HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN

15年間に及ぶ
テレビゲーム開発を経て、
「すごろくや」を設立。

丸田康司さんは、日本でも有数の
ボードゲーム・カードゲームの専門店
すごろくや」の代表取締役社長です。
ほぼ日とも長い付き合いがあり、
「生活のたのしみ展」にお店を出展してくださったり、
TOBICHIでイベントを開催してくださったり、
「ボードゲームといえば丸田さん!」
と、常にみんなが頼りにしている存在です。
でも実は丸田さん、かつては15年間も
テレビゲームの業界にいて、
『MOTHER2』『風来のシレン2』『ホームランド』
などの開発に関わっていた方なんです。
分野が違う世界に飛び込んだ背景には、
どんな思いがあったのでしょう。
担当は、ほぼ日の藤田です。

4

生活があって、ゲームがある。

――
一昨年、神保町に
「すごろくや」2号店ができましたよね。
どんどん大きくなっているイメージです。
丸田
ありがたいことにね。
でも、立ち上げて14年が経っているので、
これでも遅いんです。
最終的には50店舗くらいないとダメだな、と。
――
50店舗!
丸田
都道府県ごとに1つ店があるのが理想です。
というのも、ぼくが子どものころって、
プラモデルなどの模型店が全国にあったんです。
学校の帰りに寄ると、
そこにはいろいろな商品があって、
模型に詳しいおっちゃん、おばちゃんがいて、
何でも教えてくれるから、
自然に興味を抱くし、深みにも入っていける。
でも今はそういう場所がないでしょう。
「すごろくや」が小さな店なのに、
スタッフがいっぱいいるのも、
ボードゲームでそういう場所を作りたいという
思いがあるんです。
丸田康司さんの画像
――
ああ。たしかに。
いろんなスタッフの方が常にいらっしゃって、
気になるゲームがあったら、
「ちょっとやってみますか?」って
声をかけてくださいますもんね。
丸田
他の分野でいうと、本屋さんの話と似てるかな。
全国的に本屋さんの数が減ったことで、
どうなったかというと、みんな本を読まなくなった。
本を好きな人自体にふれる機会が
減ったからだと思うんです。
だいたい自分が興味を持つきっかけって、
それを好きな人がいるからじゃない?
――
あ、そうですね。
私も丸田さんや「すごろくや」のみなさんに
教えていただき、
世界にはこんなにたくさんのおもしろい
ボードゲームがあったのか、という驚きとともに
興味を抱くようになりました。
丸田
そう、そういうことをもっと伝えられるのに
伝えてないな、という思いもあったんですよ。
全世代のいろんな層に向けて、
いろんなものを紹介できるのに、
ボードゲームというと、
一部の限られた人しかしない、
みたいな感じの扱いになっていたから、
それは違うな、と。
ボードゲームの魅力を全方位にうまく伝えることが
自分ならできる、と思ってました。
――
先を見据えて動いてこられたんですね。
今回はインターン企画、ということで
丸田さんから若い人たちに伝えたいことはありますか?
丸田
ぼくもそうだったけれど、
社会に貢献することがどういうことかって、
20歳くらいではわからないと思います。
社会があって自分がいる、ということに
気付くのが25歳くらい。
25歳で最初の節目が来て、
その後、35歳でもういちど節目がきます。
――
35歳で。
丸田
自分の方向性がかたまる折り返し地点なんですよね。
自分が役に立つかどうか、ということに
重きが置かれるようになってて、
そのときそれまでに培ったことを使えないと、
何もできないよ、なんて言って、
いま若者を脅してます(笑)。
丸田康司さんの画像
――
今、35歳をとっくに過ぎている
自分の心にもグサッときました(笑)。
丸田
今回のインターンの方々とか、
うちの社員も含めて働く人に伝えたいのは、
「考える」ということ、そこに尽きます。
考えて考えて、よしこれならたぶん行ける、
というふうに進むことが一番大事で、
そのためにも考えられるための知識や力を培っておくこと。
