もくじ
第1回3代目継承問題 2016-12-06-Tue
第2回木曽漆器について教えてください! 2016-12-06-Tue
第3回産地としての取り組み 2016-12-06-Tue
第4回伝統に新風を 2016-12-06-Tue
第5回後継ぎは恵まれている 2016-12-06-Tue
第6回やりたいことをやっているだけ 2016-12-06-Tue
第7回最後に 2016-12-06-Tue

1983年長野県生まれ。
祖父が創業した会社に入り、ゆくゆくは3代目を襲名する予定です。

伝統を継ぐこと

伝統を継ぐこと

担当・miyahara

第4回 伝統に新風を

今回、やってきたのは丸嘉小坂漆器店。
私の家から300mほどのご近所さんですが、
お話するのは今回が初めてです。

ガラスに漆器を塗った「hyakushiki」というシリーズを手掛け
られていて、伝統的な漆器屋の多い木曽平沢のなかでも革新的
な企業というイメージを持っていました。
専務の小坂玲央さんにお話しをお聞きします。


写真左から小坂玲央さん、奥様で塗師の智恵さん

──
本日はよろしくお願いいたします。御社の美しいガラス製品の
大ファンです。衰退していっているように見える木曽漆器の
中で、新しい商品を生み出して活躍している御社に是非お話を
お伺いしたかったのです。まずは御社の歴史から教えてください。
小坂さん
祖父が1945年に創業したのが始まりです。立ち上げ当初は下
地屋だったのですが、父の代のときに呂色塗りをやるようにな
り、座卓を作るようになりました。
経済成長の時期は座卓ばかり作っていたのですが、
バブルがはじけたころから、木曽平沢の問屋さんからの
発注がなくなり、どうしようかという時に始めたのが
ガラスに漆を塗るという技法だったんです。
当時作っていた座卓の上にガラス天板を
乗せるものがあったのですが、それがあまりにも
シンプルだったので、そこに絵を書いてみようと
思ったのがきっかけだったようです。
──
偶然というか、ひらめきで始まったのですね。
小坂さん
はい。しかしガラスの上に漆を塗っても定着せず、
1年くらいで剥がれてきてしまって一旦断念したんです。
けれどもその後、県の方の協力もありガラスに漆を定着
させる技術を研究しました。そして商品化したのが、1994年です。
──
そこからは、ガラス商品だけを扱っているのですか?
小坂さん
平行して家具もずっと作っています。
ガラス製品の商品化はできたのですが、
当時はやはり家具の売り上げがメインだったので、
もう少し新しい動きをしようと2013年12月に
新ブランドを立ち上げました。
──
新ブランドの立ち上げは小坂さんが入ってからの
ことですか?
小坂さん
はい。私が入社したのが2009年です。
──_
入社されるまでは何をされてたのですか?
小坂さん
大学を卒業してからは、サラリーマンをやってました。
──
え!?そうなんですね。
小坂さん
サラリーマンをやってから、どうしても漆器の仕事がしたくな
り、木曽郡にある上松技術専門校で木工を学び、木曽平沢の
漆芸学院も卒業しました。
──
学生時代から、デザインやものづくりなどの勉強をされていたの
ですか?
小坂さん
いいえ。医療関係の勉強をして、医療事務の仕事をしていました。
──
それがまたなぜ家業を継ごうと思われたんですか?
小坂さん
離れてみて客観的な目線で家業を見た時に
とても魅力的に見えたんです。
そして、自分でもやってみたいと思いました。
──
その時、お父さんは喜ばれましたか?
小坂さん
父は継がせる気は全くなく、最初は反対されました。
──
反対!?
小坂さん
大変だということがわかっていたからでしょうね。
でも強引に継ぐと決めたんです。
──
私も同じで、東京の出版社で働いていたんです。
でも30過ぎたくらいから漆器って魅力的かもしれないと
思い始めました。私には漆器を作る技術はないから、
広めていくことができたらと漠然と思ってはいるのですが。
離れてみてわかる家業の良さというのはありますよね。
小坂さん
そうですね。
──
しかし、うちでは継ぐことに反対はされなかったので、
反対されたというエピソードには少し驚きました。
小坂さん
でもなんとなく気持ちはわかるんです。
苦労してきたからこそ、子供に継がせたくないという思いも。
──
小坂さんがガラスに漆を塗ってるのですか?
小坂さん
新ブランドの漆の塗りは妻が担当しています。
私は木工職人なので、家具作りを主に担当しています。
──
奥様も木曽平沢の人なんですか?
小坂さん
妻は長野県中野市の出身です。
上松技術専門校を私より先に卒業していまして、
民芸家具作りの下請けの工房で働いて
家具を作っていました。そして家具に漆を塗る
勉強をしてみようと漆芸学院に入学したんです。
私と妻はそこで出会いました。
──
では、今はお父様と奥様と3人でやられているんですか?
小坂さん
今は、職人も増えました。木曽平沢の方も一名。
県外からきている職人さんもいます。
──
どういうご縁で県外からも職人さんがきてくれるんですか?
小坂さん
ほとんど上松技術専門校の卒業生です。学校でこの地域の産
業の勉強もするんです。従業員は20代が2人、30代が私と妻を入
れると3人です。
──
若い方もいらっしゃるんですね。
小坂さん
はい。若い世代に繋げていかないといけないと思っているんです。

(つづきます)

第5回 後継ぎは恵まれている