2013-11-05
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2013-11-13
2013-11-14
2013-11-15
糸井
岸さんとは、まったくの「はじめまして」で、
いま、すごくプレッシャーを感じています。
これまでぼくは
「ユニフォームを着た野球選手」以外には
あがらないって決めてたんですよ(笑)。
なのに、今日は緊張しています。
岸
野球選手には緊張なさるんですか?
糸井
ぼくら野球好きにとって、どうしても
彼らは「神様」なので。
岸
野球はあんまりわからないんですけど、
昨日は、ちょっと観てました。
何観てたんだっけなぁ? 巨人? かなぁ。
糸井
え、そうですか、巨人。
岸
なんだか、新人って人が、ものすごく‥‥。
糸井
あ、そうです、昨日、よかったです。
岸
いい肩をしてるとか、キレがいいとか、言ってた。
つねづね、スポーツ選手が
あんなにモテるのはなぜかしらと思っていたんだけど、
みんないい顔をしているのね。
打つとき、投げるとき、
やっぱり「勝負」という顔をしています。
糸井
うん、してますね。
岸
いま、そういう顔をする人って
ほかの世界にはあまりいません。
あぁ、そういうことかな、と思いました。
糸井
スポーツ観戦は、なさるほうですか?
岸
国際試合だと、なんとなく観ます。
観ていて美しい人やものに魅かれます。
糸井
ぼくは、スポーツ選手に対して
「からだの知性がある」という言い方を
することがあるんです。
岸
あぁ、なるほど。
糸井
いま、頭を使うタイプの人が
「言いたい放題」になっていることが
よくあるでしょう。
岸
うん。しかもあまり頷けないような
「言いたい放題」が横行していますね。
糸井
ですね。
それに対して、自分の行為を
「解説される」側にばかり立ってる人というのは、
結局、もの言えぬ人になっちゃいます。
岸
そうね。
糸井
しかし、「解説する」人に比べて、
いまそこで動いている「解説される」人のほうが、
何百倍も知的なことをやっているのが
ほんとうで。
岸
そのとおりですね。
糸井
岸さんも、女優でいらっしゃるし、
「解説される」側に
ずっとおられたわけです。
それ以前からバレエもなさっていたわけで、
「からだの知性」については、
充分感じていらっしゃったのではないでしょうか。
岸
「からだの知性」という言葉は新鮮ね。
私はバレエを中学、高校とやってました。
子どもの頃から、小説家になりたかったんです。
川端康成さんの『花のワルツ』を読んで、
「あ、これは踊りをやらなきゃ」と思って、
バレエ学校に通いだしました。
『花のワルツ』は、
バレエダンサーが足をいためて、挫折します。
松葉杖を投げ出して踊るシーンが新鮮で
惹かれました。
それで通い出したバレエ学校の帰りに
『美女と野獣』
(1946年 ジャン・コクトー監督脚本)
を観たんです。
「わ、映画ってどうやって撮るんだろう?」
と思って、撮影所に見学に行ったのが
女優の道に進むきっかけになってしまいました。
バレエ帰りの高校生が映画を観て
「あぁ、すごい!」
「キャメラ(カメラ)って、どこにあるの?」
と思ったんです。
だって、古いお城の中を
美女がスーッと流れるように歩くんですよ。
あんなふうに流れるように歩くためには
いったいどうするんだろう?
画面がいきなりアップになるから、
キャメラって、どこに隠れているんだろう?
そういった興味でした。
糸井
「女優になりたい」じゃなくて、
そっちだったんですね。
岸
ええ。
何年か後に、ジャン・コクトーにお会いしたとき
「あのシーンで、女優さんは、
どうやって歩いたんですか?」
と、訊いてみました。
「簡単ですよ。板の上に乗ってもらって、
その板に車をつけて引っ張っただけ」
って(笑)。
「でもね、あなたが聞くのはわかるけど、
同じことをチャップリンがぼくに聞いたんですよ」
と、ジャン・コクトーが言いました。
糸井
岸さんとチャップリンが同じことを思ったんですね。
女優さんの動きの、その素敵な不自然さ。
岸
そう。映像というものに、
すごく魅せられました。
糸井
岸恵子さん、いったい
どういう子どもだったんだろう(笑)?
岸
変な子どもでしたよ。
糸井
変な子ども(笑)。
(つづきます)
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