考えに考えて実行して、それでもダメだったときに、
それを価値のある失敗と呼ぶんです。
そこから学びがあるじゃないですか。
あ、そうか、そこが抜けてたわ、という
将棋みたいな話じゃないですか。
だからこそ気付いて、次に活かせる、
という話なんですけど、
何も考えずにやって失敗しても、
それは価値ある失敗とは言わない。
――
そうですね。
丸田
なので、ぼくもたくさん考え抜いて
これは間違ってないはずだ、ということで
「すごろくや」を設立したんですけど、
もしこれが立ち行かなくなって、
何かが根本的に抜けてたなと気づいたら、
スッパリ辞めて違うことを考えようと思ってます。
やりたいことがいっぱいありますからね。
あと、さきほど、影響を受けた人の話をしたけど、
こういう考えができるようになったのも、
専門学校のとき、奨学金をもらうために
新聞配達をしたことも大きかったように思ってます。
集金のために各家を訪問したことで、
いろんな人の生活を垣間見られたから。
――
たしかに、人の生活を見ることで、
人生の選択肢って広がります。
丸田
もうね、国民の徴兵制ならぬ
「徴配制」の義務を強いたほうがいいとすら
考えてますよ(笑)。
――
(笑)
丸田さんのマルチなご活躍の理由が
少し垣間見れた気がしています。
丸田
こういうインターンの企画も
いつかやりたいことの1つで、
今は、あまりに学校で学ぶ内容と
実際の仕事で必要なこととの差が開きすぎている
気がしているんです。
だったら、中間に
「仕事の学校」があったらいいのかな、と。
大学を出てからでもいいし、
高校でも、中学出てからでもいいけど、
「仕事の学校」というところに行って、
ちゃんと卒業した人がいるとしたら、
その人こそが会社から求められるはずなんです。
学生のほうも安心して学ぶことができるでしょうし。
だって、今まで研究員だったのに、
突然会社に行けといわれて研究じゃないことをする。
今までは何だったのかなと思いますよ。
――
たしかに、そうですね。
ところで、すごろくやさんでは
新卒採用は行われているんですか。
丸田
あんまりそういう声もなかったので、
これまでしてなかったんですけど、
今年くらいから検討しています。
――
いいスタッフさんばっかりですものね。
丸田
おかげさまでね。
面接もしっかりしようとしてますから。
――
丸田さんは以前、
「ゲームがものすごく好きな子は
あまり雇わないんだ」
みたいなことをおっしゃってましたけど、
それってどうしてなんでしょう。
丸田
視野が狭くなるんです。
はじめてボードゲームに触れる、
というお客さんが来たとき、
急にマニアックな話をされても困るでしょう。
人に合わせて、たのしんでもらえる
選定をしなければ、と考えられる人がいい。
勘のいい子がいいですね。
最初はゲームについて何も知らなくても、
いろいろ覚えていく過程で、
「最初は何も知らなかった自分」を
知っている自分がいるから、
人にも教えてあげられるじゃないですか。
「このゲーム、最初は私はこう思ってたんですけど、
実際やってみたらこうなんですよ」
というような言い方もできるし。
最初から自分目線で「とにかくおもしろいんですよ」
じゃダメなんですよね。
順番が大事なんです。
生活があって、ゲームがある。
それが逆になってしまうとだめ。
丸田康司さんの画像
――
生活があって、ゲームがある。
たとえば、ゲームだと食べることも忘れて
没頭しちゃったりしますけど、
そうじゃなくてまずは健康、みたいなことでしょうか。
丸田
そうそう。
じゃないと続かないからね。
生活を大事にしながら、そのうえで
ボードゲームってこんなにたのしいんだ、ということが
今後も伝えていけたらなと思っています。
‥‥ということで、
今日はおすすめのボードゲームを
持ってきたので、みんなで遊んでみましょうか。
――
はい。ぜひ!
今日は貴重なお話をうかがえてよかったです。
どうもありがとうございました。
丸田さんと乗組員でボードゲームで遊ぶ画像
▲その後、丸田さんおすすめの
ボードゲームでみんなで遊びました。
(おわります)
2020-01-31-FRI