまだったらちょうど平熱というか、
評価する必要のない堀江さんに会えると思って。
読者もそういうふうに感じ取っているようだし。
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堀江 |
なるほど。
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糸井 |
正直、あの「想定内」とか
「想定外」とかいってたころには、
このひとについてなにかいわされるのはいやだな
と思ってましたから(笑)。
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堀江 |
ははははは。
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糸井 |
だって、わからないじゃないですか。
編集されてコラージュされた情報だけが
届いちゃったりするから。
その状況で「ホリエモン、いいんじゃない?」
っていうのも違うし、
「ホリエモン、やだね」っていうのも違うし。
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堀江 |
たしかに、
ステレオタイプな見方を
さんざんやられていましたね。
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糸井 |
だから、いまお会いするっていうのは、
いいタイミングなんだなぁと。
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堀江 |
ええ。 |
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(つづきます) |