- 糸井
- あっちが「TOBICHI」で
こっちが「TOBICHI2」って言うんです。
- 操上
- もともと、一軒家だったの?
へえ、お墓の上にあって、守られてるね。
- 糸井
- ちょっといいでしょう?(笑)
- 操上
- 俺、「お墓探知機」あったんだよね。
- 糸井
- 聞いたことあります(笑)。
- 操上
- 今はそうでもないんだけど、
とにかく「わかっちゃう」ようになって。
知り合いが引っ越したっていうから
遊びに行ったら、
玄関から入った途端に「うわぁ」と。
で、裏へ行ってパッと見たら
お墓があって「やっぱりあった」と。
- 糸井
- へえ。
- 操上
- いやあ、敏感なときは大変だったなあ。
だって海外ロケでホテルに泊まっても、
何かが「待ってる」んだよ。
- 糸井
- 「待ってる」(笑)
- 操上
- バリ島なんかだと、昼間っから待ってる。
気分の問題なんだろうけどね。
- 糸井
- でも、いちどそう思い込んじゃったら
この世なんて
「悪霊だらけの空間」なわけで(笑)。
- 操上
- そうそう。
- 糸井
- ちなみに「クッキリ」なんですか?
写真家だし。
- 操上
- クッキリ、ハッキリ。
- 糸井
- イヤだなあ(笑)。
写真や絵の下手な人だったら
「ピンぼけ」してるのかもしれないけど、
操上さんの場合、
細部まで「クッキリ、ハッキリ」(笑)。
- 操上
- ホテルの壁をじーっと見てたりするとさ、
日の高いうちから
「うーん、そこに何かがいるなぁ。
もう帰ってよ」と‥‥。
ま、今日はそういう話じゃないんでしょ?
- 糸井
- ええ、その話でもいいんですが(笑)、
ぼくが、あらためて
操上さんと話したいなあと思っていて。
- 操上
- それは、光栄です。
- 糸井
- あの、ちょっと前まで、「ほぼ日」で
若手から中堅くらいの写真家が
たくさん出てくる特集をやってたんです。
それが、すごくおもしろくて。
- 操上
- ああ、おもしろいでしょう。
- 糸井
- 写真家どうしの会話って
案外、聞いたことなかったんですよね。
たとえば「どうやって食えてるのか?」
みたいなリアルな話。
操上さんは若い写真家、知ってますか。
- 操上
- 知ってますよ。大森克己とか。
でも、若い写真家どうしなら
そういう話、するんじゃないですかね。
- 糸井
- 若くない人はしない?
- 操上
- 若いころはしてたと思うよ、みんな。
売れる前とかにさ、
「今に見てろよ」みたいな感じでね。
で、ちょっと売れてくると
「俺らの時代だ」とか何とか(笑)。
- 糸井
- 操上さんたちの若いころっていえば、
「APA」って、ありましたよね?
- 操上
- 日本広告写真家協会ね。
今もあるけど、
俺、そこの展覧会の委員長に推薦されて、
やったことあるんだ。
- 糸井
- 操上委員長。70年代?
- 操上
- そう。九州・大阪・札幌‥‥とか
全国各支部をまわって
「今年はこういうテーマで展覧会します。
つきましては、
みなさんどうぞ協力してください」
というようなね、
そういう役まわりをやったことある。
で、展覧会のタイトルを
「スキャンダル」にしたんだけど‥‥。
- 糸井
- ええ、覚えてますよ。
- 操上
- そのとき、当時の顔役の人に呼ばれてさ、
「お前さあ、百貨店でやる展覧会で
『スキャンダル』はないだろ。
『華麗なるスキャンダル』に変えろよ」
とかって言われたわけ。
- 糸井
- そうなんですか。
- 操上
- 俺もまだ若かったから
「スキャンダルはスキャンダルでしょう?
イヤです」って、突っ張って。
- 糸井
- でも、タイトル変えたらダメですよね。
- 操上
- せっかく「スキャンダル」ってつけたのにさ、
「華麗なるスキャンダル」じゃ、
そんなの「スキャンダル」じゃないじゃない?
- 糸井
- うん、ぼくが覚えてるのは、
かつて南千住にあった東京スタジアムで、
ヌードの女の人が、たくさん‥‥。
- 操上
- 100人ね。
- 糸井
- そうそう。
- 操上
- あれは「スキャンダル」の前の年かな。
たしか「ヌード大行進」ってタイトルで、
新宿とかいろんな街から
100人の女の子を、バスで集めてきて。
- 糸井
- ええ。
- 操上
- その100人のヌードの女の人に、
真夜中のスタジアムを突っ走ってもらって
俺らも一緒になって走って、
一人じゃ無理だから大勢で撮ってね。
そんなバカなこと、やってたな。
- 糸井
- それ、誰にも「深い考え」ないですよね。
- 操上
- ない、ない。ただの「ヌード大行進」。
- 糸井
- それ自体が「スキャンダル」ですよ。
- 操上
- そんなことばっかり、やってました。
<続きます>